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庇護欲をそそる王子様と庇護欲をそそらないお姫様  作者: まくのゆうき


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エレナの騎士という誇り

作戦が指導してしまったのだからこちらも並行して進めなければならない。

クリスは男が順調に計画を進めている話を聞いた後、すぐにケインを呼びだした。


「ケイン、エレナとは話せた?」


人払いをして単刀直入にクリスが質問を投げつけると、ケインは首を横に振った。


「いえ、避けられてしまっています。私も自分の気持ちと向かい合う時間が必要でしたので、対面しないのはありがたくもあるのですが、これからどうエレナ様のお気持ちを確認すればいいのか、少し悩んでおります」


勢い余ってエレナに自分の理想を語ってしまった。

エレナならきっと望んでいるはずのことを、できるだけ多くを叶えたいと思っている。

さすがにその多くを叶えるのが自分でありたいというところまでは伝えられなかったから、エレナがそれをどう捉えたのかは不安だけれど、とりあえず自分の望む未来については伝えてある。

だからエレナが本当にそれを望むのかどうか、悩む時間が必要ならその時間を与えたいとケインは考えてせっついたりはしていないのだ。


「そっか。あれからずっとエレナは食事以外の時間、部屋にこもっているって聞いたけどそれで間違いない?勤務中なのに呼び出しを掛けたらすぐに来られたのはそういう状況だからってことで合ってる?」

「はい。少なくとも私がついている時は、私は廊下待機になっております」


現在、ケインがエレナの側にいられる時間は極端に少ない。

エレナが部屋の外に出る食事の時間や、調べ物のために本を取りに行く時間くらいしかついて歩くことがないからだ。

そして現在も、侍女の報告では、エレナは部屋の中で色々考え込んでいる様子で、特別移動を匂わせるようなことは言っていないということなので、呼びに来た騎士と一時的に交代してこうしてクリスの執務室へと足を運ぶことができたというわけだ。


「そう……。あのねケイン、申し訳ないけど、そろそろタイムリミットなんだ。今のケインの考えを聞かせてくれるかな。もちろん、非現実的であっても理想論であっても構わない。どうしたいのかってことが知りたい」


考える時間は与えてあげたいと思っているけれど、それにも時間制限がある。

それは分かっていたし、裏で何かが動いている事も察していた。

きっとそれに関係ある事だろうが、さすがにエレナと自分の将来に関わることなのだから、その内容を知った上でエレナに最善となる意見を言いたい。

クリスだってそうしてほしいと考えているはずなのに、いつもと違って焦りが見られ、ケインの考えを、どうなりたいのかを教えてほしいと訴えてくるから不思議でならない。

言えないような重大なことが動いているのだろうと、ケインは推測していたが、答えられなければ答えられないというだろうと、ケインはそれを確認すべく口を開いた。


「あの、クリス様はどうして急にそのように焦られているのですか?」


焦っていると言われたクリスは、思わず苦笑いを浮かべた。

同時に気付かれないように繕う余裕もないまま急に二人をせっつき始めたのだから、エレナとの将来に関してどうするか結論の出ているケインには、隠し通せないだろうと判断する。

それでもそれが自分の仕込んだものであることはまだ伏せておく必要がある。

男がまだ、そこまで達成したという話が出ていないからだ。

そして、この話をすることでケインが動いて事態が大きく進展する可能性もある。

クリスはそこにかけることにしたのだ。


「そうだな……。エレナには話していないんだけど、ケインには状況を説明しておくべきだね」

「何でしょう?」


重大な事を聞かされるのだとケインは改めて姿勢を正し、緊張した声でそう答えた。


「これから、エレナと例の皇太子の関係が良好だっていう話が聞こえてくることになると思う。私のお披露目の時のこともあるから、少なくとも周囲は気さくに話せる間柄だってことは認識しているから、多分周囲は信用すると思うんだ。この手の噂は広がるのが早いし、事情を知っている人間以外からすればおめでたい話だから、誰もが躊躇うことなく話すと思うんだ。そうなると、こちらも悠長なことは言っていられない」


