幕間~謁見のあとで~
アリスが去った謁見の間はしばらく喧騒が続いていた。
喧騒の中には「平民の癖に」や「あんな子供が戦争の契機になるわけがない」などアリスの話に否定的な部分が大半だった。
が、カノープス陛下とアースとマークス宰相の3人は真摯に受け止め相談していた。
「アースよ。彼女はあそこまで頭が切れるものだったのか?」
「ええ、交わした言葉はわずかでしたが、片鱗は感じました」
「なるほど・・・ マークス、彼女が申したように帝国が再戦に移る可能性は」
「ほぼ間違いないかと。それは陛下もお気づきになられたと思われますが」
「確かにそうじゃな・・・ アリスの力と頭脳を欲するがあまり周りが見えてなかったか」
「ええ、ですが冷静になられたのでしたらもう安心かと」
「ですねぇ。アリスさんを欲する一時の気持ちで戦争に発展してしまったら、わが商会も国民も陛下から離れるでしょうから」
「皆が離れる、か」
「確かに可能性はあるかと。アリス殿が言われるように、彼女の力は冒険者やアース殿の商隊を通じて広く知れ渡っています。そんな彼女を登用して戦争になったと知ったら、国民は陛下が力に魅入られて戦争も辞さない判断をしたと思ってしまいます」
「やはりそうなるかマークス」
「ええ、ですがそこまで思慮深い12歳は何者なのでしょうか」
「伝承にある転生者かもしれませんねぇ」
「ふむ。アースの言うとおりかもしれんのぅ。確か転生者の伝承は・・・」
「この世のものとはかけ離れた実力と知識を持つ、神から選ばれた異世界人の生まれ変わり。でしたね」
「じゃったなぁマークス。ふむ、報奨金を渡すときに一緒に会ってみるか」
「仰せのままに陛下」
「あ、自分も同席させていただいてもよろしいですか?」
「かまわぬ。むしろ一度会っているアースがいれば彼女も安心するだろう」
「ありがたきお言葉」
そうして謁見は解散となり、陛下・宰相・アースの3名は、護衛として近衛騎士団長を連れてアリスのいる応接間へ向かった。