記憶のラビリンス
視点コロコロ変わります。中身は薄いです。が、話としては重大なことが起きます。
「それだけ?」
ホワイトの妖艶な声が響く。天地を揺るがすほどの兄妹の攻撃、破壊を受けながらもそこに佇むのは圧倒的強者だ。
「まさかいい勝負してた、なんて思わないでよ。私は魔王軍の幹部。魔王様の加護をもらった私を超えるのは魔王様だけ。あんたたちなんて塵芥でしかないのよ。」
「それじゃ、、、さよなら!!!」
最後にホワイトは隠していたその兄妹基準ですら圧倒的な膂力をもって二人を粉にしようと動き出す。
次の瞬間、トールが液体のように弾けた。
「え?」
セラの横眼にはいつの間にか微塵となった兄、トールの姿が映る。
「あ...ぁ、ぁあぁあぁああああ......」
セラの力が抜け、浮遊魔法も解けてトールの残骸を追いかけるように地面に落下していく。
「ああああああああああああ!!!!!」
言葉にならない呻きを上げてその場にへたり込む。怪物と化したセラの泣き声は衝撃波となって広がるが、その目には涙が浮かび、そのまま生きた光が消えるのだった。
「来たのね、ヘルマン。私の獲物をいいとこどりなんて、いい度胸じゃない。」
そう、トールを粉にしたのはホワイトではない。
「いいとこどりだなんて、ホワイト様。それに大変だったのですよ?私一人で...」
瓦礫の陰から出てきたその魔族の男はヘルマンだった。
「そう。本来なら殺しているところだけど、その労に報いて許してあげるわ。」
「おっかないですねぇ。」
「あら、やはり死にたいのかしら?」
「冗談ですって。それより、計画は最終段階なのですよ。何を遊んでいたのですか。こいつらは一体...」
「たまたま見つけたのよ。元は下等な人間風情だけど、何やらいろいろと人であることをやめたようね。それでも私には足元にも及ばないけど。まぁ場合によっては一般的な高級魔族兵士には勝るかもしれないわね。このすべてがもろい世界にとっては理から外れた存在であることに変わりはないわ。」
「だからって遊びすぎでは...」
「これでもいろいろ考えているのよ。」
「この世界で理から外れていても魔界で化け物なクソあm..ホ、ホワイト様から見たら確かにおもちゃなのはわかりますが...」
「それにしても長い年月だったわ。封印さえなければそれこそこんな雑魚ども、魔王様の敵ではないのに。これも遺跡を設置して我らを魔界に封印したあのクソ共のせいね。ああ、腹立たしいわ。ともかく、これで任務もおしまいね。ちゃんと仕事したんでしょうね?」
「分かっていますよ。ただこれでは味気ないと思いまして、最後の最後はまだ残してあります。」
「何よ、あんな偉そうにしておいて最後までやってないの?」
「最後までやってたらもう門が開いてますよ。」
「あ、そういえばそうね。」
(相変わらず脳筋なクソアマだな。まぁちょろいから御しやすくていいですねぇ。)
「とにかく、最後にホワイト様がやることはあのバカでかいアホの根城の地下にある神殿を壊すだけです。」
(いやぁ結構魔力障壁が固いから私だけだと突破に時間がかかるところですが、こいつ連れてけばたぶん一発でやってくれますねぇ。まぁなんか癪ですが。)
「では、ホワイト様。パーッとやっちゃってくださいパーッと。」
「そうね。壊すだけでいいの?」
「じゃあ久しぶりに全力でやるわ。腕が鳴るわね!」
ホワイトは恍惚とした笑みを浮かべる。そして二人は王宮に向かって飛び立つのだった。
『セラ!早くー!』
あれ、お兄ちゃんの声がする...
『ここまでくれば大丈夫だ!』
ここは...あれ、なんでかな。涙があふれるよ、お兄ちゃん。戻って、来たんだね!
『うーん、やっぱりそこだよね。どうやってごまかしたものか。』
ああ、懐かしいお兄ちゃんの声だ...そっか、ジョージさんが怒ってたんだっけ。あれ、ジョージさんって誰?
『えー、無理無理。ここは知らないふりして、少し遠回りして裏の畑から家に帰ろう。』
そうだ、帰ろう、お兄ちゃん!お母さんが待ってる!お母さんに会いたい!
『やっべ、結構暗くなっちゃった。急ごう!』
待って!お兄ちゃん!
セラは必死に走る。だがトールには追い付かない。セラの足はあり得ないほど重かった。いくら走ってもセラはトールに追い付かない。
その時、夕焼け色に染まった空に突然血が広がる。冷たくて切ない、血潮が辺りを埋め尽くす。空も、山も、森も、町や家さえも。そしてセラ自身も血まみれだった。
ポタッ
血が垂れる。そこは懐かしいセラの家の玄関だった。扉は空きっぱなしでその中も血にまみれている。
ぁ....あああぁ....
その先にあったのは首が胴体と離れた母ソフィアと粉みじんになりながらもなぜかそれと分かる、兄トールだった。
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
お兄ちゃん...お母さん...おいて...いかないで......
セラを...一人にしないで...
そうだ、一緒になろう...お兄ちゃん、お母さん...これまでも、これからも...ずっと...私たちは、一つだよ!いつまでも....永遠に!
ホワイトとヘルマンが去った後、へたり込んで動かなかったセラは今も座ったままだ。ときどきうわごとを発し、笑みを浮かべていたが既に意識はない。その時、相変わらずの無意識下でセラは叫ぶ。だがその叫びはときどきかすれた声が出るだけだった。
そしてトールであったそれは生きた流体のようにセラに向かって動いていく。破裂の衝撃で数十メートルも飛び散っていた残骸も、流れるようにセラのもとに集まっていく。やがてそれらはセラの体にまとわりつき、一体となって一つの塊となった。セラの体と一緒に混ざったそれはセラの体の原型をとどめておらず、ただの一つの球となる。やがてその塊は意思を持ったかのように動き出し、瓦礫の隙間へ流れながら消えていった。
はい。重大なこと。トール死んじゃいました。あえてトールが生き返るとかはないって先に言っておきます。作者はこういう場面で「死ぬことがわかってて策を講じていた」、ならともかく奇跡で実は生きていた、というのがあまり好きじゃありません。まぁ前科があるんですが。あれ(所長)は迷走です。なかったことにしてください(笑)
実は九話の「激戦」で書いたとある設定が邪魔だったのでなかったことにしてしまいました。証拠もたった今隠滅してきました。ごめんなさい。まぁそんな重要なとこじゃないしたぶん気が付く人の方が少ないですが、もしかしたら「あれ?」って思うかもしれません。九話を確認してもたぶん隠滅されてます。
この前もキャラの名前とか関係でやらかしてるガバガバ作なので、ほかにもバグがあると思います。