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転生してまた貴官に伝えられたら

作者: 山口トウシ

ゲルノマン帝国

 マジノ戦線

いつでもどこでも銃声が鳴り響き戦車の走る音、血の匂い火薬の匂い、兵の叫ぶ声がそこらしか聞こえるマジノ戦線。さっさと帝都に帰還し珈琲を飲みたいものだ。

おっと申し遅れました私、ゲルノマン帝国軍第一装甲師団を率いている。カルトニクス中佐です。

「失礼いたします。。中佐殿、将軍閣下より例の作戦を実行すべきと連絡がありまた・・・」

はぁ、まったく戦争なんぞ大嫌いだ。だが私には軍人の道を歩まざるを得ない。世界が狂っているのであれば私も狂わなければならないということだ。

戦争狂に

私は深く帽子を被った。

ゲルノマン軍は司令部の命令どうりに夏季大攻勢を行ったもちろん私の師団も攻勢に参加した。しかし現状はあまりにも悲惨だった。

なんだこの無謀な大攻勢はいくら我が帝国の国力有利でもこの攻勢は無理がありすぎる私も生き残れるか怪しいな、そして相変わらずここは地獄の様相だな、殺風景しか見えんしそれに爆弾や銃声の音が鳴り止むことはない、逆に鳴り止めば不思議なほどだ。

「中佐殿‼、第三装甲師団は全滅また歩兵大隊も壊滅状態だそうです」

「ちっ、クソ、残っている師団は!」

「スペレシア中佐殿率いる第二装甲師団す」

スペレシアの部隊か、スペレシアとは大学時代からの戦友だ。今は都市制圧を試みている。全く、いくら軍人の才能があるといっても女性をこんな最前線に出すとはどうかしている。こんな戦火にまみれた世界でなく戦争が非日常な世界に逝きたいものだ、あいつも必死にやっている私もこの戦いに勝ちに逝かねば、しかし、そう簡単に勝ちを獲らせてはもらえないのだ。

「中佐殿、あれを」

殺風景の土埃から微かに見えるのは、大量の機甲師団と機械化歩兵の混成集団だと・・・

私も流石に意気消沈した。我が軍は、壊滅状態であり補給も圧迫されているというのに

「いかがなされますか中佐殿、」

どうする、ここで撤退すれば戦線は押し戻され停滞、いや劣勢になる。それだけではない列強諸国の介入も危惧される、撤退など許されん。参謀本部が多くの時間をかけた作戦だ。我が帝国の命運を左右する作戦、しかし、この数を相手にすれば私の師団も壊滅になる可能性が非常に高い。苦渋の決断が迫られている。

「中佐殿、」

私は軍人だ。どうあってもスペレシアが迂回し都市制圧を完了するまでなんとしても耐える

「少佐、全戦車連隊は、中央突破だ。第百十二歩兵大隊は肉薄攻撃、第三十二砲兵連隊は援護に回れ、部隊を整理した後、攻勢に出る。スペレシアが都市制圧を完了するまでなんとしても耐えるぞ。」

「っ・・・承知しました。ヴァルハラ行きは勘弁ですが」

「フッ、そうだな行くぞ少佐、部隊を整理しろ」

そして、私の師団は数で圧倒されている敵を前に突撃を開始した。銃声と爆音のさなかエンジンを止めず目の前の敵をなぎ倒し味方が殺られても突き進み、怒号と血の匂いが蔓延る中、私達は突撃した。この判断が間違っているのかあっているのか未だにわからない。それはいずれ歴史が証明してくれるだろう。


