ホワイト
「おい、なんだあれは。」
ジューク邸まで来たのは各組織の最精鋭、総勢千人だった。玄関の前には兄妹がたっていて、しかしその前にはジュークの首が置かれている。
「ひぃ!」
一瞬動揺が走る。だが...
「こ、殺せーーーー!!!!」
瞬間、先頭にいた兵から走り出して突撃する。
「お兄ちゃん、来たよ!」
「ああ。待った甲斐があったな!」
「「殺そう!」」
数えきれないほどの兵士が走ってきて、遠くからは魔術師が詠唱の準備をしている。
その瞬間トールは右に、セラは左に走り出した。その距離を一瞬で詰めると、二人は蹂躙を開始する。
セラは向かってきた兵の頭を片手で握りつぶし、胴体を蹴っ飛ばす。体の大部分は衝撃で粉々となったが、それぞれが後続の兵士を吹き飛ばし、道ができていた。あまりの光景に周辺の兵士はうろたえるが次の瞬間には全員真っ二つになっていた。一方魔術隊は詠唱を完了する。
『『『Teghr Liv Ror!!』』』
強力な上級魔法が放たれる。その威力はすさまじく、地面を削りながらセラを粉々に消し飛ばさんと向かっていく。
「ふふふ!あははは!!」
ドゴォォォン!!!!!!
周囲に倒れる味方兵士さえ巻き添えにして着弾した魔法は大きな土煙をあげ、セラがいた場所には大きなクレーターができていた。
「やったか...!?」
魔術師の一人が言う。だがファンタジーにおいて「やったか」というセリフはフラグ建築でしかない。
やがて土煙が晴れていく。
「それだけ?」
『Teghr Liv Ror』
その日、帝都全域から巨大な爆発が目撃された。半径100mは建物すらない更地になった。当然一千いた兵士は全滅、そこに立っていたのはセラとトールだけだった。
「何するんだよセラ!これから楽しくなるところだったのに!」
「お兄ちゃん、つまんない。待った甲斐がなかったよ。少しは殺し甲斐があると思ったのに、こんな雑魚がたった千人だけ。もう遠慮なく殺そう?この帝都の人間みんなを!殺し甲斐はないかもしれないけど、たくさん遊べるよ!」
「そうだね!じゃあ行こうか、セラ」
「うん、お兄ちゃん!」
否、そこに立っていたのはセラとトールだけではない。
パチパチパチパチ...
拍手が鳴り響く
「素晴らしい!これこそ改造人間の力!」
聞き覚えのある声だった。
「おっかしいなぁ?あの時ちゃんと殺したはずだったんだけど、まだ足りなかった?」
「ふははは、確かに私は君らにバラバラにされた。だがあの体は私が憑依していただけのこと。まぁ最も、今では私は人間の限界を超えた!だからこそこうしてあの体に擬態しているのだ。さて、私の研究をお前たちにも見せてやろう...」
そう、あの研究所のいかれた所長だった。
「まぁ何でもいいや...」
セラとトールはそろって不気味な笑みを浮かべる。だがその恐ろしさはそこらの魔獣なんかの比ではなく、並の人間なら見ただけで失神するほどの雰囲気を放っていた。二人にとってこの男は自分たちを散々痛めつけた憎むべき相手であり、それと同時に今の力を手に入れるきっかけとなった男だ。
「お礼を言うわ。お返しにきっちりとなぶって、殺してあげる!」
「さあ、ショーの時間だ!!」
ドクンッ!!!!!
所長が言うと、急激に体の細胞が成長、増殖し、そこにいたのは人間の姿かたちすらない三メートルを超える化け物だった。表面の血管は浮き上がり、波打っている。
「ふふふふ、楽しそうね!」
一匹と二匹の化け物は殺し合いを始めた。
同時に地面を蹴り、セラとトールの拳を所長は両手で受け止める。
「ふーん、まぁまぁね!」
セラはそう言うと爪で所長の腕を切り落とした。一方トールはぶつかった拳を下に振り下ろし、体が傾いた所長の頭を蹴り飛ばす。
だがその断面からは再び細胞が増殖し、五秒と経たずに復活した。
「あーはははは!これが不死か!ついに私は神になったのだ!ひゃーっはははは!!!」
所長は腕を横に薙ぎ、するとまるで鞭のようにしなった。さらに胴体から何本も腕が生え、次々とその太さと重量感からは考えられないほどの速さで兄妹を狙う。自由自在に動き、人間で言う関節などないその腕は死角を作らず、よける兄妹をすぐに補足して襲い掛かる。
はじめは余裕が見られた兄妹だったがあまりの速さに段々追い詰められていくかのように見えた。所長はハイになっていた。幼い頃から自らの好奇心を満たすためには手段を選ばず、その実験の対象には当然彼自身も含まれている。
そして...
「ふはははは!!神の力の前にひれ伏すがいい!止めだ!」
「なーんてね」
ガキィィィン!!!!!!
すさまじい重量を持ちすさまじい速度で兄妹を殺さんとした所長の腕は、自らのその勢いによりバラバラになっていた。
「何ッ!?」
「こんな攻撃、当たっても傷がつくわけないじゃーん!まさか自分が有利になってるとか思ってた?ざーんねん!セラ!」
「うん!お兄ちゃん!」
「そんなバカなぁ!!!私は神だ!!!!」
所長は残った腕で兄妹を殺そうとする。だがその腕は兄妹に届く前に粉々になっていた。
「そーれ!」
トールは所長の目にもとまらぬ速さで彼の懐に潜ると思いっきり空に向かって蹴飛ばした。
『Prlo Sorolt Exsrolptet!』
セラはトールが空に打ち上げた所長を魔法で全力爆破し、その爆風でとうとう帝都中心部は壊滅、その真ん中にそびえる王城は無残に破壊の後が残るだけだった。
「随分と余計なことをしてくれたわ。」
「何ッ!誰!」
セラとトールですら声の主が近づいてきたことに気づかなかった。
「私はホワイト。魔王様にお仕えする、忠実なしもべよ。」
そこに立っていたのは艶めかしくも美しいのに、絶対的な強者を思わせる女だった。
せっかくまた出てきたのに秒で再退場する所長、ごめんな。でも兄妹が強すぎるから仕方ない。てか書いてて所長の下り要らなくね?とも思いましたが、書いちゃったので投稿しました。
さて、ホワイトって何者なんでしょうか。ていうか結末どうなるのか、実は作者にもわからない(笑)。今はまだ投稿していない、とある小説執筆の息抜きに深夜テンションで書き始めたのが本作ですが、プロットも決めないまま始めたのでどこに着地させるべきか...少なくともハッピーエンドではないと思います。二人はもう戻れない。
まぁよろしかったら次話も見てってください。