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庇護欲をそそる王子様と庇護欲をそそらないお姫様  作者: まくのゆうき


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クラスメイト

クリスと、兄の腕にしっかりとしがみついた状態のエレナが、上級生の教室からクリスたちが勉強する教室へと向かっていると、徐々に廊下にいる生徒の数が増えてきた。

授業が終わっているため廊下に人がいてもおかしくはないが、それにしては人数が多い。


「どうやら、少し噂になっちゃってるみたいだね。大丈夫?」


クリスが確認すると、エレナはクリスの腕につかまったまま体を傾けてクリスの顔をじっと見て首を縦に振った。

そしてまた背中に隠れるようにくっつく。

エレナはクリスの背中にくっついて顔を隠しながらも、集まってきている人たちをちらちらと確認していた。

この中にケインがいるかもしれないと思ったのだ。



この学校という場所でエレナを知っているものは少ない。

普段とは違うクリスの王子様ぶりを目の当たりにした女子生徒たちは、遠くからその様子を眺めながらため息をついていたが、一方で隣にいる女が気に入らないという女子生徒が現れた。

そしてそんな女子生徒たちが突然二人の前に立ちはだかったのである。


「クリス様、ここは学校ですからこのようなご無礼をお許しください」

「うん。どうしたの?」


クリスと一緒に足を止めたエレナは驚いてクリスの腕を掴んだままその背に隠れた。


「そちらのお嬢さんはどなたなのですか?ご紹介いただきたいですわ」

「ああ、君は初めてなんだね。エレナ、彼女たちはここの生徒だよ。大丈夫だからご挨拶して」


クリスが声をかけると後ろからひょっこりと顔を出して様子をうかがってから、恐る恐るクリスの横に戻ると、クリスの手を離して自己紹介をした。


「兄のクリスがお世話になっております。妹のエレナです。今後とも兄のことをよろしくお願いいたしますね」


一歩も引くことなく最後に笑顔をむけると、周囲の男子生徒から歓声が上がった。

おっとりしたクリスもかわいらしいが、エレナがそれに劣っているわけではない。

二人で並んでいる様子が姉妹のようになるだけである。


「お兄様、大きな声が上がったようなのですが……?」


相手の挨拶がないため、歓声に気を取られたエレナはクリスの服の袖をつんつんと引っ張って言った。


「そうだね。気にしなくていいよ。今日は行事ではないから、皆がエレナを見に来ているわけではないからね。ここではエレナには関係ないこともたくさん起きるんだよ」


いつの間にかギャラリーが増えていたが、それを気にすることもなくクリスはそう言った。


「そうですよね。今日は私が見せていただく立場ですもの。いちいち何があったのか気にしていてはいけませんわね」


前に立ちはだかった生徒はいないもののように話が進んでいく。


「そろそろ教室を見せて他の場所に行きたいんだけど、もういいかな?」


クリスが彼女たちに笑顔を向ける。


「は、はい……」


慌てて彼女たちは両脇によって二人のために道を開けた。


「じゃあ、行こうか」

「はい」


こうして二人はまた手を取り合って歩きはじめたのだった。



二人が教室に着くと、やはり噂が広がっているからか、いつもより人がたくさんいる状態であった。


「ここが教室なんだけど……エレナ?」


あれだけ見たいと言った教室に着いてもエレナは顔を引っ込めたままである。


「どうしたの?」


心配そうにクリスが尋ねるとようやく少し顔を出して教室の中を確認した。


「私が入ってもいいのかしら?まだ使用しているみたいだわ」

「うん。いつもならこの時間はほとんど人がいないはずなんだけど、やっぱり噂が広まっちゃったのかな。エレナが来ることは先生たちしか伝えていなかったんだけど、歩いてきている間に廊下にも人が増えちゃったしね。生徒が帰るのを止めて戻ってきたのかもしれない」

「そう……」


これでは教室でゆっくり思い出話などできない。

しかし教室の中の生徒は、この機会を逃すまいと彼らが入ってくるのを待ちわびている。

入口で入るかどうか悩んでいるエレナにクリスは言った。


「無理しなくていいよ。他のところを見てから戻ってきてもいいんだし……」

「でも、そうすると、彼らは教室でずっと待っていたりするのでは……?」


彼らの視線を浴びながらエレナが答えると、クリスは苦笑いを浮かべた。


「そうかもしれないね」

「それなら、ここで一度お話してしまいましょう。最後にもう一度ここに立ち寄ってくださればゆっくりできるかもしれないでしょう?」


そう言うと、エレナは自ら教室に踏みこんで、先ほどの女性生徒にしたように挨拶をした。


「クラスメイトの皆様。兄のクリスがお世話になっております。妹のエレナです。今後とも兄のことをよろしくお願いいたしますね」

「皆ごめんね。今日は妹が学校を見に来ているんで、私が案内をしているんだ。なんだか騒ぎになっちゃってるみたいだけど、私たちのことは気にしないで、みんないつも通りにしてね」


エレナの挨拶に続いて、クリスがクラスメイトに声をかけた。

二人が並んで挨拶をする光景を見たクラスメイト達は、しばらく返事も忘れてポカンとしていたが、数人が我に返って返事をした。

クラスメイトがポカンとしている間に、エレナはクリスの腕にしがみついてその背中に隠れていた。

その背中の後ろから時々顔をのぞかせてはひっこめる動作を繰り返しているエレナの様子は、クラスメイトには人見知りをしている妹のように映っていた。

エレナからすれば、ケインがどこかにいないかと探っているだけなのだが、そんなことを彼らが知るはずもない。

お互いがお互いを観察するよう状態が続き、教室の中はとても静かだった。

その様子にだんだんと居たたまれなさを感じたクリスが大きく息を吐いて、首だけを動かしてエレナの方を見た。


「エレナ、大丈夫?行こうか」


エレナが背中に隠れたままうなずいたのを確認すると、空いている方の手でエレナの頭をポンポンと撫でた。


「じゃあ、そろそろ失礼するね」


クリスが歩き出すとくっついているエレナも一緒に歩き出した。

教室を出ようとしたところで、クリスの袖をツンツンと引っ張ってからその手を離すと、エレナは振り返って丁寧に頭を下げて、彼らに笑顔を向けた。

そんなエレナをクリスが穏やかな笑みを浮かべて見ていると、エレナが振り返ってクリスの方を見た。

クリスがうなずくと、エレナは再びクリスの腕にしがみついた。

クリスはそれを合図に、エレナを連れて教室を後にするのだった。

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