プロローグ
名前 アルマ
性別 男性
年齢 6歳
「お腹すいた...寒い...」
彼はボロボロの服を纏いスラムの裏路地へ行き、拾った枝木に火をつけ横になる。
両親は顔も覚えておらず、物心芽生えたころにはゴミを漁り金銭に変えて生活を送っている。
この世界【ミーティア】では天啓スキルか知識が無ければ生きていけない。
天啓スキルは教会で確認できる。
知識は本を読まなければならない。
しかしアルマは生き永らえるのが精いっぱいであり、その様な機会が訪れることもない。
拾った枝木に火をつけ、横になる。
今は冬の季節。
体は凍り、もう動けない。
視界は徐々に霞ゆく。
眠気が来たようだ。
「あぁ、僕にも何かあったのかなぁ...」
己の非力さを思いながら目を瞑る。
誰もいない裏路地で、“一つの火が消えた。”
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名前 有海 真琴
性別 男
年齢 24歳
カチッ...カチッ...
深夜に暗い一室の中でマウスをクリックする音。
「これでお金カンストしたぁぁぁ!!!!」
彼が画面と向き合っているのは大人気オンラインゲーム【ミーティアオンライン】
実家の一人部屋で家族を悲しませながらも熱中している。今の生き甲斐である。
ゲームでは魔法職をメインに扱っており、エンドコンテンツの周回や素材集めと金策が趣味だ。
誰も発見しない素材の穴場で稼ぎ、ゲーム内通貨を稼いでいた。
「いやー!何年かかったことか!長かったなぁ。スクショ撮って投稿しーよっと。」
ピロン!ピロン!ピロン!ピロン!ピロン!
仲間からの称賛の通知がとても良い...。俺にはこれしかないからな。
次の目標は何にしよう。
素材カンスト、他職のスキルレベル上げ、サブアカウントの錬金術師育成。あ、お金もあるし商売でもしてみようかな。
と、妄想をしていると誰かが階段を昇る音が響く。
「いったい今何時だと思っているんだ。」
強敵、親父とのエンカウントだ。
親父はとても怒っている、そりゃそうだ。こんな深夜に引きこもっている息子が叫んでいるんだからな。
でも、今の俺にはその親父の心情を悟ることは無理だ。
【ミーティア】での金額カンストという悦に浸っている。
そうだ、親父にもこの偉業を見てもらおう。ゲームの知識が無くてもこの数字を見れば凄さがわかるだろう。
俺の生きた証。俺の頑張りをだ。
「ごめんごめん、それより親父これを見てくれよ。ギルがカンストしたんだよ、凄くないか??あ、ギルってのはな...」
俺は自然と饒舌になる。久しぶりに親父と喋るが、喋りが止まらない。
普段家では何もできないが、息子が何に頑張っているかを少しは理解してくれるだろうか。
そんな話に聞き耳を持たず、親父は呆れた表情で口を開く。
「お前いい年して何をしているんだ。そんなことばっかりしてないで仕事を探せよ。」
「家族に迷惑をかけて、こんな時間に騒ぎ立ててしょうもないゲームばかりしているじゃないか。」
「はぁ...お前はどうしてこうなってしまったんだ。」
俺は親父の言葉に腹が立った。
まるで息子が無能だと言わんばかりではないか。
俺の生き甲斐を否定しないでくれ。この世界だけが俺の生きる道なんだよ。
「何言ってんだよ、凄いだろ。俺のSNSを見てみろよ。こんなにも称賛の声が上がってるんだよ。」
「この世界では皆俺のことを認めてくれるんだ。有名なんだよ??」
ガラッ
親父は部屋の窓を突然開けた。
(何やってるんだ??冬の外は寒いだろ?)
(もしかしてPCの排熱で部屋が暑かったか?)
そんな俺の思い込みとは関係なく、親父はため息をつきながらゲーミングPCを持ち上げると窓に向かう。
俺はSNSを見ていたせいで反応に送れる。
「こんなものがあるからお前はダメなままなんだな。」
親父は窓を開け、ゲーミングPCを投げた。
黒い鉄塊が宙に舞う。
「ちょ!?」
俺は走り窓から身を投げ出した。大切な物がそこにあるからだ。
「〇×△□!!!」
親父が叫んでいる姿が見える。きっと親父からはゲームに命を捧げ、PCに身投げした馬鹿と思われているだろう。
違うんだ...違うんだ...親父。
下には愛犬の黒柴の犬小屋があるんだ...。
勢いよく飛び出したおかげで少し位置がずれている。良かった...。
反転した視界でアイツの寝ている姿が見える。
こんな俺にも一番懐いてくれたよな。
「フロート...」
風の浮遊魔法を囁くも落ちる俺。無情にもここは現実。
もっと出来た人間だったらな、ここがミーティアだったらな。
己の非力さを思いながら目を瞑る。
冬の夜に、“一つの火が消えた。”




