悪魔
僕の家(屋敷)に居るのは殆どが父と爺の配下となった家来や同族、護衛、幹部とたくさんの従者にまみれあんなに優しいと思ってた家の者達が悪だなんて思いも寄らなかった。
確かに僕のお世話係のろくろ首は置いといて鬼蜘蛛や地に埋まって待機をしてるガシャドクロなどが当たり前のように家にいるだなんてことが普通の妖怪の家だなんてことはある筈ない。よって僕は悪に染まる気なんて無かった。
だから……大脱走を試みた…。
しかし、この屋敷の外には子供の姿の僕には出ることが叶わなかった。
屋敷の周りには巨大な魔法陣によってバリアが張り巡らされており、人間も通さない、逃げ出すものも通り抜けさせないという酷いものだった。
あの悪魔の名を轟かせている父も僕の将来には差支えなんてないように次期頭領にするためにまだ幼い僕にたくさんの修行を行わせた。
酒の力によって強くなる最強の鬼『酒呑童子』の幼子だとしても酒の使い方などまではよく知らず、酒の無駄使いで蒸発したり、妖気を使いすぎたりして倒れることが頻繁にあった。
そんなある日のこと僕はふと思ったのだ。父は立派で『悪魔』の異名を持っていて妖怪も人間も関係なく襲い血肉を喰らう恐ろしい人。
だが、父には鬼のツノは無い、悪魔の尻尾も無い。父がいつも手に持つのは剣でも槍でもなく戦争で優勢に立てる【銃】だった。
『ねぇ……父は僕の本当のお父さんなの?』
鬼なら鬼の子。悪魔なら悪魔の子。酒呑童子の子なら酒呑童子の親。それが本来の事だった。
でも、父は酒呑童子でもなく鬼の角も見当たらない。僕は何者だ?と不安になった。
ろくろ首『あっ当たり前ですよ!若は魔王様のちの繋がった子供です』
本当なのか不安は強まるばかりだった。僕は転生者ということだけしか頭には殆ど残っておらず、自分が成すことさえも忘れてしまったいま、のんびりと生きていても自分のことは知りたいのだ。それが、子供の本心だ。知りたいからこそ悪さをする。知りたいからこそ素直になれる。
そんなここのが不安定な時に僕に囁く声が聞こえた。『キミはひとりぼっち……あの人は父親ジャナイよ?』『君の本当の家族は俺たちサ!』っていうザワザワとしていて五月蝿い。でも、どこか懐かしく思う、ホットすること声はなんなんだ?と思った時だった。
ろくろ首『若っ!お気を確かにっ』
目は充血し黒い血が目からタラタラと落ちる。そして目元から頬にかけて魔王も爺さんも見覚えのあるあの独特な刺青のような痣。
血が騒ぎたてる。ここに付け込まれて幼い僕は思考を強制的に止められて支配されてしまった。
『キミは俺達の希望のお姫様……』『違うよ……王子様だよ』『お姫様だって』としょうもないことで言い争う悪魔共。
何も出来ずにいる僕はいま、どんな行動を取っているのだろう?倒れているのかな?それともぼーっとしてるのかな?答えはどちらもNOだった。
鬼蜘蛛『ろくろ首っどうしたんだ?』
ろくろ首『早く……魔王様かお爺様をお呼びなさいな』
鬼蜘蛛『分かった。すぐ呼んでくる』
ふたりが焦ってトロトロとしている間に騒ぎをいち早く察知し駆けつけたのは魔王だった。
魔王は懐かしくもとても嬉しそうに笑い珍しく戦争では全く使うことのない家での素振り程度しか手にしない剣を子に構えた。
魔王『軟弱な奴だな。そして金の卵だ……コイツは……だが、妖気がえげつない……妖気を断ち切る他ないか……』
ろくろ首『たっ断ち切るって……ヘタしたら……』
魔王『死ぬな……目覚める事は一生来なくなるな』
ろくろ首『そんな……』
魔王『ハナヅキは俺が鬼の力を悪魔に明け渡した代わりに得て手に入れ愛した魔の女王の子だ。死ぬことは俺が許さん』
ろくろ首『……魔王様……』
魔王『悪魔共よ……引け。そしてカラダから出てゆけ』
その言葉と共に敵を払い子を助けた。しかし、魔王は魔王。『男か女かわからん奴を抱くし趣味はない』
と、スグに手をぱっと離し後のことはろくろ首や鬼蜘蛛たちに任せ去っていった。
ろくろ首『若……ご無事で……。』