第2話 出会い
土曜日、午後7時。集合時間より少しだけ遅れて待ち合わせの場所に集まった。渋谷の道玄坂の真ん中にあるコンビニが僕達の集合場所だった。ハチ公前は人が多すぎて分かりづらい、そんな理由で僕達はいつもこのコンビニ前で集合する。
僕が着いた頃には、他の3人はすでにコンビニの前で話し合いをしていた。僕が坂を上がって彼らに近づいていくと、智明が僕に気付いて声をかけてきた。
「わーたーるー!遅いよ!早く。」
「わり、ゆっくりしすぎた。」
「まぁいつもの事だな。あ、ちなみに今日はこいつら呼んだから、仲良くな。」
智明の横には2人の男が立っていた。
1人は純という男で大学の同級生。あまりしゃべった記憶はないけれど、学校でたまに目にする男だ。そしてもう一人はショウキチ、と言っていたと思うけど、なにせ滑舌が悪すぎてショウイチという感じにも聞き取れた。同じ大学らしいけれど、僕は今まで見たことがない、というか記憶にないだけかもしれないが、取り合えずよろしく、という感じで軽く頭を下げた。
この2人を見て、あぁ、智明今日いく気だな、と思った。2人ともかっこ悪いわけじゃないけれど、いまいちぱっとしない、という印象がある。こういう面子を呼ぶときは決まって智明は本気で女子を口説きにかかるからだ。
男4人で軽く挨拶を済ませ、早速居酒屋(智明が予約済み、さすが!)に向かって女性陣が来るのを待った。4人掛けのテーブルを2つ並びにくっつけ、男4人が一列になって座っている様は、見る人が見れば笑える光景に違いなかった。
10分程して店のドアが開き、女性達が入ってくるのがちらりと見えた。智明が目で「来たぞ」と合図を送り、僕達は一斉に立って「どーもー!お待ちしておりました!」と声をかけた。相手は優子を先頭にこちらに歩み寄り、久しぶりー、といった感じで挨拶をした。
僕は挨拶も程ほどに女性陣の分析を始めようと目で女性陣を追った。
優子を含めた3人、文句なし!と思った時、優子達の後ろからちょこんと横に出てきた女の子に思わず目がいった。
他の3人とは明らかに違う、落ち着いたというか、他の3人が派手すぎたから、悪く言えば地味にも見える、合コンには似つかわしくない女の子が姿を現した。
黒い髪に透き通るような白い肌、くりくりとした目、丈が長めのワンピースにカーデガンを羽織って、子供とも大人とも取れる優しく包み込むような笑顔で「はじめまして。」そう言った彼女に僕の視線は釘付けになった。それが、初めて千夏に出会った瞬間だった。