「隼人〜はいあーん」

やめろこんなネチョネチョした食い物なんぞ食いたくない。うっ、スプーンを口に突っ込むな私はゲルノマン軍第一装

いや違う、ハハ私はただの赤子・・・か。


         二

毎朝顔を洗え、風呂にも毎日入れるなんと素晴らしい日常

申し遅れました私、高校生一年生の黒瀬隼人だ。はてさて泥まみれになりながら銃声音、爆撃音が聞こえる世界から戦争のない世界に来ました思い返せば、あの時

「中佐殿、中佐殿しっかりしてください出血が衛生兵、衛生兵はいないか‼。」

ハハ、ここで人生の幕を下ろすとは無念だ最後にあいつと他愛のない会話しながら珈琲を飲みたかった

と、思ってみれば次に目を開ければ赤ん坊だ。というかあの食い物は何だネチョネチョした食べ物は、あんなの食える人間の気がしれない。それで私は別の世界に生まれ変わってきたわけだ。インド哲学だと輪廻転生この国で言えば転生したら◯◯だった件とか?。よく書店で見かけるもので、まぁ兎も角私は転生したわけだ前世の記憶もしっかり残っている。この十五年間なにをしてきたのかそれを少し語ろうと思う。


私はこの国の言語を覚え歴史をまず勉強した。ざっくりいうとこの国は昔戦争に負け、そこから経済成長してGDP世界3位という経済大国。というか、よく毎月、空母という莫大なコストが掛かる品物を作りこの国と数十倍、工業力が違う国家とよく戦争をしたものだ。私が軍の上層部だったらそんな無謀なことはしない。

また私は夜中、母の携帯を盗みこの国や世界はどうなっているのか、この国の常識は何なのか、ルールは?何を求められているのか、どう生きていけばいいのか、職業など調べあげ前世では違う、平和でなんの変哲もなく高額で安定した収入を手に入れられる職業に就こうと決心し勉強した。毎朝ニュースを見れば大企業のあとを継いだ高学歴な息子が一瞬で倒産させたり、頭のいいはずの政治家が居眠り、失言など、バカにしか見えないが実際この国は学歴社会だ頭が良いほど評価されやすいこと、いくら実力があっても学歴がなくては大企業の面接すら受けられないということを知った。だから私は高額で安定した収入を得れる職業につけるため勉強をしている。まぁ小学生のときなんぞ食って、寝て勉強し本を読めばいいのだが問題は評価だ。総合的な評価、親の期待に答えなければならないし他の子より優秀でなければ評価されない。この世界も不平等、その不平等を埋めるために努力したとしても最終的には周りが総合的な評価をつける。

ある者は、大会に出れなかったと親に怒られ、

ある者は成績が落ちたからと怒られ

など、ほとんど親の意思いわばエゴだったか、そういうのを押し付けられている。子供のしたいしたくない関係なく、親の期待に答えねばならない。子供はいい子でないと親から見離されてしまう。

と、いうことを知った。そして私はこの世界はやはり弱肉強食の世界だと改めて思い知った。

中学生になった私は、ほとんどの時間を勉学に費やしてきた。学校では毎日、男子の卑猥な言動と、女子の声のうるささが聞こえます。放課後はみな部活。

もちろん、私は部活なんぞ入らない。それはなぜか、あんな顧問の命令で走らされるなんぞただの強制的な肉体労働でしかない。ただスポーツというものを楽しみたい者もいるというのに大会に出場するぞと出たくもない大会に出場するために毎日、地獄の肉体労働は労働基準法に違反してるのではないか?私はそんな部活をしている者を横目に勉学に励んでいた。極力人と関わらず勉強し本を読みあさっていた。そして私は、この春から高校生という身分になっったのだった。


         三 


さて、私はこの春から高校生になった。この高校はすごく頭が良いわけではなく平均より少し良いだけだ。難易度の高い高校に進学してみたら、と親や先生などに言われたが、頭の良い人ほど性格が悪いということを中学生で経験済み。もし、難易度の高い高校にいっても優秀な人ばかりで、成績上位じゃない可能性が十二分あるしもし、推薦というものがあれば難易度の高い高校よりも自分より少し低いこの、高校に入学したほうが取りやすいと考えた。

