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16章-前編-

「此度は我が40の誕生日に集まってくれて感謝する」

集まった面々の前で陛下が口上する。・・・晩餐会じゃなかったのかよチキセウ。

内心ぶーたれてたらこっちにお鉢が回ってきた

「さて、今日はあのクラーヴァ商会の窮地を救い、娘の窮地をも救った冒険者のアリス殿にも参加いただいた」

ざわつく会場。当たり前だ、国家元首と平民の冒険者。身分が天と地以上の格差があるのにコッチを敬称付けするんだもの。何人かはコッチに猜疑の視線を送ってくるし・・・。まぁ紹介されたら挨拶程度はするか。

「ご紹介に預かりました、冒険者をしておりますアリスと申します。このたびは陛下の特別な日に参加させていただき真に感謝しております。ご来賓の方々のように作法に秀でてはおりませぬが、ご容赦いただければと思います」

と軽く挨拶しつつお辞儀。スカートの端を軽くつまんで貴族の礼をまねてみる。・・・別の意味でざわつき始めた会場。

「では皆の者、乾杯といこう」

「「「乾杯!」」」

そうして各々で談笑したり陛下に挨拶したりする貴族達を少し離れたところで眺める。うーむ知り合いはいねがー。と思ってたら「よぅ」と声をかけられた。

「あ、エル公爵閣下。お久しぶりでございます」

「久しぶり、ってほどでもないな。4日ぶりだっけか」

「そうでございましたねぇ。その節は大変お世話になりました」

「・・・やめれやめれ。無理して敬語を使うな。お前相手なら気にもならん」

「はぁ、すみませんねぇ。場所が場所でしたんで」

「まぁそれは分かるが、みんな相手が冒険者ってだけである程度は黙認する風潮だからな。気にするな」

「なるほど」

「おや、エル公爵殿はアリス殿とお知り合いで?」

エルさんと話してたところ、そう声をかけてきたのはアースさん。

「これはアース殿。ええ、アリスには私や領民も命を救われたので」

「そうでしたか。流石はアリス殿、まさに聖女のようなご活躍で」

やめてここで聖女発言しないでフラグが立っちゃう。そう思ったらホントに立った。

「おや。アース様ほどのお方がアリス嬢を聖女と評価するとは、お話を聞かせていただいてもよろしいでしょうか」

「ワシのほうからも聞かせてもらってもよろしいじゃろうか」

そう言ってきたのは陛下ともう一人・・・

「これは陛下に、サーギス教国のエランド教皇殿。まさしくアリス殿は聖女様のように無償で人々を癒し、おごることなく他者を助ける慈愛の心の持ち主なのですよ」

「すばらしい。幼いのに大人も顔負けの仁愛の精神の持ち主とは。我が国でも聖女として認定したいぐらいだ」

サーギス教国か。確かこの世界の唯一信仰であるナイア教を国教とし、国自体が教えで成り立ってる国だっけか。しかし

「いえいえ、私としては当たり前のことをしただけだと思ってますので。あと、神を信じてない人間が聖女になったらナイア教としても不都合が大有りでは?」

と返す。私が信じてるのは神でも他人でもない、自分の力であり、(前世も含めての)積み重ねてきた経験と実績だけだ。

「神を信じてない、ですか」

「ええ、教皇様のお耳には入れたくは無いのですが、個人的な理由から私は神を信じてないので」

あくまで個人的であり、他者に押し付ける考えではないことを念押しして話す。

「個人的な理由、ですか」

「はい。神が本当におり、あまねく人々を見守り助けるのなら、なぜ私の村は滅び、両親は死なねばならなかったのでしょうか」

「それは・・・どういうことで?」

「エル殿は彼女から聞いてはおらなかったのか?」

「・・・彼女がイリアの樹海から来たときにある程度は察していた。が村まで滅んでいたとは・・・」

「まて、イリアの樹海じゃと?」

「ええ、私の故郷はイリアの樹海のほとりの小さな村でしたが、ある日樹海から溢れた魔物で村は壊滅的な被害を受けました」

黙って聞く面々。あまり誕生日のめでたい日に話す内容ではないだろうけど、聞きたいらしいので続きを話す。

「生き残った面々で村を放棄することが決まり、皆方々に散っていきました。家族は私と共に樹海を越えて王都を目指すことになりました。が、樹海の中ほどで魔物に襲われ、父も母も命を落としました。私は崩れた荷物の中に埋まるようにして気絶していたため襲われることはありませんでした」

「そんな過去があったのか・・・」

誕生日らしくない、しんみりした雰囲気になってきた。あ、王妃様泣いてる。

「ええ、なので本当に神が居るのであれば、なぜ村は滅び、両親は死なねばならなかったのかと問いただしたい所存なので、そんな人間が聖女になったらいろいろとまずいでしょう」

と軽い感じで話す。が、しんみりした雰囲気は払拭されない。うーむ・・・

「アリスさんにそんな辛い過去があったなんて・・・」

「イリアの樹海、確かSランク魔物の楽園といわれる魔境だった。なるほどな・・・。だから年らしくない実力と胆力と洞察力なのか」

「村をなくし、両親もなくし、けれど人の心は失わず仁愛の心は輝きを増している。やはりアリス殿は聖女にふさわしい」

「いや全力で断らさせてください。私はそんなにきれいな人間じゃないんで」

と断ってるとふとエルさんが

「そういえば最近樹海方面の魔物が活発な雰囲気なんだが、樹海育ちならなんか心当たりはないか」

と問うてきた。

「樹海を出てますので今の状況は分からないので。分かる者を召還(よびだ)してもよろしいですか?」

と一応陛下に確認を取る。

「召還か。アクラウネは勘弁じゃよ、皆がおびえてしまう」

「ウネ子ではないのでご安心を」

「それなら構わぬが・・・」

なにやら渋り気味だが、まぁ樹海の魔物が王宮の、しかも重鎮ぞろいの場所に出るかもしれないのだから仕方ないか。

「では。『おいで、イリア』」

と、呼んだ瞬間目の前に小さな木が生えた。周りでこちらを見ていた面々が興味津々になった。次の瞬間、木が解けてアリスより頭ひとつ分小さなエメラルドグリーンの幼女が現れた。

「うにゃあ、あ!人が一杯だよぅ。あ、(あるじ)さまだー」

とおろおろきょろきょろした後、こちらを見て満面の笑みで飛びついてきた。

「おいアリス、もしかしなくてもその子供は・・・」

「ええ、イリアの樹海を統べるドライアド。その分体です」

と説明したところ

「え、樹海の主はアリス様ですよー」

と満面の笑みで爆弾ぶっ込んできた。

「「「アリス殿が樹海の主?!」」」

やー、陛下の誕生会のはずが、なんか混沌としてきたなぁ・・・。

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