表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
庇護欲をそそる王子様と庇護欲をそそらないお姫様  作者: まくのゆうき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

214/977

配属発表と挨拶

騎士団内で無事に昇格試験が終わり、騎士団長が決定した配属について国王やクリスの許可が出たところで、結果が本人たちに通達されることになった。

ちなみにこの通達は試験を受けた者だけではなく全員に配属内容を通知するものとなっている。

これらは一斉に発送されたため、外から通いのものは少し遅れて受け取ることもあるが、寮に住んでいる者は仕事を終えて戻った者から受け取る形だ。


「なんかこういう形で受け取ると、入団試験の結果を受け取った時のことを思い出すな」


ケインと一緒に通知を受け取ったルームメイトが部屋のドアを閉めるなりそう言った。


「ああ、そうだな」


冷静に見えるケインも実は今回ばかりは気が気じゃなかった。

次に昇格できるタイミングは一年後だ。

できるだけ早くエレナの側にと思っているのに、こんなところでつまずきたくはなかった。

一方のルームメイトは昇格したいという出世欲が薄いからか、その通知を受け取った感想こそ似たような表現だったが、別に退団させられるわけではないからあの時よりは気楽だと、すぐに内容の確認を始めた。


「どうした?」

「あ、いや……」


戸惑うルームメイトが気になってケインはその手に持っている通知をのぞきに行った。

それを見てケインは慌てて自分の通知を確認した。

そして安堵して大きくため息をついた。

そのため息に驚いたルームメイトが我に返ってケインに声をかける。


「どうした?」

「いや、少し安心しただけだ」

「そうか。俺は……何でこうなったか分からない……」


二人の通知にはエレナの近衛騎士になるよう辞令が下っていた。

ケインからすれば第一希望だが、ルームメイトからすれば騎士たちの出世争いに巻き込まれる穏やかではない日々の始まりに見えた。


「よりにもよって、何でエレナ様なんだ?」

「エレナ様では不満なのか?」

「いや他の人の配属は知らないけど、少なくとも希望する全員がエレナ様の配属になれるわけがない。これ、先輩たちに目をつけられるやつだろ?俺はできるだけ長く寮に居座ってお金を貯めるつもりだし、実家に戻るわけにはいかないから、先輩たちに何かされながらでもここにいるしかない」