さて、高校生はみんなで放課後遊びに行き、恋人を作って三年間、順風満帆な高校生

と、成るはずがない。そんなの理想主義にもほどがある。ほとんど、中学校と変わらない。逆に教科は増えるし、やりたくもない行事が、わんさかある。それに新入生総代を頼まれた、入試で一番ではないにも関わらず総合的に評価されが丁重にお断りした。本当に嫌なものだ。まぁしかし4月の実力考査は上場、このままの成績を維持しなければ、4月は何かと大事な時期だと承知している。それは、友達というものだ。前世の私も幼少期は友達なんぞいなかったし軍大学に入学してあいつと出会い、自分のことを話したぐらいで、あいつ以外で話すことといえば仕事のやり取りぐらいだった。だから、今の私も友達を必要としなかった。別にいらなかった。逆にいえば友達がいて何が楽しいのか私には理解できなかった。私は別にコミュ症だったか、そういうのではない話しかけられると話せるが直接話そうとはしなかった。いるだけ無駄だと思っていいる。ただその場と空気、息があっただけで友達という安全保障条約を結び、時には愛想笑いを浮かべなければならないし時には気を使わなければならない。ただの赤の他人、利用するか利用されるかのどちらか、行き過ぎた言動、行動を慎まなければならないそんなの何が楽しいのか未だにわからない。自己紹介の時も適当なことを言って誰とも関わらず過ごしたその結果、私は学校で常に一人であった。逆に人に気を使うわけでもないし、自由気ままに学校生活を送れた。5月に入ると中間考査が行われた。私としてはいい出来だと思っている。そして数日後のテスト返却は結果上々だった。

うん、校内の成績は4月と変わらず上位を維持してる忘れ物などないし教師から怒られたこともないと自分の部屋で珈琲を啜っていた。実に素晴らしいそしてこの珈琲も格別だな実に美味だ。このままの成績を維持すれば少なくとも私の評価が下がることはないだろう。計画に沿って、PDCAサイクルに則った行動するのが一番だな間違いない。と私は珈琲を啜った。

はてさて次の日、私は昼休み図書室にいた。本は無限の想像と知識を与えてくれるまさに人類の福音だ。とくに好きなのは文学だ。私の頭に価値観や考え方を入れられる。そして今、文庫で本を探している。これも悪くないなと、見ていたとき誰かと肩がぶつかった。そのとき本が落ちた。

「あ、すみません」

といって相手が落とした本を拾ったその本は、私が、一度も読んだことのない恋愛小説というものだった。こんな表紙なのか

「どうぞ」

と、本を渡すなにかかしら私の体が拒否反応を示している。

「ありがとう」

どうやら女子生徒ようだ。まぁ表紙から見て女子が読みそうな品物だな

「あれ?黒瀬君かな?」

彼女に名前を呼ばれた。私の名前を呼ぶのは家族か教師だけだから少しばかり驚いているが誰だ?何処かで見たことがあるが

「あれ?違うかな?黒瀬君だよね」

「ああ、そうだがどちら様で?」

彼女はびっくりした顔で

「え!私だよ千冬、雪野千冬、同じクラスでしょ」

ああ、そういえばそうだったな何処かで見たことがあると思ったが男子連中が可愛いとか言ってたな彼女は見た目綺麗な人だろう女子の中で背が高く、私にも届きそうなほどだ。だがしかしクラスメイトだったとは驚きだが、

「黒瀬君は、本好きなの?」

率直な質問、私だったらすぐ離れるが彼女は質問してきた。初対面な私に質問などするか?まぁこうやって話し掛けるから男子や女子と仲良くなれるのだろうが。

「ああ、常日頃から読んでいる」

話しを続けるのは面倒ださっさと終わらそう私は、本に目を落とした。大抵の者は、これ以上話が続かないはずだ。これで余計な会話を省ける。

「へぇ、そうなんだ!どんな本、読むの?」

と、彼女は食い気味に私に詰め寄ってきた。私は、人と会話したくないためにすぐに本に目を落としてきたが、私が本を読んでてもなお話しかけてくるのは彼女だけだ。15年間史上、前代未聞だ。だが、これ以上無視し続けることはできない。なにかかしら返答しなくては。

