6章
「レッドグリズリー、ですか」
「あぁ。最近ゴルトの森で増えてるらしく、街道も近いからって討伐依頼がきてるんだ」
「なるほど。安全のため可能な限り狩ってこい、というわけですね」
「あぁ。討伐記録はギルドカードに反映されるから、1匹あたり銀貨5枚で受けてもらえるか?」
銀貨5枚。この世界の貨幣レートは銅貨10枚で銀貨1枚、銀貨10枚で金貨1枚であり、大体の宿は銅貨5枚で1泊できる。銀貨5枚となるとかなりの額だ。
「了解です。今夜の宿と飯代分は狩るかぁ」
「はっは。別に何匹狩ってもいいし、むしろ何匹でも狩って欲しいところだ」
「・・・そんなに増えてるんですか?」
「あぁ、実際街道にも溢れてるらしく、商隊からの報告も増えてる」
「了解。可能な限り殲滅してきます」
「頼んだ手前言いにくいが、無茶はすんなよ」
その言葉に手を振りながら、ギルドを後にする。さてがんばるか。
グラーセムから出てゴルトの森方面へ、気配察知と神眼を平行して起動。並びに街道もチェック。
レッドグリズリーと思われる反応多数が、街道上にいるのが確認できたので神眼で確認してあせった。
「うっわ。襲われてる」
街道上、商隊と思われる一団とその護衛である冒険者パーティーが、無数の赤い熊と交戦していた。
すでに前衛は半壊。商隊も結界魔法で護られてはいるが時間の問題だろう。
急ぎ影転移で商隊の近くに転移。した瞬間懐かしい感覚が魂を揺さぶった。
-同時刻。商隊では-
「くっ。イートはリーヤをつれて結界まで後退しろ!」
リーダーのアルスは、レッドグリズリーの一撃を受けて重傷を負ったリーヤを、軽症のイートに結界まで下がらせた。
「沸いてるって話には聞いてたが、ここまでかよっ」
剣を振るい、攻撃してきた奴を下がらせつつ戦況を確認する。最悪だ。
森を抜け、王都が近くなったことで油断した不意を突かれた格好だ。
「フレイムランス!」
魔法士のエリーが追撃をするが、たいしたダメージにはなってないだろう。
そして何より数が多すぎる。
「群れを作らない習性のはずなんだが、上位種に統率されてんのか?」
ざっと見る限り20匹はいるし、
「くそっ、やっぱ上位のクリムゾングリズリーやブラッディグリズリーまでいやがるか」
群れの後方、色が濃い個体が7匹。それが上位種だと分かりさらに顔をしかめる。
ちらりと商隊を見るが、クラムが張る結界にはすでに6体のレッドグリズリーが攻撃をしていて、いつ破られてもおかしくなかった。
「ちっ。ここまでかよ」
アルスがぼやく。ただのレッドグリズリーが少数なら問題は無かったのだがいかんせん数が多すぎた。
そして、商隊をちらりとみた一瞬、レッドグリズリーが突貫してきた。
反応が一瞬遅れ、自らの致命傷と隊の全滅を覚悟した瞬間、黒い少女が自分を突き飛ばしていた・・・