王子は愛した悪女を処罰する
突然、ディケオスィニ公爵家の公女が変わった。
公女は。
この国の未来を担う王太子の婚約者であった。
彼女は美貌と才に恵まれ、王太子も彼女の流れるプラチナブロンドとうつくしい紫の瞳を愛した。
二人は幼いころから仲睦まじく、国王や王妃を始め周囲の大人たちは未来の為政者がこの国をより繁栄させるだろうと期待した。
公女の教育係は、優秀過ぎる彼女にこれ以上教えることなどないと評した。
高等教育を施す学園では、外国語の修得から始まり地政学や経済学を修め、更に医学にまで知識を広げる才媛ぶりを示した。
それだけではない。立ち居振る舞いも未来の王太子妃として申し分なかった公女は、学園すべての学生の憧れとなった。
学園での講義を人より数多く受けつつも、同時に王宮で王子妃教育も受けていた。その教育係――王妃殿下が喜んで行っていた――にも太鼓判を押されるほど優秀であった。
だれもが認める淑女中の淑女に成長し、公女が将来の国母になるのなら、この国は更に発展し輝かしい未来が待ち受けているだろう。
だれもがそう信じていた。
そんな公女が変わってしまった。
変化の兆しはなかった。ある日突然であった。
いつも穏やかな微笑みを浮かべていた唇が醜く歪み、眉間には深い皺が刻まれた。
穏やかさを消した表情は冷たくなり、周囲の人間に不必要な圧迫感を与えた。
傲慢な態度をとり、他者を近寄らせなくなった。
お互い親友と呼び仲が良かった令嬢ですら、酷いことばを投げかけて追い払った。
下位貴族の子息子女たちへの態度は更に酷かった。彼らを人とも思わない態度で接した。
勇気を振り絞り、どうしてこんな酷いことを言われなければならないのかと意見した男爵家の令嬢がいた。今まで仲良くしてくださったのに、親身に相談に乗ってくれたと思っていたのに、あれは嘘だったのですかと。
震えながら意見した男爵令嬢を、公女は冴え冴えとした月のような冷たい目――その紫眼が異様に輝き、見詰められた者は魔物に睨まれたような錯覚を覚えた――で睥睨し答えた。
「あなた、目障りだわ」
流麗な声は、だからこそ辺りに響きだれの心をも凍り付かせた。
翌日からその男爵令嬢は学園に姿を見せなくなった。
学園を突然辞めたらしい。どうやら男爵家そのものが取り潰されたのだ、公女に逆らったからだと、まことしやかな噂が流れた。
王太子セラフィムは苦悩した。
幼い頃から愛する婚約者が、ある日突然変わってしまった理由が分からない。誰からも慕われ、未来の立派な王太子妃、ひいては国母になるだろうと期待されていた公女が。
一部では聖女とまで謳われた公女が。
今はまだいい。学園内の些事で収まっている。
だがこのまま公女が態度を改めず、悪行が続くというのなら。
公女との婚約は解消する事態となってしまうかもしれない。
彼は何度か公女との対話を試み、態度を改めるよう説得した。
けれど、眉間に皺を深く刻んだ彼女の悪行は止む気配を見せなかった。
そんなある日。
婚約者を説得するため公爵邸に訪れた王太子は、公女付きの侍女の頬に刃物の傷跡を見つけ愕然とした。
公女は自分に付き従う者に直接的な暴力まで振るっているのか?