「僕は大抵、文学だよ」

すると彼女はえっ、という顔をした。もしかして本を読んでいる者全員が恋愛小説などという非現実的な書物を読んでいるとでも思ったのだろうか。

「文学ってどんなの読むの?」

「こころとか人間失格とか」

うん?と首を傾げる多分知らないのだろう。かなり有名な作品だが知らない人間いるなど正直、驚きだが。

「本なんて、恋愛小説だけだと思ってたよ」

「そんなわけないでしょ」

知らないにもほどがある。

「私は、恋愛小説一筋だからね」

と、本の表紙を見せる。私は、読書愛好家として反論してしまった。

「恋愛小説など非現実的にしか思えないんだが」

「その、非現実的がいいんじゃない」

「その非現実的さ故に、ありえない恋を求めている者たちがこの学校に何人、何十人いることか。あまりにも理想主義てきすぎるよ」

その理想主義を追い求めた先に大東亜共栄圏などという無意味なものを掲げ、挙げ句の果にはその理想主義を実現するために史上最悪の作戦とも称される、インパール作戦を実行した。やはり人間に必要なのは理想主義ではなく現実主義だ。ありえない恋を求めるのにもほどがある。とても読書愛好家同士の会話は成立しないな。

「じゃ、僕はこれで」

「ええーもう行くの」

彼女の声を後目に私は、図書室を出た。

雪野千冬、私とは正反対の人間だだった。彼女が男女から人気があるのは、流石の私でも重々承知している。ごく一般的な女子高生だが、女子にしては身長が高く、スタイルが良い、髪は黒髪のショートで顔立ちも整っている。いかにも男子が好きそうな人間だ。まぁ今日のは確実にイレギュラーだった。図書室で出会ったからといって同じ教室で過ごしていても関わり合うことは一切なかった。

試験が終わったため、クラスに安堵が訪れていた正直私も安堵している。ここで席替えが行われた。自分の運命を左右する儀式だ。最悪の席は陽キャとパリピと言われる者たちに囲まれることだ。あんな猿達囲まれるなんぞ勉強にも集中できないし本すら読めない。そうなるとあの戦場に送られるようなものだ、流石に地獄の出向は勘弁してほしいが。

「6番、6番は、ここか」

そこは、  とてつもなくいい席だ‼窓際の一番後ろだった実に、実に素晴らしい!四方八方に囲まれることはない。何という素晴らしい席だ。と 浮かれるわけにはいかない隣が誰か気になるが・・・そこには、

「お‼黒瀬君じゃないか。」

そこには彼女、雪野千冬が机を動かして私の隣に腰掛けた。

「図書室で会った依頼だね!よろしく」

ああ、この笑顔、なぜこんな笑顔ができるのか、眩しすぎる。私にとっては正直嫌だ。しかし、私から話さなければ問題はないだろう。だが、彼女は私に話しかけた。それはなぜか、私と彼女の前の席は二人とも一切関わったことがない人が座ってなかったからだ。これにより彼女は私に話し掛けることしかないのだろう。しかしなぜ私に話掛けるのか分からなかった。


         四

私は、いつも朝6時に起床する。それが休日であれ関係なく起きている。朝起きてから顔を洗い制服に着替えて、家族と朝食をとりニュースを見る。朝の情報収集だ、それから珈琲を淹れて本を読みながら珈琲を飲む。この朝起きてから珈琲を飲むまでが私の毎日のルーティンだ。それから自転車に乗って登校する。教室に入れば誰もいない、いつも私が一番だ。必要な教科書を入れて本を読む。誰もいない教室で本を読むのはとても素晴らしい。それから15分経つと数人が入室する。そして遅刻ギリギリになってから陽キャやパリピなどと言われる者たちが入ってくる。そして私の隣に座り挨拶をする彼女

