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怪物兄妹の復讐劇  作者: 壊れたジュークボックス
絶望編
3/14

怪物

毎回書いてる気もしますが、今回はダントツに残酷だと思います。なので兄妹側視点は少し少ないです。

「それでは今日も昨日と同様、龍の血を投与する。その後自己増殖細胞の因子を植え付け、肉体欠損と回復の実験をする。」


「龍血、投与開始。10ミリグラム」


一週間にもおよび二人は毎日その量を増やされながら龍の血や、ほかのいろんな魔獣の血を投与された。体は龍のうろこのように固く変化し、普通の鉄の刃ではなかなか刺さらなくなっていた。二人は連日の実験の苦痛で発狂したが、龍の血には二人の体が親和し始め、そこまで拒絶反応を示さなくなっていった。


「自己増殖細胞、埋め込み手術開始」


「終了。増殖実験を開始します。まずは指から。」


「うわあぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!」


トールの指が切断された。セラはそれをみて怒り狂ったが、激痛の反射で声が出ているだけで体はマヒしていたため、言葉にならない叫びをトールとセラはあげるだけだった。


「完全回復まで四分三十二秒。投与三日目にしてはなかなかです、所長。」


「ああ、だがもっとだ。どんなに切りつけられてもすぐ回復する。それくらいじゃなければ!それから魔力の方はどうだ。」


「最初に測定してから一週間がたちました。そろそろ再測定してもいいかもしれませんね。」


「よし、準備しろ」


そして二人は測定室へ連れていかれた。


〈測定結果〉

 総合魔力:9100

 クラス判定:B+

 推定年齢:8歳

 同年代偏差値:1840

 適正属性:炎、精神、光


〈測定結果〉

 総合魔力:9300

 クラス判定:B+

 推定年齢:6歳

 同年代偏差値:1880

 適正属性:炎、精神、光




こうして毎日実験の日々が続き、半年がたった。


「所長。SS06とSS07の代謝は異常です。もとは人間なうえに自己増殖細胞もあって、細胞サイクルが短すぎるのです。このままですと、アポトーシスによってあと五年たらずで絶命する可能性が。」


「やはりそこか。私も最近それを悩んでいた。SS06とSS07ほどの実験体はもう手に入らないだろうしな。みすみすたった数年で殺すのは惜しい。」


実際、二人はこの半年で身体を改造され続けたが、外見も変わっていた。まだ七歳になったばかりのセラの身長は伸び、胸は膨らんでソフィアを彷彿とさせる美しい大人の女性のようになっていた。まさに違法ロリだ。トールも身長は伸びきってここ一か月は変化しなくなった。


そこで二人には一か月かかって吸血鬼の因子が与えられ、ついには不死とまではいかないまでも細胞の自己破壊、つまり老化が抑えられるようになった。



「よろしい。それでは今日の実験を開始する。濃縮龍血、投与30ミリグラム。促進剤、9000ミリグラム。」


そこに白衣の男が一人慌てて実験室に入ってきた。


「おい待て!!そいつは!」


ドクンッ!!!


「「はぐぁあああああああああああああ!!!!!!!!!」」


「SS06、心拍数600、SS07、530!なおも急上昇しています!」


「おいお前、何事だ!」


「促進剤と濃縮龍血が逆に入っていた可能性が!」


「なんだと!」


二人の体は明らかに異常をきたしているようで、血管が浮き上がって呻き苦しんでいた。やがて一分がたち、急に意識を失う。


「まさか死んだか?おい、バイタルは!」


「390...まだ生きていま...」


ガゴン!!