王太子は婚約者である公女がその年下の侍女を可愛がる様子をよく知っていた。だからこそ信じられなかったし、その変貌の証に愕然とした。
侍女を呼び止め頬の傷に言及すれば、彼女は目に見えて狼狽した。近くで見た彼女の手首から二の腕は、明らかに人の手によって付けられた痣や傷が沢山ついていた。
「まさかとは思うが、念のために聞く。……君のこの傷は、公女が……エクスシーアが自ら刃物を持って付けたものなのか?」
王太子の問いに対し、侍女は顔色を真っ青に変えた。怯えたように震え口ごもる彼女に、王太子は「よい、みなまで言うな」と発言を止めた。
侍女は目に涙を溜め彼を見上げた。そして何度も口を開閉して言おうか言うまいか逡巡する様子を見せた。だが、口をきゅっと結び、黙って頭を下げて彼の前を辞去した。彼女が頭を下げた途端、その眦から零れ落ちた涙を王太子は見逃さなかった。
(あの明らかに怯えた様子……。エクスシーア、君はいったいどうしてしまったんだ?)
王太子は思い出す。
ディケオスィニ公爵家の公女である自分が大切にされるのは、貴族の義務をまっとうしているからだ。家臣たちを守る義務をきちんと果たしているからだ。
かつて、英邁な公女は王太子である彼にそう語っていた。
公女は自分の侍女や部屋付きのクリーニングメイドの名前まで把握し、彼女たちの福利厚生にまで気を配っていた。
そんな優しかった公女エクスシーアはどこへ行ったのだろうか。
◇
学業と公務を兼任する王太子の耳に、とある噂が飛び込んできた。
ディケオスィニ公爵家が敵国と通じているという酷い噂であった。敵国と通じ、寝返るつもりなのだと。そしてそれを主導しているのが、他ならぬ公女エクスシーアなのだと。
信じられなかった。
一緒にこの国を守って行こうと、より良く発展させようと誓っていたはずだったのに。
王太子は公女を王宮に呼び出し問い詰めた。君は、君たち一門は国家転覆を計っているのか、と。
「……二人きりで、というお話でしたのに……断罪の場でしたのね……」
眉間に皺を寄せた公女が、不機嫌そうにポツリと溢した。
公女を招待したのは王太子の個人名であったが、彼女は正式な謁見用の広間に通された。そこには国王陛下をはじめとする国の上層部たちが集っていた。
とうぜん公女の父親であるディケオスィニ公爵閣下も同席した。彼は元老院の議長でもあるのだ。
寝耳に水といった表情を国王と王太子へ向けた公爵は、自分に国家転覆などというだいそれた考えはない。そんな疑いは何かの間違いだと訴えた。
父親の弁を聞いた公女は、冷たい笑みを浮かべて言った。
「あらあら。お父さまって、やっぱりつまらない人なのね。あなたには野心というものが一切ない。男に生まれたからにはその手で世界を掴むという野望をお持ちになっても良いのではなくて?」
冴え冴えとした美貌が邪悪なまでに醜く歪んだ。
彼女のそのうつくしさは、既に禍々しいなにかを孕んでいた。
上層部の面々にしても、その毒々しいまでの笑みにぞっとした。
この女を野放しにしては駄目だ、と。
このまま、王太子の婚約者など言語道断だと。
「……では、敵国と通じたのは公女の意思だったと? 公爵は関与していないと?」
王太子の問いに対し、公女はくつくつと笑い声をあげた。小さかった笑い声がだんだんと大きくなり、それはやがて高笑いとなった。
「……あぁ、可笑しい」
笑いを収めた公女がポツリと呟いた。そして自分のスカートを優雅に持ち上げ、くるりとその場で回転してみせた。
まるで、ダンスでターンステップを踏むように。
「……でも、ざぁんねん。わたくし、男に生まれてくれば良かったわ。せっかく公爵家に生を受けたと言うのに、行く末は王妃止まりだなんて……つまらないと思いませんこと? だから……あわよくば、と……」
