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庇護欲をそそる王子様と庇護欲をそそらないお姫様  作者: まくのゆうき


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王妃の狙い

ブレンダと王妃が話をしているのを聞きながらふと頭に浮かんだことをエレナは口にした。


「ねぇ、そういえばブレンダはよく街に行くのよね」

「はい。巡回のために……。どうかなさいましたか?」


急に別荘から街の話に戻ったため、慌てていつもの調子でエレナに尋ねると、エレナは小首を傾げた。


「バザーって街で行われるのかしら?」

「バザーでございますか?」


勉強の話でもなければ、行きたい場所とも少し違う内容のため、ブレンダがオウム返しのように聞き返すと、エレナはうなずいた。


「ええ。子どもたちが刺繍をしていたものをバザーで売って、孤児院の収入の足しにすると言っていたから、そういう催し物はどこで見られるのか気になったのよ」


ようやく少し勉強から離れ別のことを考えるようになったのかと思ったが、結局、孤児院に関係することだった。

けれど、エレナが勉強の方法を模索して煮詰ってしまうよりいい。

元は勉強の教え方を学んだりするために孤児院に行っているわけではなく、民の生活がどのようなものなのかを多角的に見ることが目的なのだ。

ただブレンダはその孤児院に行ったことはない。

なので知る限りの可能性を提示することにした。


「そうですね……。その孤児院がどちらに参加されるかわかりませんから、まずは確認なさるのがよいかと思います」

「バザーというのはたくさん行われるものなの?」


実際に見たことがないので想像でしかないが、バザーというものは滅多に行われないから、そこにより多くの商品を出し、販売して収益を得なければならない。

だからその日のために、彼らは努力しているのだと思っていた。

でもたくさん行われているのなら、そこでこまめに販売すればいいのではないかとエレナはブレンダに疑問をぶつける。


「たくさんと言いますか……。まず二つのパターンがございまして、一つはエレナ様が想像なさっていると思われる街の広場に屋台のようなものを広げて出すもの。こちらは出しても良い場所や日時が決められております。そしてもう一つは孤児院の敷地で行うもの。こちらならいつでも開催できますが、集客できなければ売れませんし、集客できても敷地に見知らぬ人が入ってきますから、きちんと人流を管理できる施設でなければ難しいでしょう」

「そうなのね。孤児院の子どもたちは、バザーで街の人から食べ物をもらうこともあると言っていたから、参加しているのは街で行う方だと思うわ」

「なるほど。そうでしたか」


とりあえずエレナが言っているのは街で行われるバザーであることが確認できた。

街でのバザーは、普段店を持っていない人が家の不用品を販売しようと店を出したり、孤児院のような施設が手作りの品を安く提供して収益を上げようと頑張ったりしている。

そのため掘り出し物を探しに来る人が多いので当日はいつもよりさらに街が活気にあふれた状態になる。


「それでね、私、バザーに行ってみたいのだけれど……」

「バザーにですか……」

「ええ。そうしたらどんなものを売っているのかとかわかるし、彼らが頑張っている姿も見られるでしょう?そこで売れそうなものを考えてみるのもいいと思ったの。それにいつもと違う街というのも見てみたいわ」


先日少しの時間だが一緒に刺繍をした。

その刺繍した商品がどのように売られているのかも見てみたい。

それにバザーの時は忙しいから孤児院への手伝いはできないと事前に言われている。

だから公務さえなければエレナの時間は空いているのだ。


「そうですね。ですが人出がいつもより多くなりますので、危険も多いかと思います」

「危険なの?子どもたちもいるのに?」

「はい。ですが彼らは普段からあの環境で育っていますから、対処できるでしょうし問題ありません。大人たちもついていますし、普段店を出している人たちが付いてくれているでしょうから」

「それならいいのだけれど……」


エレナが子どもたちを心配していると、王妃が笑みを浮かべて言った。


「そうねぇ。ブレンダ、申し訳ないのだけれど、エレナのわがままを聞いてあげてもらえないかしら?」


疑問形で聞かれているがこれは命令だ。

言われたブレンダに断る権利はない。


「王妃様がそうおっしゃるのなら……」

「嬉しいわ!お母様ありがとう」


エレナが素直に喜ぶと、王妃はため息をついて言った。


「エレナ、私はいいから、クリスにちゃんと許可を取りなさい。いいわね」

「ええ!お兄様にも聞いてみるわ!」


エレナがはしゃいでいるのを見ながら王妃がブレンダに言った。


「ごめんなさいね。活発な子で」

「構いませんよ。エレナ様が街に行くのはお忍びで私と出かけて以来になると思います。ずっと窮屈なのではないかと気になっていたのです」

「じゃあ、お願いするわ」


話を小耳にはさんだエレナは、またブレンダと出かけられると聞いてさらに嬉しそうにしている。


「またブレンダお姉様とお出かけができるなんて、とても楽しみだわ」

「エレナ、あくまで視察、孤児院がどのように活動しているのかを見て、何かできることはないか、しっかり考えるの。わかるわね」

「わかっているわ」


前に街に行った時も初めてのことがたくさんあった。

今回もまた、違うことができるし、違う街の一面を見ることができる。

エレナは自分の提案が街への視察という名のお出かけとなって、その日が待ち遠しいといった様子だ。


「それじゃあ、今日はお開きにしますから、二人はクリスのところに行きなさい」

「かしこまりました」


ブレンダがそう返事をして素早く立ち上がり礼をすると、王妃はため息をついた。


「ブレンダ、少し違うわね」

「そのようにいたします」

「……まあ、いいわ」


このお茶会、そもそも王妃教育を兼ねている。

ブレンダはどうしても臣下としての行動が優先されがちで、どうしても下からものをしゃべる癖が染み付いてしまっている。

何とかそれを取り除きたいので、答え方を考えるようにと話す機会を増やしているのだが、やはりこういうときはすぐ出てしまうのだ。


「お母様、お心遣いありがとうございます」


一方のエレナは自然とそれなりの言葉を返してくる。

本当はエレナが話している言葉を聞いて、自分の言葉と比較して欲しいという思惑もあったのだが、エレナの話で終わってしまった。

けれど今回は、とりあえずエレナの頭を文字の教え方から切り離すことができたのだから、成果は充分だ。

その話をしている間にエレナは立ち上がり、早くクリスの許可を取りたいと二人の会話が終わるのをじっと待っている。

けれど これだけは伝えなければと王妃は笑みを浮かべながらつい最後にお小言を言う。


「ブレンダ、まだまだかしこまりすぎよ。また声をかけさせてもらうわ」

「楽しみにお待ちしております」


ブレンダはその言葉の意味を正しく捉えながらもうまくかわした。

そうしてお茶会はお開きとなり、二人はクリスに王妃の提案を持って訪ねることになった。

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