女神様は知っています
「女神様が直接お話したいことがあるようです」
すでに息子の不祥事で考えなければいけないことが多数あるのに、まだ面倒ごとがあるのかと陛下は頭を悩ませました。
「それは今聞かねばならぬことか?」
問題ごとが山積みなのに問題ごとをさらに抱えたい人などあまりいないでしょう。
「陛下、大変申し訳ありませんが聞かねばなりません」
「そうか……」
聖女様はそう言うと目を閉じました。
皆が訝しむ中、ふと聖女様の雰囲気が変わったような気がします。
そして目を開けた聖女様は………
「「「「っっ!?」」」」
まるでこの世の者ではないかのような雰囲気を纏っていました。
そう、まるで女神様のように。
雰囲気が変わった聖女様を見て陛下と神殿長はすぐに膝を折って頭を下げました。
元王太子と侯爵令嬢を拘束していた護衛達も膝を折りはしませんでしたが、聖女様に向かって敬礼をしていました。
まるでそうするのが当たり前のように皆が頭を下げたのです。
そんな中、バカどもは呑気に惚けていました。頭が足りないのでしょうね。
「『さて、今代の王よ。女神である私ががなぜ聖女の体を使ってまでやって来たかわかるか?』」
聖女様から放たれた声には普段なら絶対に放たれないであろう威圧感がこめられていました。
それはまさに本物の女神様と言っても差し支えない雰囲気でした。
この威圧感の中で嘘をつくことができる者は神をも恐れぬ勇者、もしくは何もわからない愚者くらいでしょう。
「も、申し訳ながら、私が思い当たることは我が愚息が女神様の愛し子である聖女様を侮辱したことしか思い当たりませぬ」
このプレッシャーの中で質問に答えることができた陛下を笑うことが出来る者などこの世には存在しないでしょう。
陛下の側にいる神殿長はガタガタ震えて言葉を発することなどできなさそうですし。
「『まぁそれもあるが、そこで膝をつくことすらせぬそこの王の子と小娘ならわかるんじゃないのか?』」
言葉を向けられたバカどもはその時点でガタガタ目の前の存在が自分よりとても大きいことをようやく理解しました。
その言葉を向けられた時点ですぐに膝をつくなど、できればよかったのですが肝心の本人達は恐怖で声を発することなどできそうにもありません。
「『ふんっ、まあいい。どうせ理解していないのだろう。貴様らは城にある宝物庫に勝手に入り、無断で物を持ち出したそうだな』」
その言葉にその場にいる全員が驚きました。
………いや、陛下は知ってないとまずいでしょ。
「『それはどうでもいいことだが、その時に一つ壊したものがあるだろ?私が遣わした宝玉を』」
今度こそ皆の表情が青くなりました。
バカが城から勝手に物を盗んだことなんてどうでもいいくらいです。
そうですよね。大切な物が壊れたことにも気づかず、それが女神様から頂いたものだったことにも気づかず、まるで女神様を蔑ろにしているような行動でしたから。
「『人は忘れる生き物だからな。此度のことは警告である。次はないからな?』」
もう全員が首がちぎれるくらい縦に振りたい気持ちでしょう。
もし次があるのなら、なんて考えたくないことですし。
「『宝玉はもう捨ててもいいぞ。なんの役にもたたないゴミになったからな。次、私が来ることにならないといいがな。さっさと出ていっていいぞ』」
女神様の言葉を胸に刻んで広間にいた者が退場していくのでした。
「『それで?いつまで見ているつもりだ?』」
あっ、やっぱりバレてた?
なにいっ!?!?貴様いつからそこにいた!?!?