謁見室に立ち並ぶ上層部の重鎮たちへ、ゆっくりと視線を流しながら歌うように言葉を紡ぐさまは、優雅でうつくしかった。
そしてその分、心の底からの恐怖を誰にも抱かせた。
公女は狂ってしまったのだ。
あの聡明な淑女はどこにもいないのだ。
ここにいるのは国を売ろうとした狂女。公女は悪女になってしまったのだ。
「エクスシーア。残念だがきみとの婚約は解消する! 我が国に破滅を齎す存在を見過ごすわけにはいかないっ!」
王太子は断腸の思いでそう宣言した。彼の悲痛な叫びは公女の胸に響いたのだろうか。彼女はその紫色の瞳を静かに閉ざした。
すぐさま国王陛下の下知が飛び、公女は逮捕された。
彼女は貴族専用ではない、重犯罪者が放り込まれる牢獄へ入れられた。連日、拷問まがいの過酷な取り調べを受けている。
しかし彼女は頑として口を割らず、詳細な情報はもたらされないままである。
王太子はそう報告を受けた。
当然のことながら、王太子と公女との婚約は正式に解消された。
公爵は娘を除籍処分とし、家門とはなんの関わりもない人間だと宣言した。
公女エクスシーアは悪女エクスシーアになってしまった。
王太子セラフィムの名声は上がった。
相思相愛だった婚約者の悪評を聞いても、情に溺れず断罪した手腕と気骨を褒め称えられたのだ。
学園中のだれもがエクスシーアの名を忌み嫌い、口にしなくなったころ。
学園から城に戻ろうと、馬車に乗りこむ寸前の王太子を呼び止める声がした。
誰かと見遣れば、メイド姿の公女専属侍女だった少女だ。
王太子の護衛たちに阻まれながら、彼女は必死な表情で王太子へ訴えた。
「お願いです! 公女さまを助けてください!」
「……助ける、だと?」
公女……いや、悪女は国家転覆を計った犯罪者になってしまったのだ。投獄された彼女を救うことはできない。それに――。
王太子は護衛たちを一旦退け、少女の前に立つと尋ねた。
「……きみは、あの女から虐待されていたのではないのか?」
今でも少女の頬には、鋭利なもので切り付けられた痕が痛々しいまでに残っているのに。その傷をつけた張本人を助けてくれとはどういうことだろうか。
「違いますっ! 公女さまは、わたしを傷つけようとしたのではありませんっ! あれは……、ご自害するために刃物を持ったんです! この傷は、公女さまをお止めしようとして、誤って付けた傷なんです!」
「……なんだって?」
「公女さまは、悪魔に操られているのですっ‼‼」
「どういうことだ。詳しく話せ」
侍女は大粒の涙をぽろぽろと溢しながら説明した。
敬愛する公女さまが、たった一晩で変わってしまったこと。
奇声を発して頭を掻きむしると絶望しかないと呟き、刃物で首を掻き切ろうとしたこと。
そんな彼女に驚き、止めようとしたときに頬を傷つけられたこと。
侍女の頬をさっくりと切った感触に驚いたのか、公女さまは正気を取り戻し彼女に向かって泣いて謝ったこと。
その日以来、公女さまから笑みが消えたこと。
ときどき狂ったように酷く暴れるので、それを保定するために、侍女や侍従たちが総動員されること。自分の腕についた痣や切り傷はそのときのものだと。暴れているときの公女さまは必ず『絶望。生きている価値もない』と呟き続けるのだと。
「悪魔に、魅入られたとしか、わたしには、思えないのですっ! 公女さまが、あのやさしかった公女さまがっ、王太子殿下を愛していたあの方が、この国を売ろうとするなんて、あり得ないのですっ!」
侍女からの告白に半ば呆然としながら、王太子は侍女に尋ねた。
「きみは、なぜ、僕が問い質したときに、そのことを言わなかった?」
侍女は涙を溢しながら訴えた。
