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服屋と帽子屋は新婚夫婦  作者: 彩ぺん


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15/15

おわり

 いつもは2人とも無言で眠る。しかし、今日は違った。


「本当にナンパなんて誤解なので」


 抱きしめられながら頬にキスをされ、セレナは小さく首を縦に振った。


「ええ……」

「俺もその、妬くので。なので他の男性とデートしたりしないで欲しいです。今日はあの男性とどちらへ?」


 酒を飲んでぶすくれたり、友人に愚痴っても解決しない。本人に尋ねれば教えてくれる。それが分かったルイスは素直にセレナに問いかけた。

 私も好きと言われ、ようやく自信を持ったというのもある。心臓をバクバクいわせながら、ルイスは返事を待った。


「あの男性とは誰のことです?」


 全く心当たりのないセレナも素直に質問した。


「馬車の……」

「馬車? まさか、あの、エスコートしてくださった執事の方に妬いたんです? デート帰りだと? ラングドゥ夫人の馬車ですよ」

「エスコート?」


 腕の中にいる妻に上目遣いで見上げられ、ルイスは目を丸くした。友人達もそう言っていたなと思い出す。素直に聞き入れれば良かった。今度礼をしようと考える。


「ええ。降りる時にこう、手助けで手を。まさかその方とデートしていたなんて誤解……」

「はい。そうです」


 今度目を丸くしたのはセレナ。彼女は肩を揺らして「ふふふっ」と笑った。


「それで不機嫌だったんです? 私、ルイスさん以外とデートする気なんてありませんよ」


 機嫌を良くしたセレナは、勇気を出してチュッとルイスの頬にキスをした。触れられた頬をそっと手で触り、目を掌で覆う。


「あー……。情けないので今のは聞かなかったことに……」

「情けない? 私だって喫茶店で打ち合わせってだけで、まるでデートみたいで嫌だなって思いました」


 セレナは不安を伝えたいと、デイジーのことをこう口にした。


「まさか。仕事です。それなら喫茶店はもう使わないで……店内にカウンターでも作ります。ゆくゆくは相談、応接ブースを」

「えっ?」

「よく考えたら俺も嫌だと思うので。逆の立場だと。まあ、毎回喫茶店だと経費もかかりますし」

「経費削減は大事ですものね。私も応接室があった方が相手に来てもらえて手間暇が減ることもあると思うので、ある程度のスペースがあるというか見栄えの良い場所だと嬉しいです」


 セレナは思わずルイスにギュッと抱きついた。子供っぽいヤキモチなのに真剣に受け止めてくれて嬉しい、と。


「もう少し貯蓄をしてからになりますが、店の一角を改装しましょう。それまでは作業場に椅子とテーブルを用意します。俺の打ち合わせ相手に貴族はいないので」


 ルイスは仕事のことだと割と饒舌になれる。


「あの、顧客は基本的に被っているので商談や打ち合わせ時間をなるべく合わせて2人でっていうのはどうです? オーダーがない方の売り込みも兼ねて」

「しばらくそうしてみますか」


 このように、ようやくルイスとセレナはお互いの考えを伝え合うことの出来る関係となった。

 夫婦として、ようやくスタート地点である。

 なおこの2人、イチャイチャしながら仕事の話をしてるうちにすっかり燃え上がった。

 一眠りして翌朝も朝からイチャコラし、2人で仲良く朝市へお出掛け。

 当然、ポート商店通りの人々はその仲睦まじい姿を目撃。

 可哀想なことに、八百屋のデイジーも隣の魚屋の店先でイチャついているように寄り添う2人を見てしまった。


(朝から見せつけに来たの⁉︎)とデイジー他は憤慨するも、ルイスとセレナは2人の世界。


「朝ご飯、何にしましょう?」

「セレナの作ったものならなんでも美味しいからな」

 とイチャイチャ、イチャイチャ。


「やだ、そんな、嬉しいです」

「あまり外食したくないくらい好きです。セレナの料理」


 とイチャイチャ、イチャイチャ。ルイスはついにこの国の平均的な男達と同じか少し控えめな態度を示せるようになった。

 こうなれば乏しかった経験値やスキルに観察力は向上していくし、新婚デレデレ期の新妻は当然すこぶる機嫌を良くする。

 夫は照れ屋なのにこんなに頑張って恥ずかしさを乗り越えて褒めてくれるなんて素敵、と少し違う前向きな誤解も発生。

 つまり正のループ発生である。


「干してありましたけどあのワンピース、結婚祝いの。今夜着ないんですか? とても似合っていて、その、可愛かったですけど」

「本当ですか? 嬉しい。すごくお気に入っているので今夜のデートで着ようと思って。オペラ観劇なんて初めてで絶対にあの服だと」

「その、実はあれは俺が考えて作りました。友人からの方が嬉しいかと思って」

「そうだったんですか? 友人達からも嬉しいけどそうだったらいいなぁって思っていました」


 ずっとイチャイチャ、イチャイチャ。

 見た目や立ち振る舞いは節度ある範囲だが、顔や声色が甘ったるい雰囲気を醸し出している。


 朝から見せつけられた人々の何人かはこう思った。


(チッ。朝から新婚かバカップル……)


 そんなことは気にする必要のないこと。世の中というのは、幸せで溢れていた方が良い。

 この国では2人はむしろ控えめなくらい。


 ☆★


 服屋と帽子屋は新婚夫婦。

 この後、些細な誤解をしてもまた無事に解決して軋轢にならないように出来るか、2人がいつまでも仲良くいられたか、また別のお話。


 ただ、お互いきちんと意思疎通をはかり、思いやりを抱いていられれば、きっと——……。


 めでたし。めでたし。

このお話にお付き合いいただきありがとうございました。

☆〜☆☆☆☆☆で評価、一言でも良い悪い感想をいただけるととても励みになります。その他おまけの希望、次作品への提案など何でも受け付けています。

誤字脱字を修正してくださる方、いつもありがとうございます。特に誤用。勘違いしたまま使い続けていたりするので勉強になります。

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