第一話
「「「せ、成功だ~~~~!!!」」」
成功?
真っ白な荘厳な神殿の様なところにいつの間にかいる場違いな私の前に引きずるか引きずらないかくらいの長さのバレンタインさんが着ているような神官服に身を包んだ人と白い甲冑姿の騎士らしき人物が10人くらい。
「勇者様!我らをお助け下さい!」
で、急に何?
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立花薊16歳
高校生になってからまだ一か月しか経っていないJKなり立てのほやほやだ。クラスのホームルームでがやがやと五月蝿い教室からブラックアウト。そして、目の前のラノベばりのべたべた展開。私の周りには私を含めて34人のクラスメイトがいる。先生は教室に到着していなかったので多分一緒に転移されなかったのだろう。
で
「勇者様!我らをお助け下さい!」
この自己中心的すぎることを言うご都合主義なお姫さんはどこのどいつだ。
まず名を名乗れ。そして、クラスの奴らは五月蝿すぎる。集団誘拐されても喋る奴らは頭がイっているらしい。
「みんな!ちょっと、落ち着こう!」
「そうだよ!まず点呼をとろう!いない人がいたら大変だよ!」
まぁ、確かにそうだけど。点呼って、知らん奴が混ざってたらどうすんねん。
そんな私の心のツッコミは無視されるのは当然で点呼をとると誰一人欠けていなかった。
「良かった。誰もいなくなっていないね。」
「そうだね。取り敢えずあの人に事情を聞かなきゃな。」
落ち着こうと言ったのは学校一のイケメンともてはやされている爽やかハーレム少年の小野田蒼汰。点呼をとろうと言ったのは学校一の美少女とこれまたもてはやされている小野田ハーレム筆頭の小早川彩香。この二人は人気者の上、統率者の役割をすることが多いので、必然と皆従う。そして、それよりも気になるのが、あの怪しいお姫さん。ニコニコしながら我々を見守っているように見えるが、その実、目が笑っておらずどこか観察対象の様に我々を見ている。私達が勇者の金の卵ならば相手は大蛇の様な感じだ。いつでもお前たちを食える様に肥え太らせられそうだ。早々にここから出ていきたいと私は願おう。
「あ、あの!」
「何でございましょうか。勇者様。」
「その説明をしていただけるんですよね?」
「えぇ、勿論。して差し上げますわ。」
して差し上げますわ、ってめっちゃ上から目線だな。この人の根っこが見えるな。
「では、勇者様方を召喚することになった経緯をお話いたしましょう。」
これまたベタな話が出て来そうな予感がするな。
「ここ最近魔族が現れてきています。魔族というのは我々人間と違う種族なのですが、細かい説明はあとにさせていただきます。魔族というのは魔界で生活する者たちの総称です。そして、魔族を統括する魔王が現れたという情報がでてきました。そこで我々人間族の代表でハーメルン王国の第一王女であるエイリアス・フォン・ハーメルン、つまるところこの私が王家に古くから伝わる勇者召喚の儀を行いました。勇者様方には魔王を倒して我々人間族の安寧をもたらしていただきたいのです。」
後半しくしく泣きの演技を入れながら王女は演技をやり切った。
それと、国名は私達の運命を物語っていそうだな。
最初は益をもたらしてくれるが、報酬つまり、魔王を倒さなければ私達は始末される運命ってか。
洒落になんねぇ。
クラスの奴らも一部のオタク共がソワソワとしてる。どうせ、テンプレだとでも思っているんだろう。
「そうですか、王女様方の事情は大方わかりました。でも、ひとつだけ聞きたいことがあります。」
小野田が何故かわかりきった風に王女に聞く。こんな大雑把且つ怪しさ満載の説明で何が何を理解できたのかわからないが、質問する内容は皆聞きたいことだと思う。クラスメイトも静かにしつつも小野田に期待の視線を送っている。そして、私もそれに便乗しまくってビシバシと視線を送っておく。
「その魔王を倒したら俺たちは帰れるんですか?」
「それは、元の世界にということでいらっしゃいますか?勇者様。」
「そうです。」
「それは、確証はありませんが、ないとは言い切れません。」
「あるとも言い切れないのでは?」
「そうですね。勇者召喚の儀をするときに資料を漁っていたのですが、その時に魔王を倒せば帰れるとだけ書いてありました。しかし、これは我が国で子供たちにも読まれている絵本にも書いてあるのです。勇者が魔王を倒したとき世界に帰ったと。しかし、これはこちらからは確認できることではないためしっかりとした確証が得れないのです。申し訳ございません。」
王女はそう説明すると如何にも申し訳なさそうに眉尻を下げて頭を深く私達に向かって下げた。王女の家臣達は「姫様!」などと私達に頭を下げたことに悲鳴を上げている。
「貴様ら!姫様がわざわざ頭を下げたのだ。魔王を倒すためにせいぜい精進しろ!」
その言葉を聞いて何も思っていない者が少数と嫌そうに顔を顰める者が多数のクラスメイト達がいる。そして私はこう思っていた。
これはあれだな、うん。おひいさんはなかなかうまくやってんなぁ。と
「公爵様。これは危険を冒してまで勇者様が我々の為に魔王を倒してくれるのですよ。その様な無礼は私が許しませんよ。」
「ははっ!申し訳ございません。」
先程叫んだ爺さんが公爵の様だ。が、この猿芝居っていつまで続けるの?
