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20.迷子なり

「よ、っと」


 植物が伸ばしてくる触手を全て叩き落としながら接近し、胴体らしき膨らみの部分に火球を叩き込む。

 

「焼け具合が良くないな。水分が多い感じかこれ」


 植物ならば火球でこんがり焼けるかと思ったが、どうもそううまくはいかないようなので方針を変更する。

 

「ガブちゃん、囮!」


「ガウッ!」


 ガブちゃんに一時的に攻撃をしてもらい、モンスターのターゲットを取ってもらう。その間に俺はこっそり近づき、先程一瞬だけ開いたモンスターの口の部分に剣をねじ込み、力任せにこじ開ける。

 

「《ファイア・ボール》」


 口の中に火球を流し込むと、モンスターが苦しそうな声を上げた。HPも大きく削れたので、そこを狙って更に火球を流し込み、倒し切る。

 

「ふう。ガブちゃんお疲れ」


 『どうですかご主人さま!』と言わんばかりに駆け寄ってくるガブちゃんをワシャワシャしてやる。

 

 ガブちゃん、狼だけど犬っぽくなってるな。

 

「よーしよしよし、良い動きだったぞ。次もよろしくな」


 ガブちゃんには基本的に、攻撃役ではなく今のように敵の気を引く役をしてもらっている。俺より動きが早い分ダメージを受けなくてすむし、火力自体は俺の方が出るのだ。

 

「アイテムは……葉っぱなんてついてたか?」


 《魔草の葉》というアイテムが入手できていた。おそらく調合や錬金といった、ポーションを作ったり素材の力を使って特殊な道具を作ったりする作業に使うのだろう。

 

「これはとりあえず持って帰って売ろうかな」


 俺は今のところは生産をするつもりが無いので使いみちが無いのだ。

 

「よーしガブちゃん、もう少し歩くぞ」


 すでに迷子になっている気がするが、ガブちゃんを連れてもう少し歩くことにした。



******



 迷子になってから更に二時間ほど歩いた。宝箱をいくつか見つけることが出来、また判明したことが一つある。どうやら完全に迷子になったようだ。進む先どころか、入り口へ戻ることすらできなくなってしまった。

 

 宝箱からは、序盤に入手できるアイテムとしてはおそらくそこそこのアクセサリーや防具がいくつか見つかったので、俺が新しく装備したり、ガブちゃんの首に巻いてあげたりした。

 

 防具をつけるのはガブちゃんには邪魔かも知れないと思っていたが、首にネックレスを巻くぐらいならば大して気にはしないようだった。大きさは装備する者に合わせて自動で調整されるので、ガブちゃんの首にちょうどよくなっている。

 

「どうするかねー。これ完全に迷子な気がするんだけど。マッピングするために出直したほうが良いんかな」


 途中にあったセーフティーエリアという安全地帯に腰を下ろし、視聴者に尋ねてみる。すると、『マッピングはしないときついかな』『マッピングしないと気づけない道がある』『出直しましょう』といったコメントが送られてきた。

 

「やり直したほうが良いかあ。マッピングも練習しないとな」


 マッピングとは、地図の無いフィールドの地図を自分で書くことを言う。このゲームのダンジョンには、マップを自力で作成しないといけないものがいくつもあり、そこを攻略する際に必要となる能力だ。

 

 マッピングを行うことで、ここにも通路があるんじゃないか、こことここつながってるな、など、見えない道に気づけることも多い。

 

「じゃ、あ、一回出直すということで……」


 俺が途中まで行った所で、セーフティーエリアとなっている部屋に別のプレイヤーのパーティーが入ってきた。向こうが頭を下げてくるので、俺も頭を下げ返しておく。

 

 そのまま俺は帰還の魔法でダンジョンから脱出しようとするが、パーティーのうち一人が近づいてきたので魔法を使うのを一旦止める。

 

「こんにちは。ちょっとお時間良いですか?」


「大丈夫ですよ」


 俺がそう言うと、大柄な男性プレイヤーはホッとしたように息を吐く。後ろにいる他の三人が、剣士一人と、魔法使いが二人といった風情なので、盾を持った彼がタンクをしているのだろう。

 

「実は迷子になってしまったんですけど、ボスの部屋がどこにあるかわかったりしますか?」


「あー俺も迷子なんですよ。今から一旦帰還して、マッピングをしながらやり直そうかなと思ってたところなんです。もしサイトを見ることにためらいが無いなら、攻略サイトにも載ってると思いますよ」


 俺に尋ねてきたのだし、別にサイトを見ることに忌避感は無いのだろうとそう伝えると、男性プレイヤーは首を横に振る。

 

「いや、サイトは見ないようにしてるんですよ。尋ねるのもゲームにいる人だけにしようかなって皆で話してて」


「なるほど。それは失礼しました。それなら、一旦出てマッピングした方が良いらしいですよ。俺も又聞きなのでじっさいどんな感じなのかはわかりませんが」


「ああ、そうなんですね。わかりました。ありがとうございます。仲間と相談してみます。お時間取らせてすいませんでした」


「いえいえ。それじゃあお先に失礼します」


 ありがとうございます、と何度も頭を下げる男性に別れを告げ、帰還の魔法で脱出する。そこそこ歴史のあるゲームだが、あんな感じで初心者プレイヤーもいる所を見るとまだまだ人気なようだ。

 

 脱出して花の街に戻った後、一旦休憩を取ることにする。

 

「よし、一旦昼食をとってからまた続きやろうと思います。とりあえず始める時はモノローグするので、見といてください。それじゃあ、お昼行ってきます」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ネットゲームのやりすぎであのパーティがPKerに見えてしまう…ww
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