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双生記  作者: 鷹枝ピトン
バッタル村 - 1
19/30

19話 村の歓迎会

 チーピはみずみずしく、咀嚼するたびに口の中を果汁が飛び散った。


「んーおいしいですわねー…」


 満足げにチーピを頬張るメラリー。あっという間に切り分けた分が皿からなくなりそうだったので、リーファは追加でもう一個分皮を剥きはじめる。


「あまり食べ過ぎないでくださいねぇ、夜は村の人たちが歓迎会開いてくれるそうなので」


「あらそうでしたの?ではお腹に空きを作っておきませんとね」


「それで……どうでしたでしょうか村の様子は?」


「んー……ど田舎でしたわね畑がたくさんあるってことしかわかりませんでしたわ」


 メラリーは、ハンカチで口元についた果汁を拭き取る。


「こういった自然豊かな場所には、アレなどはございませんの?温泉、とか」


「いやー残念ながらこの辺りは縁がないようです」


「ふぅむ、では温泉観光地化で村を賑やかにする、などは無理そうですわね。……なんもないですのねこの村」


 メラリーは、村の高齢化問題を解決するには、外から若い人たちを呼び込めたらどうかと考えたのだが、難しそうだった。


「えへへ、でも住み慣れるといいものですよ」


 リーファは苦笑いする。メラリーはお構いなく、また一切れチーピに手をつける。


「私はまったく慣れる想像ができませんわね……お店すら全くなかったのには驚きでしたわ」


「物々交換が多いですからねぇ」


「まともな文明社会とは思えませんわ。村の貧しさにも納得というか……あっ……失礼いたしましたわ」


 さすがのメラリーも、過ぎた事を言ったと口を手で覆う。

 

 メラリーは昔からこうだった。相手の気持ちを考えずに、ズバズバと不平不満を並べてしまう。


 その結果、人間関係がうまくいかないことが山ほどあった。


 メラリーは、遠慮がちな目で、リーファをうかがう。


 しかし、言われっぱなしだったリーファ怒ることなく、包丁を置いてゆっくりと席へ座ると、主張した。


「でもこの村にもいいところがあるんですよ。綺麗な自然を眺めて、ゆったりとした時間を過ごしているとどこか心が落ち着く気がしませんか?私たちはそういった平穏を愛してるのです」


 リーファはそう言って笑いかけた。チーピを一切れとって、自身の口に入れる。


「食べ物が美味しいこともアピールポイントです」


「……まあチーピの美味しさだけは認めざるをえませんわね」


 メラリーは、膝元でハンカチをいじった。


「チーピだけじゃないですよ、夜のパーティでは村のおばちゃんたちが美味しいものたくさん作ってくれるんだから!あ、もう日が暮れる頃ですし、行ってみましょうか。場所はニーナさんのお家です」


「…………」


 リーファは立ち上がり、メラリーに手を差し伸ばした。その手にメラリーはそっと掴まる。


「……エスコート上手ですのね。本当に私がお嫁にもらってしまおうかしら」


「ええっ!?」


 慌てるリーファの様子に、メラリーはクスリと笑った。



 メラリーが宴会場として案内されたのは、リーファのおうちより一回り大きいだけのやはりただの民家だった。


 この家の持ち主のニーナおばさんは、もともと子だくさんだったため、お家が大きいのだという。


「お待たせしましたー!あら、もう始まってる」


 リーファが家の扉を開けると、すでに村のおじさんたちは酒盛りをはじめていた。


「おう!リーファちゃん!」「本日の主役の登場だな!」「悪りぃね待ちきれなくってよ!」「こっちにきて飲みなー!」


 長いテーブルの周りを囲みながら、歳をとった男たちが酒を飲み交わしている。テーブルには、酒のつまみになりそうな料理が並んでいた。


 昼間は村内を歩いてもひととすれ違わなかったのは、ここに村人たちが集合していたからかもしれない、とメラリーは思った。


「この卓に座るひとたちで、村人全員ですか?」


「いや、さすがにもっといますよ。村の人口としては200人くらいですけど、今日は歓迎会の呼びかけに40人も集まってくれたんです。あ、奥の台所には料理してるおばさん方もいますよ」


「……200人もこの村にいらっしゃったのですね


 40/200。この村に受け入れられているのか、少し疑問を抱いてしまうメラリー。しかし、酒を飲んでる男たちは、フランクに話しかけてくる。


「いやぁ、聞いた通りべっぴんさんですな!御貴族様の風格というか」「こんななんもねぇ村だけどゆっくりしてってなメラリーさまよっ」「おい、メラリー様の席あけとけっ」  


「………」


 メラリーは、作り笑いを浮かべる。


 彼女にとって、このようなタイプの人種と関わるのは、はじめてだった。だいの大人だというのに、あまり礼儀を知らない男たち。居心地の悪そうな歓迎会になるのを予感するのだった。


 そして、ひとつ気になることがあった。


「村に来てからリーファさん以外の方とは初対面なのですが、なぜ私の名前と容姿をみなさん知っているのでしょうか」


「ああ、この村では噂が回るの早いですからね」


「…………っ」


 リーファの答えに、唖然とするメラリー。


 誰とも会ってないのに噂が出回っている?どこで誰が、いつのまに伝言ゲームをしていた?


 屋敷に住んでいたときも、噂好きの使用人たちはいたが、こんなにも噂が一瞬で出回るコミュニティに、メラリーは少し不気味さを感じた。


 リーファは、酔っ払いたちに愛想笑いをしながら、用意されていた席に、メラリーをエスコートする。


「では、おかけください。少し待っててくださいね、台所のおばさんたちにもメラリー様がいらっしゃったこと伝えてきますので」


「あっちょっとひとりにしない…で、くださ…」


 リーファは慌ただしく、駆けていった。メラリーは急激に心細くなり、ぎゅっと洋服の裾を掴んだ。


 そんなふうにおとなしくするメラリーを、村の男たちは無遠慮にジロジロと見てくる。

 

「おっ近くで見るとやっぱりかわいいねぇ!」「いやぁこんな可愛い子村にはいねぇからな!がっはっは!」「おい嫁さんに怒られんぞ!」


「…………」


 品のない男たちに囲まれて、椅子にちょこんと座らせられたメラリーは、まるでお人形のようになってしまった。

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