「おはよう、黒瀬君!」

このように、元気よく挨拶してくる。私に挨拶をするしてくる人なんて彼女しかいない。出来れば無視したいが、どうせまた言ってくるので仕方なく顔を上げる

「ああ、おはよう」

と、言って本に目を落とす。しかし彼女は私に本を読ませてくれない。

「ねぇ、ちょっと聞いて!あのさ~」

席替えしてから毎日彼女は、朝必ず私に話掛ける。その話は愚痴だ。正直面倒くさい、朝から知りたくもない他人の愚痴を聞くのは苦痛でしかない。彼女の愚痴は二種類ある、一つ目の愚痴は、男子のことについてだ。やはり彼女は私の想像以上に周りの男子に好かれているらしく、彼女曰く、男子は彼女の顔と体しか見ていないのだそう。男子連中は、放課後お誘いを彼女に申し出ているそうだが丁重にお断りしているという。というか男子の私に男子の愚痴を言ってもいいのかと困惑する。

二つ目は、家族の愚痴だった。彼女の家族構成としては単純で父親と母親の三人暮らしだという。両親は毎日のように喧嘩しているそうで、また彼女は仕事のストレスを私に向けないでほしいと少しばかり理解できる発言だった。他にも親に対しての辛辣な意見が多くあった。私は愚痴の中で親に対しての愚痴が一番嫌いだった。今の親には恵まれているが

  しかし、それは現世の話、前世の私は孤児だった。その時は何も覚えていない、ただ殺風景と土埃だけが舞う土地をただ歩く。感情は、 無  だけただ歩く。行く宛もない助かるかわからないどこか痛いのか腹がすいているのかそれさえ感じなかった。それが何年も続いているような感覚だったが最終的には通りかかった軍人に助けられた。だから私は軍人になった。だがあの時はなんとも言えない苦痛が彼女の愚痴で蘇るのだ。あの人間ではない、ナニカになったようなあの自分が。

だが私は、黙って彼女の話を聞いていた。はっきり言って耳障りでしかなかった。

だが私は黙って聞いていた。人は話したい生き物である。そのため聞く手としては、話している方に共感した方が良い、共通認識を作れるからだ。共感することによってこの人は話を聞いてくれる人だと好感度を持たれやすいのだ。また、ただ聞くだけでなく相槌をいれることだ。確かに、やなるほど、と適当に言っておけば嫌われることはないだろ。

それと、意見を言わないことも大切である想像してみてほしい自分が話しいるとき、または悩み事を話しているとき話を遮られ意見を言われたら嫌でないか?ましてや否定する意見ならもっと不快に思わないだろうかそいうことだ。人が話している間は決して自分の意見を言ってはならない。思わぬ地雷を踏めば関係に溝が生まれるのだ。そのため私は意見を物申さない。だがしかし相手からどう思うと聞かれることもあるだろうこんなふうに

「私はそう思うんだけど、黒瀬君はどう思う?」

こんな感じで、どう思う?など相手が質問し、こちらが答えざるお得ない状況に置かれれば、私も返さなければならない。そういうことは、否定はしないを前提に過去の彼女の発言を引用して言うことだ。例えば、

「あの人私、嫌いなんだよね」

「それはわかるよ。あの人空気が読めなくて好きじゃない」

などと言うよにただ共感するだけでなく、具体的に言うと尚さらいいだろう。

また、話を綺麗にまとめることや復唱することも大切だ。

このようなことしていると彼女はとても楽しそうに私に話す。人の愚痴をこんなに楽しく話すだろうか。男の私に、

そして疑問に思ったんじゃないだろうか?

なぜつまらない話を聞くのかと。それは彼女の影響力が凄まじいからである。彼女は男女問わず人気を誇り彼女を狙う男子も数多くいる。では、もし彼女の話を無視したり気に障ることをすればどうなるか、想像に芳しくない。もし彼女がクラスに私の愚痴を吐けば、あの女子連中に白い目で見られ男子連中から叩きのめされる可能性があるのだ。自意識過剰かもしれないが万が一がある私が目指すのは、殆ど誰とも関わらず、勉学に励む充実した高校生活。そのためには好かれることもなく嫌われることもないようにしなければならないのだ。だからこそ私は黙って彼女の話を聞いている。もちろん彼女は楽しそうに話すが、

