嵐の前の静けさ
上手く区切れなかったので今回は短めです。
「クソッ!!あいつら、ねじが緩んでるどころじゃないぞ!」
「ああ。見た目は十五、六歳くらいか?どういう育ち方したらああなるんだ。ありゃ人間じゃねぇ。」
「そもそも力が尋常じゃない。頭をつぶしたって話、最初は信じられなかったけどあれはマジだぞ。あいつら、きっと悪魔だ。」
「ジョニー、すぐ報告に行け!あんなのがこんな帝都のど真ん中にいるなんて...!俺らは監視を続ける。あれは危険すぎる...!!」
「報告は受け取った。直ちに軍警察と合同の三個大隊規模を派遣する。何が不満だというのだ。」
ジョニーは憲兵団本部長に直談判していた。
「それは先ほど聞きました。しかしそんなんじゃ足りません!あんたはあの化け物を過小評価している。あれは災害級の悪魔です!」
「いやしかしな...そう簡単に大規模な組織編成はこう時間がなくては不可能だ。」
「いえ、時間はあります。現在私の同僚が監視を続けていますが、奴らは動く様子はありません。中途半端な戦力では全滅するだけです。ここは軍警察だけでなく帝国軍本隊、そして近衛隊にも協力を要請し、さらに精鋭だけを集め万全の体制を敷くべきと考えます。」
「やつらが動かないという保証がどこにあるというのだ。お前の報告が真実なら、もし奴らが街で殺戮を始めたらどうする!それに数の暴力ということもある。三個大隊だぞ。たった二人ではさすがにこれには叶うまい。」
その時、部屋のドアが開いて男が入ってきた。
「だ、誰だ貴様!」
「これは失礼、私は、帝国軍情報部のライ、と申します。この緊急事態に、我々がつかんでいる情報を共有すべく参りました。」
「情報部、だと...?」
「本来これは機密に属する事ゆえ、本部長と二人だけで話したい。」
「分かった。全員ここから出ていけ。私がいいというまで誰も入れるな!」
「分かりました。」
こうしてジョニーと本部長の補佐官二人、部下一人は部屋を後にする。
「さて、事の発端は一年前。ある場所にて、二人の兄妹が発見されました。当時軍内部では、人体改造した兵士を造る計画があった。憲兵本部長であるあなたなら聞いたことがあるでしょう。」
「確かに、聞いたことがある。正気の沙汰ではないと思ったがな。」
「すべては帝国の勝利のためです。改造兵士量産の先駆けとして、洗脳や魔力、身体能力の大幅向上に関する研究が行われました。しかしある事故によって二人は致死量の強化薬品を投与された。本来ならそこで死亡するはずだったのですが、二人は生き残ってしまった。人ならざる力を手に入れた二人は研究所の職員を皆殺しにして姿をくらませた、というわけです。」
「ふざけるな!そんな無責任な改造で、何人の兵士が死ぬことになると思っているッ!!!!」
「先ほども申したはずです。勝つためなら、何でもする。これは帝国政府と、軍本部の決定です。今の発言は、聞かなかったことにしましょう。」
「クソッ」
「二人を殺すためにはより大きな戦力が必要です。軍本部からも戦力を派遣するとともに、虎の子の特殊部隊も準備をしています。なお、このことに関するすべての指揮は、軍本部が執ります。」
こうして、兄妹を殺すために帝国が動き出す。しかしライですら二人の力を正しくは認識できていなかった。それは研究所の惨状を直接見なかったこともある。だが何よりも、兄妹が改造された人間である、という認識が間違いだ。二人は濃縮龍血を誤って大量投与された分どころか、研究所にあった全てを摂取した、ということを誰も知らなかった。
二人はもう、人間ではないのだ。
二日後――――――
「周辺住民の退避、完了しています。」
「よろしい、出動する!」
次話では、いよいよ(作者の)語彙力がなくなっていきます。兄妹が強すぎて戦闘シーン難しい。