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庇護欲をそそる王子様と庇護欲をそそらないお姫様  作者: まくのゆうき


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道具制作のご褒美

そうして一巡目を終えたところで、先生が声を張った。


「今度は一緒にいる人たちを変えてみましょう。子供たちだけで好きなように集まってみてください。バザーの経験者である大人たちはこちらに」


先生が声をかけるとグループ替えのために子供たちが少し離れたところに集まった。

今度は誰と一緒とか、一人で買い物したいとか、そんな声が聞こえてくる。

子供たちは楽しめているようで何よりだ。

その声を聞きつつも、集まった大人たちに先生は次の説明をする。


「経験者の皆さんにはここで売る側を経験してもらいます。ここに集まってくださった方については、エレナ様たちからバザーでの販売経験があると伺っておりますので、それと同じです。そして商品はこちらにいたします」


先生がそう言うと、トレイにエレナの作ったお菓子がきれいに並べられていた。

紙にくるまれているので、一見何かわからない。

そのため女性たちはそれを凝視した。


「これは?」


そう言いながらじっと見た女性の一人がその中身に気が付いた。


「え、本物のお菓子ではないですか?」


それを聞いた彼女たちが紙の隙間から商品を覗き込むと、確かにそこには焼き菓子入っている。

そして近付けば、そこはかとなく甘い香りが漂ってくる。


「こんなものを出したら、本当に食べてしまう子が出てしまいますよ!」


ここまではバザーの練習にもなるという理由から、普段女性たちが作っている、これからバザーに出品する本物の商品を使っていた。

値段もバザーでの販売価格にしていて、模擬練習に本気で取り組む姿勢がうかがえたし、彼らもそれがこれから売り物になり、その売り上げが孤児院の収入にあることを知っているからか、商品を乱暴に扱うことはしない。

普段から雑な扱いをすれば怒られるし、汚せば商品にならなくなることを理解しているからだ。

けれどお菓子は違う。

食べたらなくなってしまうし取り返しがつくものではない。

女性たちが困惑していると、エレナが言った。


「これはね、私からのご褒美よ。もちろんあなたたちのものもあるわ」

「私たちのも?」


女性たちが顔を見合わせるとエレナは説明をつづけた。


「ええ。きちんと道具を完成させたご褒美。一人一つずつあるわ。これも商品として使ってちょうだい。もちろん他のものは、先ほどまでと同じようにやり取りしてもらうわ」


これから仕事にするのなら、バザーで売るものやその金額だけでの練習では足りない。

お店で働くならもっと高額を扱うことになる。

そしてその分、計算力も試されるとエレナが言うと、女性たちは顔を見合わせてからうなずいた。


「わかりました。ですが食べていいというのは最後に伝えることにします。そうしないと食べるのに夢中で勉強どころではなくなってしまうので……。あと、逆に他のものとこれを一つ必ず買うという条件で販売の練習をしてもいいですか?」


お使いをさせると失敗しがちなのは、好きなものを買ってしまって必要な商品を購入できない人が出る点だという。

多少の寄り道には目をつぶってあげられるが、値段がわからなかったり、気持ちが大きくなったりすると、持っているお金を散財してしまう子供がいる。

子供に持たせるのはお小遣いなので使ってしまっても構わないのだが、そうしてしまううちはその子供にお使いを頼むことができないので、今は理性の働く大人になってから買い物に行かせるというのが孤児院の暗黙のルールになっている。

より実践的な練習になるのではないかと、彼女たちなりの意見を出したのだが、先生は微笑みながら賛成した。


「それは名案ですわね。それなら喧嘩にならないでしょうし、お使いを頼まれて必ず買わなければならないものを忘れないようになるかもしれません」


先生がそうして話をまとめたところで、エレナは首を傾げた。


「私はどちら側になるかしら?」


エレナが言うと、女性たちは笑いながらそれに答える。


「姫様はどう考えても売る側です!」

「これは姫様が持ってきてくれたものなんですから」


販売経験がないエレナだが、彼らより計算能力は高い。

先生はそれを理由にエレナに販売側を頼もうとしたのだが、女性たちはそうではなく、純粋にエレナが作った商品を並べるのだからエレナも売る側に決まっているという。


「わかったわ。皆の足を引っ張らないように頑張るわね」


販売する側にいる中においては、エレナが一番の初心者だ。

エレナが気合を入れていると、先生が子供たちに言った。


「グループは決まりましたか?商品を並べなおしますから、商品に使ったものを戻してください」


そう言うと、子供たちは素直に女性たちにそれらを手渡す。

そして回収された商品は再びきれいに値札の前に置かれた。

こうして設定を確認したところで、いよいよエレナが売る側に回っての練習になった。


「皆さん、次はここにある商品以外に、ここに置かれている紙に包まれたものを必ず一つ購入していただきます。この商品も買うことを計算して、手元にあるお金を使うようにしてください」


先生が条件を加えると子供たちは顔を見合わせた。

同時に少し難易度が上がったことを認識すると、目を輝かせる。

そして先生が合図をすると、遊びに慣れてきた子供たちが一斉に動き出した。

人数が増えたとはいえ、一度にやってくる子供たちの対応に、販売側はせわしなく動くことになる。

こうなるとエレナより女性たちの方が手慣れている。

売るものが代わっても、やることが変わらないことをしっかりと理解している証拠だ。

先生はその様子をしっかりと見ていたが、エレナは作業に追われてそれどころではない。

けれどこうなった以上、自分の役割はしっかり果たさなければと、エレナは先生の終了の合図があるまで夢中になって対応したのだった。

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