11章
「その方、面を上げよ」
謁見の間、私は頭をたれて国王陛下の前に片膝をついていた。
ギルドに届いた招待状によると、国内の大棚の代表であるアース殿を助けた謝礼を国からもしたいとのことで、逃げようかと画策する暇もなく王城から迎えが来た。なんでも私が来た時点で王城に連絡をしたとのこと。チキセウ。
そんな迎えの馬車にドナドナされて今に至る。あ、参列の末席にアースさんもいる。
「此度はアース・クラーヴァ殿の救出感謝いたす。また、年齢にそぐわぬその実力、魔法の手腕、無償で他者を助ける精神に敬意を表し、謝礼金と女男爵の地位を授けようと思う」
とたんざわつく謁見の間。ウチもあせる。お金はくれるならもらうけど地位はいらねぇし戦争になる。
「お言葉ですが陛下。私には女男爵という地位は過分すぎるのと、戦争になる可能性が高まるため辞退させていただきます」
戦争という単語に再び騒がしくなる謁見の間。「静まれ!」と陛下が一喝して仕切りなおし。
「そなたに爵位を与えるとなぜ戦争になるのか、説明してくれないか」
「はい。確か王国は10年ほど前に隣国のグラム帝国との停戦合意を結び、着々と和平合意への積み重ねをしている最中のはず」
「うむ、長き戦争により両国は疲弊していたため、これ以上の戦争は第三国の介入を招く恐れを共に抱いたので、いったん停戦して時間をかけ、わだかまりを解いて和平合意としようとなったのじゃ」
「では陛下、お言葉ですがその最中に相手国の中枢に、名実ある者が登用された場合、どのような懸念を抱きますか?」
「?それはもちろんこちらに対して再戦の意思があると・・・!」
謁見の間に三度広がる動揺。だが誰も止めれない。「再戦」の単語が重すぎだ。
「ええ。私の実力は冒険者を通して最短で1週間ほどで帝国に伝わるでしょうから、そこに女男爵という地位を得たという情報まで含まれると即座に帝国は国境封鎖の軍備再編に走るでしょう」
「なぜ最短1週間と言い切れるのじゃ?」
「昨日冒険者ギルドでAランクとなりましたこと、ギルド内にて発表となりました。そのことを知ってる冒険者が護衛任務に就いた場合、1週間ほどで帝国国境につくと思われますので」
「なるほど、国境での雑談に噂話であがった場合、聞いた帝国側の兵が上に緊急魔法通信を使う可能性があると」
「相手国の情報、特に中枢に関する情報は可能な限り収集し、脅威と判断した場合には即応しなければ致命的な隙になる。私が皇帝だと国境兵に厳に言い含めます」
「確かに・・・あいわかった。別室にて報奨金を授けるゆえ、下がりたまえ」
「かしこましました」
そう言い、一礼をして謁見の間を後にする。
外で控えたメイドさんに応接間まで案内してもらい一息つく。
「・・・ぶっちゃけ爵位重い」
ぼそっとつぶやいたのは虚空に消えた。