そう言って頭を抱えたルームメイトにケインは言った。


「じゃあ、二人でそのやっかみを受ければいい。俺も当分実家に戻るつもりはないから」

「そうなのか?」

「ああ。今実家に戻ったら、面倒が待っているだけだからな」

「そうか……縁談か」


配属が決まれば寮を出て通いに変更することもできるようになるので、ケインは実家から通うのだとルームメイトは思っていた。

ケインが寮を出れば新しい人が相部屋になる。

その時に先輩などが来ようものなら安息の地はないと思っていた。


「じゃあ、しばらくこの部屋だけは守られるってことか。まぁ、断れないし、やるしかないか」

「断ったことを知られた方が先輩たちに目をつけられると思うが……」

「それもそうだな」


完全に心は晴れなかったが、これは仕事だから切り替えようとルームメイトはそう言った。

配属が発表されても、正式に配属されてその仕事に就くまでにはまだ時間がある。

せめてそれまで、先輩の心証が悪くならないように心がけようと彼は密かに心に誓っていたのだった。



実際、仕事に就くのは先だったが、この件が知られるまでそう時間はかからなかった。

配属が決まり最初に行われる挨拶というものに呼ばれたのだ。

正式に配属されて仕事を始める前に、すでに担当している護衛騎士が見習いとなる騎士たちを連れて、担当する王族に顔見せを行う。

最初、近衛騎士の見習いと数名の近衛騎士が呼ばれ、騎士団長から簡単な説明を受けた。

それから各担当の王族の近衛騎士を数名ずつ紹介され、自分が担当となった王族の近衛騎士でグループに分かれ、挨拶に向かうのだという。

集められた時、ケインたちは懐かしい顔ぶれに少し安堵していた。

新人の中から選ばれていたほとんどが、研修で仲良くなった騎士たちだったのだ。

担当の王族は違うが近衛騎士同士。

これからもお互いの顔を見ることはできるに違いない。

相手も自分たちを見て知り合いがいることに安堵したのだろう。

お互い緊張していた表情を緩めることができた。



挨拶を受ける側となったエレナは、彼らの到着を落ち着かない様子で待っていた。

今までエレナのところには必ずクリスがついてきていたが、エレナがデビュタントを終えたため、今回は初めて彼らを一人で迎えることになっている。


「挨拶を受けるだけだからいつも通りでいいかしら?」

「はい。問題ございません。今日は普通のお衣装ですから」


冷静な侍女がエレナにそう言うと、エレナは少し拗ねたように返した。


「いくら私でもさすがに訓練着でお迎えしたりはしないわ。安心してちょうだい。ところで彼らとはどのくらいお話できるのかしら?」

「本日は挨拶のみということですから、あまりお時間はないかと思います」

「そうなのね。わかったわ」


そんな話をしているとエレナの部屋にノックの音が響いた。


「エレナ様。新しく配属の決まりました二名を連れてまいりました」

「どうぞ」


外から確認されたエレナはドアを開けて中に入るよう促した。

声をかけてきた近衛騎士はエレナについて一番長いベテランだ。


「失礼いたします」


緊張気味に入ってきた二人はそう言ってドアのところで一礼すると中に入って最初に入ったベテランの横に並び立った。


「こちらがこのたび配属になったものです。これからはこの二名もエレナ様の側に護衛として立たせていただきます。よろしくお願いいたします」


見覚えのある二人だったためエレナはとても嬉しかったが、これは挨拶という儀式みたいなもので私的な場所ではない。

クリスからさんざん言われていたので、エレナはその喜びを表に出すことをせず、卒なく対応した。


「ええ。わかりました。よろしくお願いしますね」


するとそれを受けてベテランがすぐに言葉を発した。


「では本日はこれで失礼いたします」


彼の言葉に合わせ三人同時に頭を下げると、今度はドアに近い新人二名から先に部屋を出ていった。

最後にドアの前でベテランの近衛騎士が頭を下げてドアを閉める。

エレナからすれば一瞬の出来事だった。


「これで終わったのよね……」

「はい」

「お兄様がいらした時、こんなにあっさりしていたかしら?」


色々構えていたのに拍子抜けしたとエレナがドアの方を見たまま言うと、ベテランの侍女がアドバイスをする。


「……それは、クリス様が彼らにお声をかけていらしたからでしょう」

「私はしなくてよかったのかしら?」

「本来は必要ないかと思います」

「そう、それならいいのだけれど……」


エレナは知らないがクリスが異常なまでに過保護なだけである。

侍女はエレナにそれを告げてクリスに知られては困ると、自分からはそのことに触れないことにしたのだった。



「エレナ、新しい護衛騎士との挨拶はどうだった?」


夕食で同席したクリスはエレナに尋ねた。

失敗を心配するような場面でもないが、今まで自分が立ち会っていたが、今回見ていないところで行われたので気になっていたのだ。


「どうと言われても、本当に挨拶だけしかしていないわ。私、よろしくお願いしますねとしか言っていないもの」

「うん。それで充分だよ」

「でも、お兄様がご一緒の時は、もっとお話されていたでしょう?」


クリスから聞かれた流れでエレナは疑問に思っていたことを言った。

するとクリスは小首を傾げてさも当たり前のように答える。


「そうだね。でもそれは彼らが僕の護衛で、今後の指示を出さないといけなかったからで、今日は新人が見習いになった挨拶だから、よろしくって言って顔と名前を覚えておけばいいんだよ」

「そうなのね。わかったわ……」


クリスが同席するようになってから、エレナの護衛騎士はクリスの護衛を経て、クリスに見込まれたものが付けられていた。

だからエレナに挨拶に行く時、彼らはまだクリスの護衛騎士としての任があったのだという。

エレナがまだデビュタント前だったから、より安心して任せられる人じゃなければと思ってのことだったということを追加で説明したが、クリスはこれからもエレナを守っていくつもりでいる。

だが自立したいと頑張っているエレナにその言葉は伝えないつもりだ。

クリスは周囲からエレナに対して過保護だと思われていることは承知している。

けれどエレナの王子様という立場は誰にも譲るつもりはない。

クリスは今回の配属でエレナが少しでも幸せに近付いてくれるのならと願っていたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