おじいさんとおばあさんがチート
むかしむかしあるところに、おじいさんとおばあさんが仲良く暮らしていた。
おじいさんは、元勇者。おばあさんは元お姫様。
元勇者のおじいさんはその昔、村や街の辺り一帯を襲っていたオーガ集団のボスであるキングオーガを倒して平和を取り戻した事により、伝説となっていた。
元お姫様のおばあさんはその昔、王家に伝わる魔法を使う者として勇者とともにオーガ討伐に向かい、全知全能の魔法使いとして名を馳せた。
平和を取り戻した勇者とお姫様は結婚し、その後は村で隠居生活を送っていた。
おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行った。
おばあさんが川で洗濯をしていると、どんぶらこ、どんぶらこと、大きな桃が流れてきた。
「あら、これはこれは大きな桃ですこと。じいさんや村のみんなで一緒に食べましょうかしら」
おばあさんはその大きな桃を軽々と拾い上げて、家に持ち帰った。
おばあさんがまだかまだかとおじいさんの帰りを待っていると、家の外が騒がしくなった。
「おーい、勇者のじい様はおるか?えらいことになった!」
勢いよく扉が開き、村長が額に汗を浮かべながら顔を出した。
「じいさんはまだ山から帰ってきておりませんわ。それより、どうしました、何かあったのですか?」
「オーガが現れた」
おばあさんの顔つきが変わった。
「いま行きますわ」
おばあさんは一言だけ残して囲炉裏の火を消し、地下の隠し部屋へ降りると、埃のかかった古い木箱から、紫色に輝く宝石がついた長い魔杖を取り出した。
さらに先程のものよりもうひとまわり大きな木箱を開けてみるも、中身は空だった。
「あれまあ。じいさんの剣がなくなってますわ」
疑問を抱きつつも、一刻も早く村を守らねばならないと、責任感のあるおばあさんは険しい表情のまま、決して速いとは言えない足取りで、家の外へ出て行った。
村の外れの方から煙が立っているのが見える。
そして、何十年ぶりだろうか、低い唸り声が聞こえてきた。
「久しぶりの魔法ね… テレポート」
おばあさんは、騒ぎの起きている方向へ魔杖を掲げ、オーガの元へ向かった。
紫かき氷です。「ヒーローズダンジョン」と同時進行で2作目の投稿です。
こちらは見切り発車で書き始めましたが、タイトル通り設定がシンプルなのでスイスイ書き進める事ができてます。
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