「この傷は、公女さまが付けたものなのかと、問われたからです……あのとき、ナイフを持っていたのは公女さまだったから、どうお答えすればいいのか、躊躇して……。公爵令嬢がご自害しようとしただなんて醜聞、軽々しく言えなくて……どうご説明すべきなのか悩んでいたら、もう言わなくて良いと仰せになられて……なにも、言い出せなく、なりました……まさか、そのあとに……敵国と通じてる、なんて可笑しな噂が立てられ、逮捕されるなんて……、思っても、いなくて……そんな妙な噂を、ご本人が、肯定されるなんて……公女さまは、悪魔に操られているんですっ」
王太子は悩んだ。
侍女の告白は本当のことなのだろうか。本当のことならば、公女はなにに絶望したのだろうか。
侍女が言うように悪魔に魅入られ操られているのだろうか。
あるいは、皆が言うように本当に狂ってしまったから、国家転覆を計り敵国と通じたのだろうか。
公女が投獄されてから一ヵ月が経とうとしていた。
真実を知るため、王太子は初めて重犯罪人が投獄される地下牢に降り立った。
◇
公女の姿は見る影も無くなっていた。
うつくしく輝いていた長い髪は無残に切り取られ。
すべての爪が剥がされ、脚の腱を切られ。
焼きごてによって、紫色の瞳を奪われ。
ボロを纏い、薄汚れ、元貴族令嬢であったとは到底思えない姿であった。
どんなに酷い拷問を受けても口を割らず、なにひとつ有益な情報を話さない彼女は、しぶとい囚人としてさらに酷い拷問を受ける悪循環に陥っていた。
王太子はすべての人間を遠ざけ、公女と鉄格子を挟み対面した。
彼女は冷たい石造りの床にうつ伏せで寝そべっていた。
足音に気がついたのか、彼女が口を開いた。
「……もしかして……殿下、が、いらっしゃってます、か?」
王太子は返事をしなかった。
あまりにも変わり果てた元・婚約者の姿に言葉が出てこない。焼きごてを使われた顔はやけどだらけだった。
「殿下は……覚えていらっしゃるかしら……幼きころ、共に手を携え……共に国のために尽力しようと……誓ったあの日を……」
ボロを纏った囚人は囁くような小さな声で――その声も拷問のせいで掠れ、以前と余りにも違い過ぎる様子に憐れを誘った――呟き続けた。
「もう、これしか、残されません、でし……っ……ごほっ‼‼……」
「エクスシーア!」
エクスシーアは急に激しく咳き込み、王太子が見ている目の前で血を吐いた。
「あぁ、やっぱり殿下……この香り……まだお使いでしたのね……」
血に塗れながらエクスシーアは微かに笑った。
王太子はふと思い出した。自分が好んで使っているフレグランスは、元・婚約者であるエクスシーア自らがレシピを調香したものだった。公爵領の特産品の中で、彼女がわざわざ王太子のためにと心を配って作成したものだった。
「きみは、悪魔に操られているという訴えがあった。だから、助命をと」
「あくま……あぁ。エミが言ったのね……あの子、信心深いから……」
エクスシーアは起き上がろうとした。
が、力尽きたように冷たい石の床に頬をつけた。
「わたくし、もう、余命いくばくも……ございませんの……」
「なに?」
「不治の、病に……」
エクスシーアは途切れ途切れに語った。
学ぶ必要のなかった医学まで修めた理由は、自分の体調不良が原因だったことを。
調べつくし、余命いくばくもないと悟ったことを。
国のためになにもできない自分に絶望したことを。
日々進行する病は常に痛みを伴い、とても微笑んでなどいられなくなった。
誰にも気づかれたくなかったから、わざと悪態をついて人を追い払った。
病に負けてしまう自分など、憐れみをかけられる存在になりたくない。
それくらいなら、だれからも疎まれ憎まれ……やがて忘れ去られたい。その方がいい。
それでもただひとつ。気がかりだったのは。
「わたくしは、もう、国のために……、あなたさまのために、なにかを為せません……、こんなわたくしが、最後に殿下に捧げられる……、未来の為政者たるあなたさまへ……、『国家転覆を計った邪悪な女を成敗する有能な王子』という、名声を……あなたに……」
「エクスシーア……きみは……っ」
