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狂気と穢れ

シロウ達がファルと合流し帝都を後にした後、帝都では不思議な事件が起こっていた。

神を見たという人間が何人も現れたのだ。

その姿は輝く金髪の見事な肉体を持った美丈夫で、出会った人間達に自分は戦の神であり崇めれば勝利を授けると告げたと言う。


やがてその神は皇帝の城にも現れたらしい、時の皇帝はオカルトを否定しており自身の目で見たそれも、幻覚だと斬って捨てたがその時傍らにいた皇子の一人は酷く興奮していたという。


皇帝が見た事で民の間で噂は共有され、本当に神ではないかと信仰する者も現れたがオカルト嫌いの皇帝が取り締まった為、それ以上の騒ぎになる事はなかった。

暫くすると神の姿は現れなくなり、事件はやがて風化していった。


次に起きたのは不思議というよりは、血生臭い事件だった。

帝都の平民街、集合住宅の一棟の住民が惨殺されるという物だった。

被害者の体には牙と爪痕が残され、大型の肉食獣が原因ではないかと推測された。


隣家に住む住人の証言では、巨大な熊を見たという者やその獣が喋っているのを見たという者もいた。

衛視が捜索に当たったが、獣は見つからず事件は迷宮入りとなった。


城壁に囲まれた帝都で起こった二つの事件、片方は神を騙り、もう片方は魔物を騙ったという。

神の名はナミロ・メラハ、魔物の名はランガ・クルムズ。


やがて神を見た皇子が自身を神だと僭称し国を治める皇帝となり、童話作家が事件をモデルにおとぎ話を作るのだが、それはまた別の話だ。




帝都の一画、廃墟となった屋敷で二人の人物が話している。

一人は深紅の髪の巨漢、もう一人は小柄な老人だった。


「キマ、もっとマシな策はないのか?」

「唯一神様、信仰を得る為には時間がかかる物です」

「戦で重要なのはスピードだ、時間を掛けていては勝機を失う」

「仰る通りです」


キマは自分の言葉を即座に翻し、ナミロに追従した。

それには訳がある。


ナミロはキマから力を奪ったが、他の神の様に打ち捨てる事はしなかった。


毒を打ち込み朦朧とした意識のキマに、彼から奪った力で理想の神の姿を見せる。

意識の混濁したキマはナミロが見せた幻に縋り付いた。

それからキマは盲目的にナミロ(キマの目には彼の求めた唯一神に映っていた)に従ったのだ。


帝都で起こったどちらの事件もナミロが関わっている物だった。

しかし、キマの策、神の幻を見せ信仰を集めるというのは、こらえ性の無いナミロにとっては苦痛でしかなかった。

もう一つの事件は、その反動で民家を襲い人間を喰らって力を奪うという、ナミロの暴走が引き起こした物だった。


ナミロがランガの姿を借り、彼の名を口にしたのは戯れに過ぎなかった。

彼がアルの姿にならなかったのは彼自身気付いていなかったが、幻でも辛酸を舐めさせられた相手になるのは耐えがたかったからだ。


「人間では奪える力もたかが知れている。やはり強い神を喰らわねば」


キマはにこやかに頷いた。

彼の本来の計画でも、古い神は全て消し去り人間の信仰を一つに集める事が最終形だった。


「では王国しかないでしょう。あそこには教団の神が集まっています」

「そんな事は分かっている。それが出来るなら端からやっている」

「一気には難しいでしょうが、末端から喰らってゆけば……」

「なにか考えがあるのか?」

「はい、御座います。……お話する前にお願いが御座います」


キマは笑みを浮かべナミロを見た。

その瞳は揺れ、どこか夢を見ている様だった。


「なんだ?」

「全ての神を消し去った後、私も唯一神様の血肉としてその身に取り込んで欲しいのです」


言葉はハッキリとしていたが、キマの見せた恍惚の表情に知恵を司っていたかつての姿は無く、明らかに正気を失っていた。


「良いだろう。お前は必ず最後に喰らってやる」

「ありがとうございます!!」


廃墟の中、小柄な老人の目には狂気が、深紅の髪の男の目には赤黒い穢れの色が見え始めていた。

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