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教団の神達

シロウは虎の神ナミロとその教団について、分かっている事をルクスに説明した。


「土着の神を故意に悪神化させて、これを討つ。……土着の神への信仰が薄れつつある今、人の信仰を取り戻すのには効果的かもしれぬな」


「かもな、でもよぉ悪神なんて迷惑なもん、ポンポン作られたら堪ったもんじゃないぜ」

「そうじゃ、大地は穢れるし生き物も大勢犠牲になろう」


シロウはリイナが淹れてくれたお茶を飲み、ザルトをチラリと見る。


「そこら辺、ナミロは何て言ってんだ?」

「あいつは強くなって、戦い続ける事しか興味が無いからな。実際、計画を立てたのは猿神のキマだ」


「キマ…。幻影を操るとか言ってたな」

「気になってたんだが、お前、俺達の事、誰から聞いたんだ?」

「ウネグだよ。狐の」


ザルトはウネグの名前を聞いて驚いた様だった。


「あの狐が獅子神に付いたのか!?一体何をしたんだ!?あいつは獅子神を嫌っていた筈だぞ!?」

「別に何も、普通に話して仲間になるよう説得しただけだ。ちなみ俺は教団の他の神も取り込むつもりだ」


ザルトは呆気にとられた顔を見せた後、突然、噴き出して笑い始めた。


「ブハハッ!!お前、最高だ!!」


ザルトは笑いながらシロウの肩をバンバンと叩き、笑い過ぎて溜まった涙を拭った。


「ふう、こんなに笑ったのは久しぶりだ。取り込むか…。なら仲間の性格を教えておこう」


そう言ってザルトは彼が感じた神についての所感を語り始めた。


ファニ・ムラク、彼女は不死鳥の神で性格は気真面目、教団に加わったのは、人が太古の神への信仰を失った事への憤りかららしい。

悪神を使う事には反対していたので、そこを突けば仲間に出来るかもとザルトは付け加えた。


ランガ・クルムズ、熊の神の彼は自分の力を存分に振るえる場所を探していたようだ。

性格は短気で粗雑、ファニとは反りが合わないらしくよく衝突していた。


キマ・マホン、先ほども出た猿神だ。

策を講じ他人を思い通り操る事に長けている。

その賢さを鼻にかけている所があり、話しているザルトが嫌っている事がシロウにも感じられた。


ガーヴ・ブラン、牛の神である彼女はかなりのんびりした性格らしい。

力や能力は高いが、キマにはノロマと罵倒される事も多かったそうだ。

だがそんな時でもニコニコと笑っていたらしい、正直なぜ仲間になったのかザルトにもよく分からないみたいだ。


「俺以外の幹部はこの四人だ。他にもウネグみたいな奴もいるが、俺は組織に興味がなかったからな、向こうから話しかけてきたウネグ以外はよく知らん」


「……お前、本当に武術以外の事はどうでもいいんだな…」

「そうだ!俺は興味のある事と家族と俺の民の事以外はどうでもいい!」


ザルトはそう言って胸を張った。


「威張る事じゃねぇだろう?……まあいいや。んでそいつら何処にいるんだ?」

「知らん!たぶん王都じゃないのか?」


「多分って、役に立たねぇ……。情報が手に入っただけましとするか」

「どうするのじゃシロウ?」


アルの問いにシロウは考える。


五大教が一番強く信仰されているのは王都だろう。

ジョシュアが土着の神がいる事を知らなかった事を考えても、古い神の教えが排除されている事が窺える。

ザルトの言う様に幹部たちは王都にいる可能性が高い。


「ウルラ達が来るのを待って、王都に行く事にするか」

「王都か!それならロックやマーロウに会えるのう!」

「そうだな、あいつ等元気かな?」


「それは大丈夫なのじゃ。毎日祈りを捧げてくれておるからの」

「そういうの分かるのか?」

「当たり前じゃろう。でなければ加護など授けられぬではないか?」


シロウはそうなっているのかと少し感心した。

一緒に旅をしてきたが、祈りの仕組みはよく分かっていなかった。

旅の間もアルは祈りに対し、加護を与えて来たのだろう。


「それって、数が多くなると大変じゃねぇのか?」

「ん?別に大変では無いぞ。祈りの数だけ意識を分ければ良いからの。…そう言えば人は意識を分ける事は出来なんだな」


「意識を分ける?……駄目だ気分が悪くなってきた」

「大丈夫かシロウ?」


シロウはアルの頭の中に、小さなアルが沢山いる所を想像してしまった。


「ふむ、人と神の一番の違いはそこかもな」


ザルトが笑いながら深く頷いた。


「それでシロウ、我はどうすればいい」

「そうだな…。ザルト、今さらだけどお前なんでルクスを襲った?」


「キマの指示だ。竜神の様子を見て来るように言われたんだ。そろそろ堕ちる筈だってな」

「ルクスの腹に悪神がいるって知ってたのか?」


「キマはそう言ってたな。でも来てみたら悪神の気配は無いし、竜神は村で楽しそうに暮らしてる。このまま帰るのもなんだなと思って、憂さ晴らしにひとつ手合わせしてもらおうと思ってな」


シロウはため息を吐いた。


「そんな事でケンカ吹っ掛けるなよ」

「まったく、いい迷惑だ」

「すまん!獅子神が消えた事で、キマの小言が多くて少し苛立っていたんだ」

「我の所為で?」


キマという神は大分神経質なようだ。

アルがいなくなった事で、計画の変更を余儀なくされた事がキマには我慢ならないのだろう。


「よし、ザルト、お前はここでルクスに武術を教えろ」

「竜神に?」

「シロウ、我は武術等…」

「ルクス、お前ザルトに翻弄されてたんだろ?多分キマって奴はまた仕掛けてくるぜ。そん時、都合良く俺がいるとは限らねぇ」


「だが我には炎が…」

「ルクス様、選択肢は多い方がいいと私は思います」


ごねるルクスの手を取り、リイナは自身の腹に当てた。


「この子の為にも…」

「リイナ……。分かった、ザルト、我に武術を教えてくれ」


頭を下げたルクスに笑みを浮かべザルトが答える。


「いいぜ。お前に教えるのは面白そうだ。実際、戦って力は感じたしな。まあ使い方はなっちゃいなかったが」

「グッ、無礼な奴だ」

「ルクス様、怒ってはなりません。教えを受けるならお師匠様ですよ」


拳を握り青筋を立てたルクスをリイナが押しとどめた。


「へぇ、押しの強いいい女じゃないか。竜神、いい嫁さんもらったな」

「うるさい!!」


シロウもリイナの変化は意外に感じた。

前に会った時は弱っていた事もあるが、ここまでの強さは感じなかった。

やはり母は強しという事だろうか。


「ルクス、ウルラ達を待つ間、暫く村に置いて貰っていいか?」

「お前は恩人だ。幾らでもいてもらって構わん。……そうだ。マグナが残した麦も見て行ってくれ」

「あの芽か?どうなったんだ?」


「順調に育っている。今は畑に植えているが、村人が言うには他の麦も去年より育ちが良いそうだ」

「……あいつ、豊穣の神とか言ってたからな。…分かった会いに行ってみるよ」

「我も一緒に行くのじゃ!」


そう言って笑うアルの頭をシロウは優しく撫でた。

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