「それでね~」

と、話を続けるがその時担任の入田先生が入ってきた。

「はい、それではホームルーム始めるぞ」

入田先生は、歴史教師で色々頼りになり、私の成長に必須な人だ。ホームルームが終わると早速、一限目の授業が始まるが・・・しかし問題がある。

「ねぇあのさ、ここはどういう意味なの?」

彼女の質問だ一つや二つならまだしも彼女は一時間で少ないときで五回、多いときで十回も質問をしてくるのだ。別に自習時間ならば問題はない。教えることで得られる知識もある。だがしかし、今は授業中、私も授業を聞いているのに彼女が聞くせいでまったく授業に集中できないのだ。そのためしっかり板書してから家で見直し、理解出来ないのであれば、教師に聞くという作業を殆ど毎日送っている。

「うーんと、こうかな〜」

と、彼女が真剣に悩み、髪を耳に掛ける仕草はどこか懐かしさがあった。

やっとことで、午前の授業が終わり、昼休みとなった。昼休みは唯一学校がうるさくなる時だ、勿論私は昼食を共にする者なんていないため、一人で昼食を摂る。他の場所で食べたほうがいいかと思ったが、意外と皆が食堂に行ったりするので、人の少ない教室で食べている。一度彼女に食事を共にしないかと言われたが、あんな女子グループなどには入れないので丁重に御断りしておいた。昼食をすぐ済ませ、歯磨きを済ませて本を読む。読書に集中していると昼休みが終わってしまった。五時限目、が終わり六時限目に入ると、睡魔に襲われる。いかんいかん、寝ては精神注入棒を喰らう。そう思い、隣を見ると彼女は寝息を立て、スヤスヤとうつ伏せになりながら寝ていた。よく寝れるものだな。まぁ六時限目は彼女の質問がなく、一応授業に集中出来るから嬉しいのだが、睡魔を押し殺し、授業に集中した。六時限目が終わり、清掃をしてホームルームが終わり各々、部活の準備や、帰宅の準備をする。私は部活なんぞしてないため、帰宅の準備を済ませ逃げるように、下校する。そして家に帰宅し自室の椅子に腰掛ける。

疲れたな、と静かな部屋に私の声が漏れる。この頃最近、疲労が溜まっている。思い出すのは彼女の顔だ。


勇人は、足を組み顎を触る。彼が悩み事をするとき、この行為をするのが恒例行事である。

作者は先程、悩み事をするときはこれが恒例行事だと言った。しかし、勇人には悩み事とともう一つあるのは、作者は知る由もない。なぜなら、彼らの物語なのだから。


いや、彼女の事を考えても仕方ないか。だが、これが続くのは私としては非常に良くない。打開策が必要だな。全くなぜこうも相反する高校生活になるのだろうか。

次の日、いつものルーティンを済ませ、一番目に教室に入り、本を開く。時間が経つと彼女のが入室する。そして、彼女がまた話す。

「ねぇねぇ黒瀬君あのね」

もう、限界だった。うるさい、目障り、喋るな。動揺した人間はこうゆう行動をとるのか?感情に任せるなんぞ私らしくない。

「こうゆう事があったんだよね〜」

「うるさい」

私は一言呟いた。私はほとんど話すことがなかったので、少しだけ教室がざわついた。少しだけ、だがそんなことなんぞどうでも良かった。

「え、」

「うるさいんだよ、いつもいつもご両親の愚痴なんぞ一切聞きたくない。黙っててくれ」

私は彼女の目を見れなかった。教室が昼休みのようにうるさくなった。私の声は思ってた以上に大きかったようだ。だが周りの雑音など、どうでもいい。

「ごめん」

彼女は一言謝り教室から出ていった。出ていったあと、数人の女子が彼女を追いかける。誰かに睨まれた気がする。私は本に目を落とした。その日は彼女が、私の名を呼ぶことも、尋ねられることもなかった。

