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庇護欲をそそる王子様と庇護欲をそそらないお姫様  作者: まくのゆうき


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後片付けの分散

とりあえず交流は思ったようにいかなかったものの、孤児院の皆も満腹になるまで食事を食べることができたようだ。

孤児院のグループからは喜びの声が上がっている。


「今日はお肉たくさん食べたな」

「うん」

「サラダとスープとパンはいつもと同じだけど、串焼きがたくさんあったからおなかいっぱい!」


そんな声以外にも、自分で作ったものを食べた感動を話している子ともたちもいる。


「自分で串に刺したやつは特においしく感じたよ」

「私も!」


とりあえず庭で串焼きを作って食べる昼食は成功に終わったようだ。

今回体験した子の中から、次回エレナが来た時、厨房に入る許可をもらえる子が増えているかもしれない。

それも次回の楽しみの一つになりそうだ。


「皆のおなかが満たされたみたいでよかったわ。いつもだと洗い物を運んだりしないといけないのだけれど」


エレナがそう言って食器を持って立ち上がろうとすると、女性たちが止めに来た。


「それは私たちがやります」

「姫様は勉強の準備でしょう?」


今日は騎士たちも来ているし、王子様も勉強の様子を見ることになっている。

エレナからすればいつもと変わらないかもしれないが、これから院長室に勉強の道具を取りに行ったりしなければならないだろうから、ここは任せてほしいと女性たちは申し出るが、エレナは普段より散らかっている様子を見て、自分もこちらを優先すべきではないかと困惑する。


「そうだけれど……」


エレナが気にしていることを理解している彼女たちは顔を見合わせてうなずいた。


「洗い物、ちょっと多いと思いますけど大丈夫です!」

「そうですよ。今日はいつもよりたくさん食事もとってますし、いつもより元気ですから」


彼女たちはそう言うと次々と手近な食器を手に取る。

そこに騎士の一人がやってきて言った。


「ああ、伝え忘れておりましたが、洗い物は孤児院の分だけ問題ありません。いつも通りお願いいたします」


洗い物が多いという言葉を聞いて、慌ててやってきた騎士がそう言うと、女性たちは顔を見合わせてから尋ねた。


「騎士様の汚れ物はどうされるんですか?」

「持ち帰ってから騎士団内で洗います」


彼らに洗い物をさせることは想定していない。

そうしてくれたら自分たちは楽ができるだろうが、そうなると孤児院の貴重な水をたくさん使うことになってしまう。

それにこれは訓練の一環でもあるのだから、野営の時と同じようにするべきだ。

川があれば軽く洗い流したりもしていたが、なければそのまま、それはいつも通りであり、想定内のことである。

騎士の話を聞いたエレナは、それで女性たちの負担が減るのならと指示を出した。


「じゃあ、食べ終わった騎士たちは自分たちの洗い物をまとめてちょうだい。鍋も持ち込んだものと、孤児院のものがあるから間違えないように。残った食材は、申し訳ないけれど孤児院で夕食にでも使ってもらえるかしら?」


調理台にしていた場所にはまだ食材が残っている。

使いかけだけではなく、手を付けていないものもあるので、結構な量である。


「いいんですか?結構たくさんありますけど……」


おそらくこれだけあれば孤児院の一食から二食分くらいが賄えてしまう。

さすがに多いため、女性たちがどうするか決めかねているとエレナが言った。


「これをまた箱に入れて積み込むのも面倒だし、降ろし忘れたら腐らせてしまうかもしれないわ。だから置いていかせてもらえると私たちが助かるの。こちらが処分をお願いしているだけだから、食べても捨てても埋めても、好きにして構わないわ」

「処分……」


捨てても埋めてもと言われたが、こんな立派な食材にそんなことはできない。

受け取ったら食べるの一択だ。

なのにエレナから出た言葉は処分だった。

女性の一人がその言葉の衝撃に驚いてそうつぶやくと、エレナは微笑みながら言った。


「ええ。でも捨てるのはもったいないでしょう?まだ食べられるもの」


最初からそう話を持っていくつもりだったエレナの言葉を受けて、ようやく女性たちは受け取っていいものだと判断した。


「わかりました。このこと院長は……」

「もちろん残った食材を置いていくことは話してあるわ」


どうやら最初から根回しされていたらしい。

院長が知っていると聞いた女性たちにようやく安どの表情が戻った。


「ありがとうございます。大事にいただきます」


そう言うと女性たちは食材をここに運んできたときに使っていたかごの中に、残った食材を積み増すと、とりあえず調理台の上に置こうと話し合って運び始めた。


「そういうことだから、残った食材と孤児院のものは彼女たちに渡してちょうだい。私は勉強の準備をするから離れてしまうけれど……」


エレナがそう言って周囲を見回すと、ブレンダが立ち上がって言った。


「あとは私がやっておきましょう」


すると続けてクリスが微笑む。


「私もブレンダとここに残るよ。頭がいるから彼に引き継いだら二人ですぐにお勉強の部屋に向かうね」

「ありがとう」


確かに騎士たちに指示を出すなら、その行動を理解しているブレンダが最適だ。

そこにクリスが残ってくれるのなら、話を聞かないものは出ないだろう。

エレナがブレンダにこの場の指揮を頼むと、クリスが言った。


「だから先生はエレナと一緒に行っていただいていいですか?」


いつもやっていることだから、勉強の準備はエレナと護衛騎士だけでできる。

けれど今日は先生のその仕事を引き継ぐ必要がある。

先生が来ることになってもエレナの護衛騎士は一緒ではないし、作業を知る者がいない中で先生は準備を進めなければならない。

だから引き継ぎは準備の段階からでなければとクリスが言うと、先生が同意する。


「そうですね。お勉強の道具などがどこにあるのか知っておきたいので、準備からご一緒できた方が嬉しく思いますわ」


先生がそう言うとエレナはうなずいた。


「本当にわからないければ院長に聞いてもらえればいいのだけれど、先に説明しておくべきよね」


そうしてこの場でクリスとブレンダ、エレナと先生の二手に分かれることが決まった。

すぐに合流するが、護衛対象の居場所が分かれるため、クリスは片づけをしている騎士たちから何人か選び、少し増やして対処する。

そうして騎士たちが揃ったタイミングでエレナはいつも通り準備に向かうと動き出した。


「じゃあ、行ってくるわね」

「うん。楽しみにしてる」


そうしてエレナ達は片づけを女性たちに任せ、クリスたちを置いて、まずは道具を管理してくれている院長の部屋へと向かうのだった。

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