表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ショートショート11月〜4回目

夜明け

作者: たかさば

 11月の終わり頃は、少しだけ…テンションがあがる。


 朝6時に家を出て、1時間ほどウォーキングすることを日課としている私は、一年365日ほぼ同じ時間帯に、同じ道を歩く。早朝の町の歩道は、空を眺めながらでも安全に前に進むことが可能な程度に人けがない。空模様を観察しながらのんびりと公園まで行き、ゆったりとラジオ体操をして、また空を眺めつつのんびりと家へと帰る…それをルーティンとしているのだ。


 何度も見てきた、のどかな朝の風景。

 色付く天、澄み渡る空、美しい雲、星の瞬き、満ち欠けする月、飛行機の軌跡、彼方に消えてゆく鳥。


 枯れ枝にピンクが混じり始め緑色に染まっていく様を楽しむ時期は、春。

 眩しい朝日を浴びてスッキリとする時期は、夏。

 明け行く空を眺めながら時の流れをしみじみ感じる時期は、秋。

 遠くの山々に白い化粧が施されてゆく様子を望む時期は、冬。


 毎日少しずつ変わっていく、ありふれた光景。

 日々大自然が魅せてくれる、平凡な景色。


 11月の終わり頃は、ウォーキングをする一時間で夜明けから日の出までの移り変わり…天然のライトアップショウを楽しむことができる、見どころの多いごほうびシーズンだ。

 3月も夜明けを楽しめるのだが、花粉が飛び交うシーズンという事もあり…、空をのんびりと眺める余裕がない。それゆえ、11月の終わりというのは貴重なのだ。


 家を出て、澄んだ空気を吸い込みながら、星の輝く夜空を見上げ。

 ぽてぽてと歩きながら、青色と水色とオレンジ色が穏やかに混じっていく遠くの空を眺め。

 徐々に明るくなってゆく空の下、公園の片隅でラジオ体操をやり。

 眩く輝き始めた太陽の光を真正面から受けとめながら、帰宅する。


 遮るものの乏しい、田舎の街並みの夜明けは少々目に乱暴ではあるものの…、網膜を焦がす力強い光を見れば、今日も1日頑張るぞという気になれる。 太陽の有り余るパワーを充填するような気持ちで全身に輝く光を浴びれば、少々のネガティブオーラは吹き飛んでしまうのだ。


 ……まもなく冬がやってくる。


 寒さが増して、背中を丸めがちになる、このシーズン。

 明けゆく空を眺めながら家に帰るようになるのは、もう、じきのことなのだろう…。


 ……そうだ、懐中電灯、用意しておかないといけないな。


 去年は薄暗い道を歩いていて躓いて、転んで、ケガをして…、治りが遅くてヒドイ目に遭った。

 新しい乾電池も買っておかないとね。今日は大きめのスーパーに買い物に行かないといけないな。そうだ、どうせなら少し前にオープンしたホームセンターに行こう。せっかくホームセンターに行くなら除草剤と年末用のゴミ袋にホットカーペットカバーも買いたいな、そろそろ入浴剤も少なくなってきてたから買い足したいし。そういえばあそこは人気のシュークリーム屋がフードコートに入ったと聞いた、娘が好きだからお土産に買って帰ろう……ええと、ちょっと忘れる前に何かメモを書いておかないと!!


 覚えきれないほど今日やりたいことができてしまった私は…、急ぎ足で自宅の玄関の階段をのぼったのだった。








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