これは嘘ではない。

噂を流していない今だって、そのような声が少なからず上がっている。

あの威圧の強い武の国の皇太子と平然と談笑できるなど、ましてや怯えることなく自分の意見を通すなど、よほど親しくなければできない。

彼の強さや冷淡さを知る誰もが、エレナが皇太子妃の最有力候補と見たはずだ。

ただその後、特に二人で話している様子が見られなかったことから、彼の国の皇太子の茶番と捉えた者もいるらしい。

非公式で婚約の打診がなされている事を知らなければ、彼がエレナにわりと本気でアプローチしてきているなど考えもしない、そんなところだろう。



「私はどうすればいいでしょう?」


少なくともケインはエレナが彼の国に嫁ぐことを希望していないというのは知っている。

気持ちが変わった様子はないのでおそらく今も同じだろう。

行きたくない国へ輿入れさせるのを止められるのなら、自分はそのために動く。

その決意を持ってケインがクリスに問いかけると、クリスはため息をついた。


「だからまず、ケインがどうしたいのかを教えてほしい。ケインが望むものが知りたい」


今までエレナのために多くの努力と苦労を背負ってくれたケインの希望は無視できない。

クリスはケインの希望の多くがエレナに関するものであることを知っている。

だからこそ、ケインがエレナの事をどう考え、将来どうなりたいのかを知っておきたい。

別にクリスもエレナのためにケインを犠牲にしようなどとは考えていない。

もしケインに別に好む女性ができたのなら、義務のためにエレナに寄り添うのではなく、その幸せを掴んでほしいし、そのための協力を惜しむつもりはない。

ここまでしてくれたケインの恩に報いることができるとすればそのくらいのことしかない。

そしてこれが引き返す最後のチャンスでもある。

ケインがエレナを選ばない事を選択できるタイミングはここしかない。

もしケインがエレナを選んで、そのために行動したら、ケインの選択肢はエレナしかなくなってしまう。

エレナの場合は国が強制し相手を変更することが可能だが、ケインにそれはできない。

だからここで間違ってはいけないのだ。

少なくともクリスが親友としてケインに示せる最大限の誠意なのだ。

だからケインの率直な意見ではなく、本人の意思を教えてほしい。



ケインもクリスの口調からいつもと違うものを求められている事を感じとっていた。

いつもエレナの事について聞きたいと遠回しに聞いてくる言葉とつかわれている者は似ているけれど、今回はそれを求められていないのだ。

これはきっと、言葉のままに捉えて回答するのが正解だろう。

ケインは長年の付き合いからそう判断して口を開いた。


「私は、エレナ様の意思を尊重したいと思っています。それで仮に、彼の皇太子の方をお選びになるのなら、それも仕方のないこととケジメをつけるつもりです。ですが、エレナ様が私を選んでくださるのなら、全力で幸せにすべく尽力いたします」


これがケインの意思だった。

すでに自分の気持ちを伝えてある。

しかしこれでエレナが自分を選ばなくても、その時はエレナの選択を尊重するつもりでいた。

元々叶わぬ恋だったのだ。

秘めておかねばならなかった自分の気持ちを伝えられただけで、かなりの温情を掛けてもらったと思っている。

ケインの答えを聞いたクリスは、一番知りたいと思っていた情報が入っていないため、それを問う。


「それは、ケインに彼の皇太子と争う意思はないってことでいい?」

「いえ、エレナ様が望まぬことを求められるのなら戦いますが、そうでないのなら何もしないというだけです」


だからエレナの意思を確認したい。

本人が納得できる答えに自分で到達できるまで考える時間を与えてほしい。

自分はどう転んでもエレナの希望を叶えるために尽力するだけだ。

例えそれが自分の失恋に繋がっても、それでいいし、皇太子と剣を交えることになってもいいのだ。

それが、自分がエレナの騎士であるという誇りになる。

とにかくエレナの邪魔になるようなことはしないと、ケインはクリスに自分の意思をはっきり伝えたのだった。

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