絶望
残酷ゾーン突入。途中何回か視点が変わりますがそれをどう表現すればいいのか、、、
目が覚めたら、俺の前には地獄が広がっている。なじみの村人たちは次々に殺されていく。あの頑固爺もいた。そして最後には、いつも遊んでいるあの五人。ついさっきまで話し、笑いあっていたのに今ではただの死体だ。
「よし!火をつけろ!お前らぁ!若い女は残しておいた!さぁ、祭りを始めるぞ!!!」
「「「「「「「「「おおーーーう!!」」」」」」」」」
軍隊の中でも装備のいい者だけが広場に集まっていた。もう涙も枯れ果てた。目の前で犯されているのは大好きな母親だというのに、身動き一つとれずあいつらを殺したい欲求と母さんが、そして村のみんなが殺された悲しみ、そして何もできない悔しさで頭がどうにかなってしまいそうだ。
私は、お兄ちゃんとお母さん、村のみんながいてただ毎日を過ごしていれば幸せだった。なのにすべてを壊された。初めてだよ、お母さん。こんな感情は。ただ私の頭にあるのは、あいつらを殺すことだけ。なんでだろう。今までになかった感覚だよ。あいつらの頭を踏み潰すことを考えると心が躍るの!楽しくてしょうがないの!
なのに、なのに、どうして涙が止まらないの?こんなに楽しいのに!
「ひゃっはははは!お前ら!どんな気分だ!はははは!」
やがて祭りと称した狂気のイベントは幕を閉じ、そのころには家は全て燃やされた。残った娘たちとソフィアは首を切られ、二人は連行された。それはひどい扱いだった。二人は馬車に厳重に縛られた。
「は!そうだお前ら!研究所につくまでこいつらの目の前にあの女の生首を置くって言うのはどうだ?」
「おいおい、お前天才かよ!」
ゴトっ
ソフィアの首がそこにはあった。
「おいお前、ギルバート様に犯されてたこの女の無様さ、覚えてるよなぁ!」
「そうそう!なんも口も開けないでよ!」
「まぁヘルマン様の魔法でしゃべれないだけだけどな!体も動かないのに、どんなこと考えて死んだんだろうな!」
「ったく、こいつの遠距離魔法のせいで俺擦り傷になったんだぞ。まぁ死んだ兵は全員異民族の三等臣民兵でだったらしいけどな!」
そういってソフィアの首を足で踏みつける。
「お前らもよ!なんか見ててむかつくんだよクソガキが!もっと泣きさけべオラ!」
男はセラの顔を蹴ると、トールは怒り狂った形相で縄に縛られながらも激しくもがいた。
「おおっと、お前この縄解こうとするとかマジかよ!でも愛しのクソガキの心配なんてしてていいのか?自分の心配を、しろよ!!」
「うっ!」
トールは思いっきり蹴られた。歯が一つ欠け、飛んでいく。その後も二人はずっと苦痛を与えられ続けた。やがて二週間がたち、馬車が止まったのだった。
「お前ら、着いたぞ」
〔〔はい。そうです、アークロンド辺境で見つけました。ギルバート様は先に帝都へ戻っております。私も引渡しを終えたのち、戻ります。それでは〕〕
ヘルマンは自分の本来の上司と話をしていた。これであのバカなギルバートのもとを離れられる。それだけで気分は爽快だった。
「ヘルマン殿、お久しぶりです。」
白衣を着て不健康そうな男が部屋に入ってきた。
「かれこれ五年ぶりですかな?所長」
「もうそんなに経ちますか。時の流れは速いものですね。今もII3に?」
「ええ。」
「そうですか。お変わりないようで。さて、それではさっそく案内してもらえますかな?一目見ておきたい。」
「分かりました。と言っても使えるかどうか...私も素人ですので。」
「いえいえ、ヘルマンさんなら期待できます。」
「こちらです、所長。相当抵抗してきたので厳重に縛っています。」
「どれどれ、ほほう。これは...」
所長は馬車に入ると二人をしばらく観察し、笑みを浮かべる。
「さすがヘルマン殿。詳しくはまだわかりませんが、今回はなかなか期待できそうです。両個体とも、相当量の魔力を持っているようですね。」
「お役に立てて何よりです。それでは、わたくしも帝都に戻ります。」
「そんな、今しがた到着なされたばかりなのに。一日でもお泊りになられては?」
「それが少し面倒な事態になっているようでして、幸い今出発して馬を飛ばせばおそらく明後日には到着できますので。それでは」
「えぇ、それではまた」
