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庇護欲をそそる王子様と庇護欲をそそらないお姫様  作者: まくのゆうき


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召集と出陣

知らせを受けた騎士団長をはじめとした上層部は、至急、騎士たちに招集をかけた。

もちろん、休暇として街に出ている者たちも含めてである。

そうして取り急ぎ集合に対応できたすべての者たちを前に、およそいると判断して、点呼を取ることもせず、騎士団長が声を張った。


「皆集まったか」

「はっ!」


騎士団長の気迫に皆が緊張の面持ちで返事をするが、それを悠長に聞いている余裕はないようで、その声にかぶせるように話を続ける。


「あまり時間がない。簡潔に言う。ついに例の国と、彼の国の間で戦いが始まったとの報が入った。戦火はまだここには来ていないが、すでに始まっている。覚悟を決めろ!」

「はっ!」


ここまで緊迫している状況で招集がかかったのだから、明るい話ではないことは分かっている。

ついに自分たちの出番が回ってきたということだ。


「そして全員、いつでも進軍並びに戦闘配置につけるよう、準備を怠るな。休んでいる暇はない。準備のできたものから配置につけ。いいな」

「はっ!」



そうして騎士団長の命令を聞いた騎士たちは準備のため一斉に散っていった。

荷物がテントにある者はそこから武器だけを持ち、警備をしていた者は配置に置いていた荷物をテントに突っ込むと、先頭に必要な最低限の者だけを持ち、決められた配置に向かう。

そうして配置へ向かってみれば、知らせを受けてそう時間も経っていないというのに、彼の国の騎士たちがすでに準備を終えて待っていた。



この先、騎士団長ではなく、戦闘に長けている彼らの中から立てられたリーダーの指示に従うことになる。彼の国のリーダーと別動隊は、交渉のテーブルにつくため、皇太子殿下と共にすでに例の国に入っている。

そのため野営地に残っている騎士たちの中で、さらに小隊を作って、隊ごとに行動することになっているのだ。もちろん、あらかじめ小隊の長になる人間は決まっているし、道中、顔合わせも済ませてあるので、基本的に騎士たちは、決められた集合場所にいる見知った長のもとに集えばいいだけである。


「ここからは、我々の指示に従ってもらう。まず、今回の小隊の長に選抜されているのは、過去、何かしらの小隊を任されたことのある人間で、実績がある。安心してもらいたい」


人柄などは大まかに理解していても、長として適任かどうかまで把握することはできない。

個人の能力が高からといって有能な長であるとは限らないということは騎士団内でも理解があるため、そこは不安があった。

ケインの所属するところの長は自分や他の隊の指示に不安を持たずにすむよう、まず最初にこの話をしたようだ。

その時点でかなり上に立つ者として人をよく見ているのだということが分かって、ケイン達は小さく息をついた。


「感謝いたします」


一人がそう言ったのに合わせて、ここでは初心者になる騎士たちが頭を下げた。

もちろんケインも同様だ。

そして皆が礼をしたということは、ケインだけではなく、ここに配属された騎士たちが彼をリーダーとして認め、この先命を預ける覚悟をしたということでもある。


「ここはまだ戦場ではないが、すでに殿下は戦闘中のはずだ。彼らがここに来るにせよ、我々があちらに行くにせよ、猶予はない。早速説明を始める」


ケインの所属する隊以外でも同じように説明が始まっているようで、長を囲むように半円になっているところが多い。

一瞬だけ、周囲を見回したが、自分も話を聞き逃すわけにはいかない。

ケインは自分の小隊の長の方にすぐ視線を戻すと、今後の動きを頭に叩き込むのだった。



そしてこれまで野営地としていたこの場所だが、この先、進攻した後、何かあった際の後退ラインがここになる。

まず、怪我をすればここに運ばれることになるし補給もここで多く管理されることになる。

そのため野営地は死守されるそうなので、戦いに不要な荷物はここに置かれていくが、侵略されない保証はない。

しかし生きて戻ることを第一に全力を出すべきだし、戦の最中、そんなことを悠長に気にしていられるわけがない。

それでも、こうして戻るべき場所を守ってくれる人がいるというのは心強いものだなと思う。

最終的に国に、エレナの元へと戻らなければ終わらないが、すでに数日過ごしたこの野営地も、すでに自分たちの戻るべき場所となっている。

ここには怪我などによる途中離脱ではなく、終戦し、五体満足の状態で戻ってきたい。



そんなことを思いながら、ケインは野営地の中を見回した。

皆で食事をした場所、寝るために用意されている多くのテント、それを取り囲むように準備された簡易的な柵、すでに配置についている見張り達。

どうか彼らと元気な再会を果たせますようにと、密かに祈る。

ケインたちの隊は最初ではないものの進攻する方であるため、すでに出陣の合図を待っている状態だ。

ケインはそんな郷愁を持ちながら、自分に順番が回ってくるのを静かに待つのだった。



順番が来ると、ケインたちは長に付き従って、例の国に入ることになった。

先陣がすでにかなり片付けているらしいので、騎士団に入れるくらい戦う能力があるのなら問題ないだろうが、戦争は競技ではないし、命がけなのだから、生き残るために卑怯な手を使ってくることだってある。

敵はまだ自分たちの存在に気が付いていない。

しかしこれだけの大所帯が一度に同じ方向に動けば目立つので、この場所を防衛する者以外、隊ごとに決められた順、方角に進攻していく。

ただそんな仰々しいものではなく、ばらばらに様子を見に行くように繕っての移動のため、一見は偵察にしか見えないくらいだ。

それらをすべて加味して警戒するようにと長は言った。

そうして順番が回ってくると、注意と確認を一通り受けて、いよいよ移動が始まった。

戦場では素人であるケイン達にできるのは、彼の指示を的確にこなすことだけだ。

同僚、先輩である騎士たちも同じように考えているようで、出発時一度顔を見合わせただけで、言葉を発することはなく、すぐに長と、進行方向に目を向けるのだった。


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