第5話 構内
月曜日、試験を受けに大学に朝から登校した。もちろん試験勉強なんかしていなかったので、用紙を見てもさっぱり解らないが、先週行った営業活動と、類稀なる視力の良さでなんとか落第点は取らずに済みそうな出来栄えだった。テストも午前中で終わり、プラプラと構内を歩いていると、智明が向こうから近づいてきた。
「おーい、わーたるー。」相変わらずわかりやすい奴だ。
「よっ、ワタル。ヘヘェー。」
「何だよそのヘヘェーって。気持ち悪いな。」
「気持ち悪いはないだろ!なっ、どうなった?なっ、なっ。」
100%予想通りの質問が来た。
智明が考えそうな事はだいたい解ってしまうから、もし智明の事でもテストに出してくれたら、本人以上にいい点数を取れてしまうかも知れないと、テスト終わりということもあってぼんやりと考えてしまった。
「あぁ、この前のね。普通に家の最寄り駅まで送って帰ったよ。」
「うーそだぁー!そんなこと絶対無いって!だってあれだろ?お前ワタルだろ?じゃあないない。ありえない!」
「いや、これがさ、本当の話なんだよね。」
「絶対嘘だ!俺は信じないぞ!隠し事するなって!な?」
「隠すもなにも本当の事だから隠してないんだって。」
「まじで?ねぇまじでなの?なんで?ビビッた?処女とか言われてビビッたんだろ?な?そうだろ?図星?ねぇ、図星なの?」
「全然違う、全く違う。なんたって送る時に下ネタの一つも言ってないからな。なんか全然そんな気にならなかったんだよね。」
「ふーん。そっかー。まぁあの子お前のタイプじゃないしな。」
「俺なんかよりお前はどうだったんだよ。あの後誰か『愛した』の?」
「俺?俺の話?んもうやっと聞いてくれた!あの後いい感じになってしっかり『愛した』よ。」
「よかったじゃん。誰と?」
「優子と。」
「まじで?」
「まじで。3回。」
「いや、回数まで聞いてないって。」
「まず1回目にね、俺がこう指で・・・」
「だから内容も聞いてないって!」
「・・・そしたら優子がこれまたすごいことに・・・」
これ以上の会話を書くにはあまりにも僕は大人になりすぎてしまいました・・・。