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無一文の錬金術師  作者: Haru_Fraud
序章
1/1

プロローグ

名前 アルマ

性別 男性

年齢 6歳


「お腹すいた...寒い...」


彼はボロボロの服を纏いスラムの裏路地へ行き、拾った枝木に火をつけ横になる。

両親は顔も覚えておらず、物心芽生えたころにはゴミを漁り金銭に変えて生活を送っている。


この世界【ミーティア】では天啓スキルか知識が無ければ生きていけない。 

天啓スキルは教会で確認できる。

知識は本を読まなければならない。


しかしアルマは生き永らえるのが精いっぱいであり、その様な機会が訪れることもない。

拾った枝木に火をつけ、横になる。


今は冬の季節。

体は凍り、もう動けない。


視界は徐々に霞ゆく。

眠気が来たようだ。


「あぁ、僕にも何かあったのかなぁ...」


己の非力さを思いながら目を瞑る。




  誰もいない裏路地で、“一つの火が消えた。”




------------------------------------------------------------------------------

名前 有海(ありうみ) 真琴(まこと)

性別 男

年齢 24歳



カチッ...カチッ...

深夜に暗い一室の中でマウスをクリックする音。


「これでお金カンストしたぁぁぁ!!!!」


彼が画面と向き合っているのは大人気オンラインゲーム【ミーティアオンライン】

実家の一人部屋で家族を悲しませながらも熱中している。今の生き甲斐である。


ゲームでは魔法職をメインに扱っており、エンドコンテンツの周回や素材集めと金策が趣味だ。

誰も発見しない素材の穴場で稼ぎ、ゲーム内通貨を稼いでいた。


「いやー!何年かかったことか!長かったなぁ。スクショ撮って投稿しーよっと。」


ピロン!ピロン!ピロン!ピロン!ピロン!

仲間からの称賛の通知がとても良い...。俺にはこれしかないからな。

次の目標は何にしよう。

素材カンスト、他職のスキルレベル上げ、サブアカウントの錬金術師育成。あ、お金もあるし商売でもしてみようかな。


と、妄想をしていると誰かが階段を昇る音が響く。


「いったい今何時だと思っているんだ。」


強敵、親父とのエンカウントだ。

親父はとても怒っている、そりゃそうだ。こんな深夜に引きこもっている息子が叫んでいるんだからな。


でも、今の俺にはその親父の心情を悟ることは無理だ。

【ミーティア】での金額カンストという悦に浸っている。


そうだ、親父にもこの偉業を見てもらおう。ゲームの知識が無くてもこの数字を見れば凄さがわかるだろう。

俺の生きた証。俺の頑張りをだ。


「ごめんごめん、それより親父これを見てくれよ。ギルがカンストしたんだよ、凄くないか??あ、ギルってのはな...」


俺は自然と饒舌になる。久しぶりに親父と喋るが、喋りが止まらない。

普段家では何もできないが、息子が何に頑張っているかを少しは理解してくれるだろうか。

そんな話に聞き耳を持たず、親父は呆れた表情で口を開く。


「お前いい年して何をしているんだ。そんなことばっかりしてないで仕事を探せよ。」

「家族に迷惑をかけて、こんな時間に騒ぎ立ててしょうもないゲームばかりしているじゃないか。」

「はぁ...お前はどうしてこうなってしまったんだ。」


俺は親父の言葉に腹が立った。

まるで息子が無能だと言わんばかりではないか。

俺の生き甲斐を否定しないでくれ。この世界だけが俺の生きる道なんだよ。


「何言ってんだよ、凄いだろ。俺のSNSを見てみろよ。こんなにも称賛の声が上がってるんだよ。」

「この世界では皆俺のことを認めてくれるんだ。有名なんだよ??」


ガラッ

親父は部屋の窓を突然開けた。


(何やってるんだ??冬の外は寒いだろ?)

(もしかしてPCの排熱で部屋が暑かったか?)


そんな俺の思い込みとは関係なく、親父はため息をつきながらゲーミングPCを持ち上げると窓に向かう。

俺はSNSを見ていたせいで反応に送れる。


「こんなものがあるからお前はダメなままなんだな。」


親父は窓を開け、ゲーミングPCを投げた。

黒い鉄塊が宙に舞う。


「ちょ!?」


俺は走り窓から身を投げ出した。大切な物がそこにあるからだ。


「〇×△□!!!」


親父が叫んでいる姿が見える。きっと親父からはゲームに命を捧げ、PCに身投げした馬鹿と思われているだろう。


  違うんだ...違うんだ...親父。

  下には愛犬の黒柴の犬小屋があるんだ...。


勢いよく飛び出したおかげで少し位置がずれている。良かった...。

反転した視界でアイツの寝ている姿が見える。

こんな俺にも一番懐いてくれたよな。


「フロート...」


風の浮遊魔法を囁くも落ちる俺。無情にもここは現実。

もっと出来た人間だったらな、ここがミーティアだったらな。

己の非力さを思いながら目を瞑る。




  冬の夜に、“一つの火が消えた。”

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