その日の夜、自室の椅子に深く腰掛けた。はぁ、全く私としたことが感情的になりあそこまで言葉を放つとは、自分でも少々驚きだ。これが合理的と言えるだろうか?普通に彼女の愚痴を黙って聞いていれば、皆から余計な詮索や非難を受けずに済んだかもしれないのに、いや、もし今までどうり聞いていれば私の精神的苦痛は酷くなっていたはず、そう推測すれば、黙って彼女の愚痴を聞くのは合理的と言えないだろう。

たしか、デューイが合理性を99%にできても100%になることはないと、デューイは合理論の道具としては使えるが理論と実践の結果が矛盾したとき、あくまで実践の結果が正しいと言えると哲学の改造で言っていたな。たしかに私の精神的面から見れば、合理的かもしれないが、皆から非難を受うけ私の生活に支障をきたすなら、あのようなことを言うのは合理的ではない。なるほど、合理性を99.9%にできても100%にはできないか、理解できるな。しかし過去は変えられない、今ある現実と向き合わなければ、だが明日は白い目で見られそうだな。

翌日、勇人がいつも通り本を読んでいると、クラスメイト達から微かに非難の声がでていた。ましては事実無根な噂話までまことしやかに囁かれていた。


彼女は、教室に入っても
























2F 普通科職員室


1年3組、黒瀬勇人と雪野千冬の担任をしている入田先生は今回の中間考査の結果を横目に眉間にシワを寄せ眺めていた。

「入田先生どうされました?何かお悩みでも」

彼に声をかけたのは、隣の担任の原田先生だった。

「ああ、原田先生。うんちょっと引っかかることがあってね」

「中間考査の結果ですか?黒瀬・・・ああ、黒瀬君ですか数学を担当していますが、3組では黒瀬君が一位でしたよ」

「そうか」

彼、入田先生は約三十年教師生活を送っていたが、このような生徒を見るのは初めてであった。高校生というものは、青春の最後と言っても過言ではなく、そのため多くの高校生は自分の髪型を変えたり、多少の校則違反をしてでもおしゃれをしようとする生徒が一定数いるし若い頃にしか出来ないことをする者も多くいる。彼はそのような生徒を多く見てきただが、この黒瀬という生徒は初めて見たのだ。そして、黒瀬について興味を持っていたのは事実であった。成績優秀、運動も人並み以上にでき、決して規律を破らず、言われたことは必ず成し遂げ、忘れ物は一切無く、それに用意周到、論理的思考と合理主義を持ち合わせている、そのような学生は見たことがない黒瀬という男は学生というよりも大人としか言えなかった。やるべきことを完璧に成し遂げる一部の完璧主義者でもあるかもしれない、感情を表に出さず何を考えているか分からず、まさに機械のような人物だ、彼は黒瀬に好奇心が湧いていた。だが、少しばかりの気味の悪さも彼の心の中にあった。隣の雪野は積極的に話しかけているようだったが、黒瀬は仕方なく答えているだろという感じだった口では口角を上げていても目が笑っていないのだ、そのため人と話すのが苦手というよりも人との関係を拒んでいる、話す必要性が感じられないから話さない、彼にはそう見えていた。

「あ、でも確か、新入生総代は黒瀬君が務めるとお聞きしていましたが」

黒瀬は入試で一番点数高かったわけではないが総合的に判断し新入生総代は黒瀬にしようと話がついていたが、だがしかし黒瀬本人が

「大変光栄極まりないですが、私には勿体ないことです。申し訳ないですが辞退いたします。」

という返答をした。彼は黒瀬がなぜ断ったというのも、少し分かった気がしていた。黒瀬のようななんの問題も起こさない優秀な人間。教師とってはそれが一番良く理想なのかもしれない、だがそれが、学校の、社会が目指す最終形態な人間とでも言うのだろうか?彼は人生の経験で分かった事がある。黒瀬隼人という男は学生ではない、大人でもない、彼は黒瀬の成績表を見つめ、ある人物を思い浮かべた。それは、金髪の野獣の異名を持つ男、まるで

「ラインハルト・ハイドリヒ」

と、誰にも聞こえないように静かに呟いた。

チャイムが鳴った。



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