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聖女様、知っていますか?

 他人の噂話なんてのはすぐに飽きられる。たとえ目の前で起きた出来事でも、とてもお偉い人のやばい秘密でも、その出来事に関わったなにかを見てたまに思い出すことはあれど、しばらくすれば記憶からなくなるだろう。

 なぜなら、その頃にはまた新しい噂話が出来ているのだから。



「聖女様!聖女様!ハインド先生の新しい新作知っていますか!」

「もう、少しは落ち着きなさい」


 聖女様のお部屋に2人の女性が入ってくる。活発そうな女の子が興奮したまま入ってきたが、それをもう一方の女の子が嗜める。


「いいのよキャロ。シャルの元気は私も見ていて笑顔になれるから」

「えへへ〜。褒められた!」

「まったく、もう」


 元気いっぱいの少女、シャルの頭をなでる聖女様。

 彼女の名前はハル、異世界の少女らしい。しかし彼女は一部記憶喪失らしく、彼女がどこからやって来たか、どのようにやって来たかは本人もわからないらしい。


「それはそうと、しっかりお仕事はしないといけませんよ」

「えへへ〜、はーい!」

「ほら、ちゃんと聖女様のお世話をするよ」


 聖女様に嗜められて本来のお仕事にもどる2人。



「そういえばシャル、先ほどハインド氏の新作と言っていましたが……」


 お世話係に身を清められながら少し真面目な表情になる聖女様。


「そうだった!ごほん。昨日ハインド先生の新作が発売されていて、私も買ってきたんです」

「それで、今回の内容は?」

「少しよくない噂がある侯爵家があったじゃないですか。あそこの不倫事情らしいですよ」


 ハインド氏の作品は何かと聞かれると、大まかに分類するとゴシップ誌であろう。

 時には面白おかしく笑えるゴシップもあるのだが、たまにとても詳しく、中には本人しか知り得ない、もしくは機密すぎて知られないようにしていることも書かれているのだ。まるで、側で見られているとしか思えないくらい。

 そのことからハインド氏は貴族からはいつ悪事がバレるのかと、民衆からはいつ嫁にへそくりがバレるんじゃないかと、恐れられている。

 そしてハインド氏の餌食となった者は、後ろ指を指されるか、生温かい目で見られるのだ……


「まあ、あそこなら潰れたほうがいいんじゃないですか?聖女様も顰めっ面をしていましたし」

「そうですよ!あんなところ潰れたほうが……よのため?なんですよ!」

「キャロ、シャル、仮にも人が路頭に迷っているのだから、あんまり言いふらしちゃだめよ」


 苦笑しながらも2人を嗜める聖女様。聖人君子とはいかないが、とても心根が優しい人なのだろう。



 体を清め、身だしなみを整えたあと、朝のお祈りのため祈りの間に向かう聖女様。

 ここでは一般人も一緒に祈れるため、護衛が2人つくことになる。


 いつものように壇上に立ち、代表者として神殿で祀っている女神様へと感謝の祈りを捧げる。

 そして聖女様につられるように、1人1人が日々の感謝をして女神様に祈りを捧げる。



「さて、みなさん顔をお上げください。最後に私から皆さんにも──」


 聖女様が締めの言葉を話そうとしたとき、広間に扉を開く大きな音が響いた。

 音が響いた方向に顔を向けると、そこにいたのはこの国にいるほとんどの人が知る人物──王太子殿下が立っていた。


「聖女!いや、偽聖女ハルよ!これ以上貴様の悪事は見逃せん!よって貴様を断罪する!」


 ────失礼、もう少しで()王太子殿下になりそうな人物がたっていた。

王太子(笑)の運命はいかに!?

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