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庇護欲をそそる王子様と庇護欲をそそらないお姫様  作者: まくのゆうき


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街での揉め事

広場で飲み終えたグラスを返した二人は、早速少し広場から離れることになった。

今日は広場から延びる道の多くに敷物を敷いた人たちが商品を並べている。

普段は道にそのような店を出すことを禁止しているが、バザーの時だけは許可されているのだ。

だからバザーは街に来て歩き回るだけで見ることができる。

見るほうはそれでいいのだが、出す方は違う。

出店できる範囲は決まっているが、場所は早い者勝ちとなるため、早朝から必死に場所の確保のため水面下で戦っている。

だから当日にならないと、どこに誰が店を出しているのか分からない。

出店場所を正確に知るためには、場所を誰かに教えてもらうか、早く来て探しておかなければならない。



今回はお忍びということもあり、エレナが行くことを孤児院にも事前に伝えていない。

そのため孤児院の出店場所は自分たちで探す必要があった。

エレナとブレンダが広場で飲み物を飲んでいる間、エレナに付き添った護衛騎士を中心に彼らの出店場所探しが行われていた。

実は二人が広場に到着した時点でまだ孤児院の出店場所を見つけられていなかった。

ブレンダが騎士たちの動きを見てそれを知ったため、動き回るよりここで休憩をした方がいいと判断してエレナに食べ物を勧めることで広場に留まった。

そして騎士たちは場所を特定すると、ブレンダにそれとなく合図で伝える。

その合図を受け取ったブレンダは、それとなく行きましょうと言ってエレナをそちらに誘導していくのだ。

エレナは騎士たちの合図が何を指しているものなのか分かっていないが、自分のために彼らが動いていることは理解している。

だから早く行きたいとか、あれが見たいとあまり我儘を言うことはしない。

騎士たちはエレナが広場に到着したのに、目的の場所を発見できていないことに焦っている様子だったので、広場を堪能して見せれば落ち着くだろうと、飲み物をゆっくり飲んでいた。

自分で買い物をして、おいしそうに飲み物を飲んでいる様子は実際騎士たちの気持ちを落ち着かせていた。



「見慣れないものがたくさん並んでいるわ!あれはアクセサリーかしら?でも手前にあるのは……お鍋?」


移動を始めてすぐのところで、不思議な品ぞろえの店を見つけたエレナが思わず足を止めると、ブレンダが簡単に説明する。


「おそらくアクセサリーを売るついでに、家で使わなくなった日用品も売ることにしたのでしょう。出店範囲内であれば基本的に何を売ってもいいことになっていますので」

「そうなのね!とても自由な感じがするわ」


ブレンダと手を繋いでいるエレナは、バザーの品々を見ながらお店の統一性のなさを楽しそうに見ながら足を進めた。

歩きながらブレンダはエレナにそれとなく現状を伝える。


「先程の報告では、孤児院の方々はこの通りで商品を並べているとのことでしたから、見ながら行きましょう」

「そうね!見ているだけで楽しいわ」


お店を見ながらなので歩くスピードはゆっくりだ。

人が多いこともあるが、皆がエレナたちと同じように店を見ながら歩いているので、早く進めとせっつかれることはない。

目的地はこの先にあるらしいが、ブレンダが見ながらでいいと言うのだからエレナは言葉の通り、堪能しようとうなずいた。

そしてブレンダはエレナにここで一つお願いをすることにした。

別に護衛たちの合図で動いてもいいが、それでは本当にエレナは連れられているだけになってしまう。

だから少し役割を与えようと考えたのだ。


「エレナ様、この通りを進んだところに孤児院の方々の出店場所があるというのはわかっておりますが、私は孤児院の方々を存じませんので、見つけるのはお願いできますか?」

「そうよね。ブレンダは誰とも面識がないのだから、私が見つけなければいけないわね」

「頼りにしております」

「わかったわ!」


ブレンダからお願いされたエレナは嬉しそうににっこりと笑って、店だけではなく通り全体にも目を配るのだった。



通りを進んでいくと、少し広めに場所を押さえているお店に見覚えのある子どもを見つけてエレナは言った。


「ブレンダ、あそこに孤児院の子どもたちがいるわ!」


お店の前には人垣のようなものができているが、他の店の隙間からちらっと子どもの姿が見えたのだ。


「エレナ様、声はかけられますか?」

「そうね。そうしたいけれど邪魔にならないかしら?」


そこだけ人が多いということはお店が繁盛しているということで、彼らもきっと忙しくしているに違いない。

声はかけたいけれど邪魔はしたくないとエレナが言うと、ブレンダは声をかけるくらい問題ないとエレナに伝える。


「長居しなければ問題ないかと」

「そう?」

「とりあえずお店に行ってみましょう。ここからでは何をしているかもわからないですし、どんなものを出品しているのかも見ることはできませんから」


そうして二人は人垣の方に向かって歩き出したのだった。




人垣の近くまでやってくると、彼らがバザーを楽しんでいる雰囲気ではないことに気が付いた。

声の感じから、どうやら人垣の向こうでもめ事が起きているらしいことが分かる。

ブレンダは確認ができるまで近付くのはよくないと、エレナを止めた。


「お待ちください」

「どうしたの?」


人垣から少し離れた場所まで来て止められたエレナは不思議そうに小首を傾げた。

近くまで来て、エレナにもあの人垣があまりよいものではないことは察せられたが、通行くらいはできるだろうと思ったのだ。

だがブレンダはそうではないとエレナに告げる。


「今はいけません」

「ブレンダ?」

「孤児院のお店がトラブルになっているようですね」


もし別のお店でトラブルになっているだけならば、今ある他のお店のように見ることもできだろうが、目的の店でトラブルが起きているなら別だ。

ブレンダは周囲を見回し護衛騎士からの合図でそれを知らされたため止めるしかなかったのだ。



話を聞いたエレナは自分のことよりも孤児院の皆のことが心配だった。

いくら贔屓をしてはいけないとは言われていても、皆、自分を快く受け入れてくれた人たちだ。

困っているのなら何とかしたい。


「助けてあげるわけにはいかないの?」

「私たちが行けば事態が悪化するかもしれません。護衛騎士たちが動いていますからこのまま様子を見ましょう」

「わかったわ……」


ブレンダがエレナに護衛たちが対処すると伝えると、エレナは心配そうにブレンダを見ながらも首を縦に振った。

ブレンダだけなら何とかできたかもしれないが、自分が行ってもできることは少ない。

それならばいつも警備している騎士たちに任せた方がいいだろう。

人垣が邪魔でその様子を知るのが難しく、その向こうで起こっていることが分からないのも不安だが、それも仕方のないことだ。

エレナが勝手に突っ込んで危険に巻き込まれれば、ブレンダや他の護衛たちに大変な思いをさせてしまう。

エレナは不安からブレンダの手を強く握る。

ブレンダはそんなエレナを落ち着かせようと、クリスがしていたようにエレナの頭をそっと撫でたのだった。

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