まったく、できればもう来たくはないな。あの客間も趣味が悪いし、何よりあの所長自身が気味悪いうえに何か油断ならない。度が過ぎる好奇心を持つ研究者というのはみんなああなのか?しかし今の帝国にこそ必要な男であることに変わりはないな。そう考えながらヘルマンは馬を飛ばした。
「所長、この二人どうするんですか?」
「ああ、まずはテストだな。測定室へ連れて行ってくれ。それにしても衰弱しているな。これじゃまともに測定できない。回復魔導士を呼べ」
「分かりました」
「さて、試験を始めよう。まずは魔力測定からだな。」
所長がそういうと部屋にいる数人があわただしく準備を始める。
「分析装置、準備完了です」
「よろしい。男の方から測定スタート。」
〈測定結果〉
総合魔力:3200MP
クラス判定:B-
推定年齢:8歳
同年代偏差値:660
適正属性:風、水
「これは...ヘルマンもとんでもない子供を連れてきたものだ。」
「魔力だけなら並みの帝国兵を裕に越していますね。」
「ああ。これはかなり期待できるぞ。女の方も測定しよう。」
〈測定結果〉
総合魔力:3700MP
クラス判定:B-
推定年齢:6歳
同年代偏差値:760
適正属性:炎、精神、光
「なんということだ、六歳ですでに兄を越しているぞ。こちらも相当逸材のようだ。」
「ええ、しかも適正属性が三つあります。万が一実験が始まってから反抗されると大変なことになります。隷属魔道具はクラスAを使用するべきです。」
「ああ、実験が始まる前に済ませてしまおう。用意しておけ。」
白衣の研究員が準備をするために測定室を出ていくと、残された所長は一人で笑い出した。
「ふは、ふははははは!まさかこんなモルモットが手に入るとはなぁ。実験が楽しみでしょうがない!」
所長の頭には自らの好奇心の赴くままに実験をする、そのことしかなかった。
「これより男をSS06、女をSS07と呼称し、『改造兵士計画』の実験を開始する。まず手始めに、強化剤と脳麻痺薬、代謝促進剤を投与しろ!」
鉄製の拘束具につながれた二人は白衣の研究員たちに次々と注射を打たれる。
「心拍数、上昇。毎分170!」
「よろしい、許容範囲内だ。次は銀狼とガーゴイルの血を30ミリグラム投与しろ」
「投与完了、魔力耐性の変化を検出しました」
「よし、次は細胞サイクルを変える。龍の血を0.1ミリグラム投与!」
「所長、まだ早すぎます。壊れちまう」
「たかが0.1だ。強化剤は打ったし、このくらいは耐えてもらわないと困る」
「は!龍血投与!」
「「ああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」」
その瞬間、二人は絶叫し、苦しみだした。
「心拍数250を突破、いまだ上昇中!」
......何も、見えないよ。
さっきあいつらに何か変なものを体に入れられたからなのかな。
ドクンッ!!!
ああああああああああ!!!!!!!!
心臓の鼓動が早い。苦しい。まるで体が拒絶しているみたいだよ。痛い、痛いよ、お兄ちゃん!どうして私たちがこんな目に合うの?帝国の奴らが悪いの?ならあいつら全員、国もろとも...
コロシテヤル!!!!!
殺す!バラバラにする!
ああああああああああ!!!!!!
「耐えろ耐えろ耐えろ...私をがっかりさせるなよ...」
「心拍数280で安定。なんとか持ちましたね」
「ああ、今日のところは終わりだ!明日からも実験を続ける。」
気が付くと、だれもいない部屋にセラとトールは拘束されたまま寝ていた。まだ全身痛いが、あの塗り替えられるような苦しみはもうなかった。
セラはふと視線に横にやる。そこにはトールがいた。目が合う。
「セラ!セラ!起きたんだね!」
「お兄ちゃん!お兄ちゃん!あーーーー!」
セラは泣き声を上げる。
「あいつら、許さない!殺す!もうセラさえいればいい!セラを傷つけるやつは地獄に落とす!」
「お兄ちゃん!いつまでも一緒だよ!」
「ああ、一緒にあいつら全員殺そう!」
「そうよ、皆殺しよ!そうしましょう!帝国も何もかも、みんな滅ぼしちゃおうよ!」
だが拘束具は動かない。結局次の日からも実験は続き、苦痛と憎悪でもはや二人はどんどん壊れていった。
良かったら次話も読んでいただけると幸いです。