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庇護欲をそそる王子様と庇護欲をそそらないお姫様  作者: まくのゆうき


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義母と義娘

ブレンダは大半が顔見知りというが、それは遠巻きに見て顔と名前が一致する、それに加えて雑談をしているからということだろうと認識した王妃は、微笑みながら首を傾げた。


「私の知る限り、女性たちとの交流の大半は夜会の警備中の雑談のように思えるのだけれど」


それを交流に含めるのはどうなのかしらと王妃はブレンダに問う。

ブレンダは王妃の意見を肯定しながらも、普通に出かけることはあると強調した。


「そうですね。家に戻りませんし、自分でお茶会なども開いておりません。呼ばれて足を運ぶことはありましたが、騎士服に似た男装の方がご令嬢たちは喜んでくださるので、着飾る必要もありませんでした。これでも多くのご令嬢方に声をかけていただいてますよ?」


騎士団の寮にいる自分のところにはご指名で多くのご令嬢からの招待が届いていた。

相手は選んで参加することになるものの、それでも数はこなしている。

ブレンダは相手に応じて、紳士のように尋ねたご令嬢を扱うし、女性の話によく耳を傾ける。

多くの女性が婚約者を持つ中、素敵な紳士とお話をしたいと思っても、それは難しい。

そこでブレンダにその役割が回ってくるのだ。

ブレンダとしては騎士団の中で、相手に見くびられないよう振る舞ってきた。

それを女らしくない、ましてや貴族令嬢らしからぬと多くの批判を浴びることになった。

けれどブレンダは紳士のように振る舞うご令嬢憧れ騎士という地位を勝ち取った。

彼女たちが自分の生き方を肯定してくれたことによって、ブレンダは自分らしく振る舞えると思っている。

女性が喜びそうなことが理解できるため、自分のできる範囲で叶えていく。

結果的に男性の一部を敵に回すことになったが、女性の敵は少ない。


「ある意味、あなたがそういう対応をしていたから、決まった時、思ったほど反発がなかったのは確かなのよね。ご令嬢たちも、先日の襲撃騒動の際、あなたがクリスを守りながら駆け抜けたっていう市民たちの声が届いているようで、より好意的になったようだし」


ご令嬢の理想の王子様像がブレンダになっているらしいというのは小耳にはさんでいる。

ちなみにクリスがブレンダという王子に守られる可憐なお姫様だ。

そしてこれらはいつか、お芝居や絵本の題材に使われるのではないかと言われている。

事件が起きたばかりの上、襲撃されたのが王侯貴族の列であったこともあり、今それをするのはさすがに不謹慎と弁えているようだが、誰かが動けば一斉にそういった話が出るだろう。

幸い死者はいないし、負傷者はでたものの大事に至っていない。

ちなみにもし話が上がったら、王家としては許可を出すつもりでいる。

そうすれば、ブレンダと、ケインの活躍を、彼らが世に広めてくれるからだ。



「あの時は職務を全うすべきと考えて必死でしたが、少々叱られました」


近衛騎士としての最後、あの華々しい隊列の中に騎士として並べたことはブレンダの誇りだった。

事件があったことは大きなマイナスだったけれど、クリスをすぐに助けることもできたし、自分としては満足している。

ただ、ブレンダは守られる側の自覚が足りないと後から来る人来る人に散々お小言を食らうことになった。

こう考えるととても前のことに感じられるが、まだそんなに多くの時間が過ぎていないのだなと実感する。

きっとその後ろが濃密な時間だったからだろう。


「それはそうよ。でもあの瞬間、発表直前までは騎士でありたいと言ったあなたの言葉に偽りはなかったということを、図らずも体現してしまったのよね。もし王妃という立場でも確かに王を守れた方がいいとは思いますけれど、それはあくまで最後の判断よ。……まあ、その話は置いておきましょう。私もあなたの母となるのです。そのような言葉に惑わされたりはしません。娘として皇太子妃としてしっかりと教育させてもらいます。そちらの夫人にはくれぐれもよろしくと頼まれましたしね。次のお茶の席にはぜひお招きして、淑女になった姿を見せてあげてもらいたいものだわ」


叱られたのは当たり前だと注意を始めた王妃はそれを中断した。

そう言われたら自分もブレンダに言いたいことがあったし、それがお小言になってしまうからだ。

何より、話の論点がすり変わってしまう。

今、この先皇太子妃としてどのようなものを身に付けるのかを勉強する場であり、それに相応しいものを目利きさせる場なのだ。

それに商会の者たちの目も耳もある。

そのため話を戻して、まずは自分の母親にきちんと王族の仲間入りを認められていると示すため、ブレンダの母親との席を設けると伝えた。

そしてその時の衣装一式を、クリスではなく王妃が用意するという。


「先日のクリス様のお披露目で充分かと思いますが……」


襲撃事件でインパクトは薄くなってしまったが、ブレンダは王太子の婚約者としてお披露目された。

王妃の指導で鍛えた笑顔を張りつけて、貴族令嬢らしく大人しくクリスの横に立っていたのだ。

我ながら自分で褒めても許されるくらい頑張ったと思っている。

これからも公式の場で同じ忍耐を要求されることになるのだから、非公式の場くらいは自由にしたい。

騎士団と、寮での生活は融通がきくし、ありのままを受け入れてもらえるのが助かっていた。

ただそれもあって、頭では分かっていてもそうしたいと思えない自分がいる。

ブレンダが曖昧に伝えると、王妃はにっこりと微笑んだ。


「日ごろからそうしていると示すのが大切なのよ。さあ、そういうことだから、こちらに装飾品を持ってきてちょうだい!」


王妃の言葉に担当者は喜びの笑みを浮かべた。


「かしこまりました!お任せください」


そう返事をすると、担当者は二人の前にここぞとばかりに装飾品を運んできた。

この話の流れなら、本人が気乗りしなかろうとも、王妃が義娘に選んだものを贈るはずだ。

一つも購入されなければ、それは商人の名折れになるだろう。

だからといって、何でもかんでも並べるという品のないことをすることはしない。

いかに彼女に似合うものとして、よい商品として提案できるか、腕の見せ所だ。

今回は王妃からの提案だけれど、次に必要になった際に贔屓にしてもらえるかもしれない。

さっきの話では、ブレンダ本人は実家に呼んでいる商会とつながりがなさそうなので、その商会が入り込んでくることがない、今がチャンスだ。

しかも王妃とブレンダの関係も良好。

それならば、この先もよい者さえ提供すれば声をかけてもらえるだろう。

担当者は自分を指名してもらえるようにと気合を入れて、すでに提示した商品をどう勧めようかと頭を働かせるのだった。

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