「殿下……衷心より……殿下のおために……」
エクスシーアのもう開かない瞼から涙が溢れた。
「殿下……セラフィムさま……シーアは、ずっと、ずっと……あなたさまを……お慕いしており……っ……ごほっ‼‼……っ」
何度もむせ、苦しそうに大量の血を吐くエクスシーア。
彼女はずっとこの苦しみに耐えていたというのか。
深く刻まれた眉間の皺も、激痛に耐えるためだったというのか。
「シーア! エクスシーア! しっかりしろ! もう喋らなくていいっ!」
「……さいごに、ひとめ……セラフのすがた、……見たかっ……」
かつて白魚のような手と賞賛された公女の細い手が。
爪を剥がされ血に塗れた指先が、なにかを求めて伸ばされ……力尽きた。
「エクスシーアァァァぁぁぁっぁぁぁぁぁ!」
地下牢に王太子の慟哭が響いた。
鉄格子に阻まれ、王太子は元・婚約者の遺体に触れることすら叶わなかった。
悪女エクスシーアは獄中死した。
のちに。
セラフィム王太子は、元婚約者が学園から追い払ったという男爵令嬢の行方を追った。
破産寸前だった男爵家の領地は篤志家に買い取られ、令嬢は辺境の地で新しい縁を結び結婚して家族とともに幸せに暮らしていた。
匿名のその篤志家を辿れば、ディケオスィニ公爵家ゆかりの人間だとしか判明しなかった。
ディケオスィニ公爵家謀反の噂も、出所が判明していない。恐らく男爵家の領地を買った篤志家と同じだろう。
婚約者を思い出した王太子は、ただ静かに涙を流した。
セラフィム王太子は国王になり、善く国を治めた。
生涯独身を貫き、王位は甥に譲った。
【終幕】
「シーア! 認めない! 余はこれを断固としてっ認めないからね!」
「セラフ。あなた、わたくしの趣味には口出ししないというお約束をお忘れになったの?」
「きみとの約束、なにひとつ忘れていない! だけど到底納得いかないじゃないか! なんできみが悪者になってるんだ‼ こんなもの、台本にして国立劇場で演るとでも? この国は王妃の名を使った物語で王妃を貶めようとしてると国民に宣伝するつもりか?」
「落ち着いてセラフ、それはまだ下書きの——」
「これが落ち着いていられるか! 反対だっ! きみが昔から物語を創作しているのは知ってる! 読ませて貰ってたし! ボクが一番の読者でファンだから! でも今回のこれは酷い! いやだ! こんな内容で了解なんかできっこないっっっ‼‼」
「セラフィム陛下。落ち着いてくださいな、これはただの『物語』ですよ?」
「でもきみが病に冒されていたのは本当だ。どうしてもあの時を思い出してツライっ! 辛すぎるっ‼」
「セラフが大陸中からあらゆる薬剤を取り寄せ、自ら魔の山で竜を打ち取ってくれたから最高級のエリクサーを作成できました。そのお陰でわたくしは全快しましたわ」
「それでもいやだいやだいやだ! 赦せないっ! きみの名前が悪女呼ばわりされるのも、酷い目に合うのも、最後に死んでしまうのも! 全部っ納得いかないっっっ! 国王としてすべての権力権威を使ってでも!! この話は認めないからなぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁっ!!!!」
結婚二十年経っても最愛の王妃を抱き締め泣きながら抗議する国王の姿を、王宮に勤める侍従・侍女たちは温かく見守った。
比翼連理といってもいい国王夫妻に子どもは四人。長男はすでに成人し立太子の宣誓を終えたばかり。王室は盤石だ。
夫を張り付かせたままの王妃エクスシーアはため息をついた。
ちょっと自分たちの名前を使って(ちょいちょい実話をベースにして)物語を書いただけなのに、泣くほど嫌がるとは思わなかった。
夫を悲しませるのは不本意なので、国立劇場の次の公演用台本は改稿せざるを得ない。
彼女はその優秀な頭脳で次案を練り始めたのだった。
【とっぴんぱらりのぷぅ】