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庇護欲をそそる王子様と庇護欲をそそらないお姫様  作者: まくのゆうき


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ケインの騎士学校生活

クリスが王宮内で新たな仕事を覚えている間に、ケインは無事に騎士学校へ入学し、新しい生活を始めていた。

生活環境が大きく変わったことで、のしかかるストレスが大きい。

そして最大の変化は寮での共同生活である。

幸いにもルームメイトとなった同期とは気が合いそうなのだが、これから先、一人の時間が全く作れないという環境に慣れる必要がある。

訓練や勉強が終わって部屋に戻っても常にルームメイトがそこにいる。

相手がどんなに良い人であっても、あまり気を抜くことができない。



学校の説明によれば、学校を卒業して騎士として職についたら、年の離れた先輩とも寝食を共にしなければならないという。

学校での寮生活はその前の訓練の一貫でもあるそうだ。

ちなみに市民から騎士になったものの方が、こういう環境に慣れるのは早いらしい。

貴族のように自由に一人の時間を過ごすことが少ないからだと分析されているが真相は不明である。

だが、家族や近所の人と協力をしたり、時には干渉されたりしながら生活をしているのは事実なので、干渉してくる相手が変わるだけという感覚なのだろうということだ。

貴族の大半は甘やかされて育っているので、わざわざこのような環境を作られないと、この先、共同生活ができるようにならないから寮での生活を強制されるらしい。



騎士学校のカリキュラムは、今までと違いかなりハードなものだった。

授業が行われる日の場合、休憩は食事の時間と就寝の時間しかないといっても過言ではない。

一日休みの日もあるが、寮生は基本的に寮や学校の敷地から外に出ることはできない。

そして本人たちはというと、日頃の疲れが出て、皆、食事の時間を除いて、一日中部屋で寝ているような状態が続いていた。

授業の続く日は、寝坊しないよう気を張っているためあまり休まらないためだ。

そして騎士学校は座学よりも実技の時間が圧倒的に多く、毎日朝から晩まで訓練という状態が当たり前、訓練は能力を高めるために行うものなので、当然体には大きな負荷がかかるものが多い。

神経を張り詰めた状態、体を酷使した状態の環境の中におかれた新入生たちだが、この環境に適応できないものはどんどん退学していく。

そんな日常が数カ月続くと、さすがに退学をする者は減り、淘汰されて残ったものだけで学校の授業が進むようになった。



ケインにとって意外なことは、学校内では想像以上に団体行動が多くなったことである。

単に群がっているというより、決められた時間で動くためには全員が同じように行動しなければならないため、必然的にメンバーが固定されてしまうのである。

気が付けばケインもルームメイトと数名の生徒のグループの中に混ざって、常に一緒に行動をするようになっていた。

ただ、同じ志を持つものが一緒に長い時間を過ごすことにはメリットもある。

将来、同じ団で働くものがこの中から出てくるのは間違いない。

その時、過酷な訓練を一緒に乗り越える顔見知りがいるのは心強い。

ここで教鞭をとっているのは皆、現役の騎士か、騎士の職を経験した者である。

そんな彼らが口をそろえて、この学校で多くの友人を作ることがこの先大事だというのだから、おそらく間違いないのだろう。

前の学校ではクリスと多く行動を共にしていたため、クリス以外の生徒との距離がここまで近くなることはなかった。

過去の学友は知り合い程度、今の学友はまだ戦いに出たわけでもないのに、この過酷なカリキュラムを乗り切るための戦友といった感じである。



なお、この学校に入ったからといって皆が騎士になれるとは限らない。

騎士になるためには、騎士団に入るための入団テストに合格する必要がある。

この学校の目標は知力と体力を身につけ、騎士団の入団テストに合格するというものなのだが、毎年数々の団で行われる入団テストの合格者数は、その団が必要とする人数のため毎回異なる。

そしてテストの上位から合格者が決まるため、合格できるかどうかは運に左右される部分も大きい。

卒業が近くなっても行き先が決まらず、地方の騎士団の入団テストまで挑戦しようとしている人も中にはいるので、テストが行われている期間は学校中がピリピリとしているという。

騎士団というのは大変狭き門なのだ。

ちなみに騎士団に入れなくても、警備や護衛を仕事とするのならばこの学歴は大変有利なるため、最初からそういう道を選択する人もいるという。

意外にも騎士学校に通っているからと言って皆が騎士団を目指しているわけではないということだ。



彼らと生活をしている中でそんな情報を得ながら、ケインは学校生活を送っていた。

最初の一ヶ月、余裕がなく、お互い名前くらいしかやり取りしていなかったルームメイトとも、少し雑談できるくらいの余裕が出てくると、就寝前にお互いに身の上話をするようになった。


「俺は、騎士という職について、両親の自慢の息子になりたいと思ったんだ。それに長男じゃないから家督を継ぐことはできなくて、領地で兄の元で働くか、職にはつかないといけない。それなら騎士を目指してみようと思ったんだ。ケインは何でここに入ったんだ?」

「俺は……」


まさかエレナのことを言うわけにはいかない。

少し考えて、再び口を開いた。


「子どもの頃に、ある人を近くで守る仕事をしたいって言ったら、親に勧められたんだ。騎士という職業があるって。親からすれば俺はまだ子どもだったし、成長したらやりたいことも変わるだろうから進路は変更してもいいと言われていたけど、俺の気持ちは変わらなかった。だからこうしてここに入ることにしたんだ」


すると、ルームメイトが感心したように言った。


「へぇ……。ケインは真面目なやつだと思ってたけど、想像以上に堅物なんだな。なんか意志が固いというか、重いというか?俺が進路決めたのここ一、二年だから、ケインからしたら俺が軽いって感じるんだろうな。他にも子どもの頃から目指していてって人、いるのかな。そう考えるとちょっと申し訳ないような気分になる」


確かにずっと頑張ってきて、彼が入学したことによって入学を諦めなければならなかった者もいるだろう。

しかし、この短期間で学校を退学しているものが多い。

事情のあるものは仕方がないが、覚悟が足りない彼らに比べたら、ルームメイトの彼は授業も真面目に受けているし、実力が足りないわけでもない。

申し訳なく思うようなことは何一つないとケインは思う。


「本当にやる気がなければとっくに退学してるんじゃないのか?」


ケインが言うと、彼は答えた。


「うーん。確かに辛いけど、騎士を諦めようとか、退学しようとは思わないんだよな」

「じゃあ、問題ないじゃないか。目指し始めた時期が早くないといけないということはないだろうし、俺が今まで生きてきた間、他にできることや目指すものに出会わなかっただけだと思う」


改めて自分の思いを振り返りケインが返事をすると、彼は嬉しそうに言った。


「俺さ、ケインがルームメイトでよかったよ。ほんと。じゃあおやすみ」

「ああ、おやすみ」


このような感じで毎日、色々な話をお互いにして気が付けば彼との交流は深まっていくのだった。

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