鈍い音とともにその研究員の声は途切れた。


「おい、何が...なっ!?」


「ふふふ、うふふふふ!あははは!」


所長の目に入ったのは厳重になされた拘束が捻じ曲げられた実験台と、お互いに抱き合って唇を重ねているセラとトールだった。


「やっとこの時が来たよセラ。さぁ、一緒に行こう!あいつらを皆殺しに行こう!」


「うんそうね!きっと楽しいよ!お兄ちゃん!あぁ、早くあいつらの血が欲しい!もっともっと、力が欲しい!」


「いっぱい殺そう!ほら!あそこにちょうどいいのがいるよ!あいつらにも実験のお返しをしよう!」


二人は所長を見ると笑みを浮かべる。本能的に恐怖を感じ逃げ出そうとした研究員は動き出すと同時に体と首が離れていた。赤い鮮血がまき散らされる。


「あは!お兄ちゃん見てみて!こいつらたっくさん血が出てるよ!」


「ああ!たくさん血を吸おう!」


そこからは蹂躙だった。改造実験で既に人間をやめた二人の敵はいない。セラが研究員の腹を殴ると、風穴があいてちぎれた。トールは頭蓋骨を握りつぶし、脳みそがはじける。恐怖で腰を抜かした研究員は絶望の顔で次々死んでいく最後に残った所長だけは殺されるというのに恍惚とした笑みを浮かべていた。


「あぁ!これが私の研究成果!まさに怪物!!!あーはは、あははははははは!」


トールは所長をつかんで部屋の壁に向かって思いっきり投げると、地下室だからか大きくへこんで大量の血があふれた。二人のほかに息をするものなんて、いるはずがなかった。


「ああお兄ちゃん!大好きだよ!」


そういって二人は酷い血の匂いがする部屋でお互いの全てを欲しあった。




ああ幸せ!こうしてお兄ちゃんが目の前にいる。お兄ちゃんの全ては私の物!誰にも渡さない!

これから一緒にあいつらを皆殺しにできるんだ、楽しみでしょうがないよ!ああ、血の匂いっていいなぁ!もっと欲しい!もっと血が欲しい!もっと力が欲しい!もっとお兄ちゃんが欲しい!!!!!


二人は実験台の横に置いてある容器を見ていた。


「この中に、龍の血が...」


「これを飲めば、もっとたくさんあいつらを殺せる力が手に入るよ、お兄ちゃん!」


二人は便を開け、二つの容器に分けて入れるとそれぞれが飲み干した。



うっ!!!!!


体が、熱い!セラ!力がみなぎって来た!これでたくさん殺せる!


完全に人間をやめた二人にとって、もはや龍の血は毒でなくただの栄養だった。


さあ行こう、セラ!





その日、帝国軍情報部には恐ろしい報告が舞い込んだ。なんと情報部直轄の第一研究所内職員全員が何者かによって殺害された。凄惨なありさまだった。しかも厚さ50cmもある鋼鉄の壁が内側から捻じ曲げられ、壊されていた。所内は血であふれ、あまりのひどさに吐く兵士が多数いた。


「どういうことだこれは。ここで何があったんだ。」


まさか...

ヘルマンは一つの仮説を立てていた。ここ半年改造実験が繰り返された第一研究所。そこのモルモットが脱走したのではないかと。だが納得いかないこともあった。モルモットは全員洗脳処理をされると聞く。あそこにはA級の隷属具もあり、B級との絶対的な性能差がある。何があっても言うことを聞かせるA級隷属具が破られる。そんなことはあり得ない。つまり誰かが手引きした、ということ。


結果から言えば。それは間違いだった。ヘルマンは諜報機関で、闇に生きてきた。常に人を疑うことを考えていたが、真実は意外と単純で、セラとトールが人間をやめたから隷属具が効かなくなった。ただそれだけのことだ。


「帝国内にスパイがいる可能性がある。これは、徹底的に調査して全員粛清しなくてはならないな。ただでさえやっと王国との開戦ムードなのに、こんなところで内輪もめなんてしていられん。」


ヘルマンはすぐに直属の上司、II3の所長であるライに自らの考えを話し、同時にセラとトールの捜索が開始された。





「ここが...帝都。」


「楽しみね、お兄ちゃん」


「ああ、そうだね。」

次はたぶん明日になると思います

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