「そんなことよりも勇者様方を立たせたままにしておけません。部屋へ案内致します。」
そんなことって、めっちゃ失礼じゃない?それに、結構話を逸らしたよね?だって、あれだよ?私達が家に帰れんのか?って聞いてんのにそんなことって。しかも、皆あんまり頭に残っていないようだし、これはいよいよ可笑しくなってきたな。
クラスの中には私より遥かに頭脳明晰な頭の良い奴等がいるってのに、だぁれも反応しやがらねぇ。
第一王女は長い廊下を歩き歩きある扉の前に止まった。騎士たちがその扉を開けると中はソファが綺麗に沢山並べてあった。多分こういうことを見越して用意したんだろうな。
「皆様ご自由にお座りください。そして、こちらを最初にお渡しいたします。」
すると、騎士さんがクラスメイト達に何かを配り始めた。私も「ありがとうございます。」と言いながら受け取ると騎士さんは何故かピタリと止まってしまった。私は不思議に思い騎士さんを見上げた。兜をかぶっているので表情が全く分からないが兎に角何か粗相をしてしまっただろうか?騎士さんはすぐに再起動し他のクラスメイト達にその何かを配り始めた。そして、私は興味の移ったその何かを見る。それは3×5㎝くらいの長方形の謎の金属板で隅っこに穴が開いてありそこにはチェーンが通してあった。そして、ベタな方向で行くとこれは
「ステータスカードになります。」
そう、ステータスカード。
「ステータスオープンと言っていただければ勇者様の魔力がほんの少しだけ吸われて情報が映し出されます。」
まじかよ。そして、またベタベタな展開でいくと、誰かが脱落すんな。
そうすると、皆が次々と「ステータスオープン」と悪魔の呪文のように言い始めた。勿論私もその一人だ。
「ステータスオープン」
すると、ステータスカードの上に半透明のホログラムが目の前に出てきた。
「うおーーーー!!すげー!小野田スゲーじゃん!」
「すみません。見せていただけませんか?」
「え、あ、はい。どうぞ。」
「これは、……流石勇者様でございますね。」
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小野田 蒼汰 16歳 男
HP100/100
MP200/200
筋力150
体力300
魔力100
速力245
知力100
スキル
火魔法
水魔法
風魔法
土魔法
光魔法
異世界言語
加護
光の神の加護
称号
勇者
聖剣の使い手
転移者
異世界人
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「すげぇ、チートだ。」「まじかよ…。」「小野田くんスゴーイ!」「流石小野田だな。」
「小野田様のステータスを見本に説明させていただきます。」
第一王女がクラスメイトに向き合って真面目な顔になる。
「一般人のステータスと比べると小野田様のステータスは素晴らしいです。一般人のステータスをこちらに書いておりますのでまわして読んでみてください。」
王女がそう言ってまわしてきた紙を私は読んだ。そして、溜息をついた。人生そう上手くいかないことに。
一般人のステータス
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HP10/10
MP10/10
筋力5
体力10
魔力2
速力5
知力10
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立花 薊 16歳 女
HP10/10
MP10/10
筋力3
体力5
魔力2
速力3
知力100
スキル
異世界言語
称号
地味女(仮)
転移者
異世界人
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これから私はどうなってしまうのだろうか?