魔王の父
ある日オレは気づいてしまった 。
何を?それは……今まで列記とした自分は男の子だと当たり前のように思ってたからやんちゃな男児を演じていたオレは実は……
ろくろ首『若……わかりましたか?あなたは女の子なのです。なのでせめて俺ではなく僕に一人称を変えてくださいな』
と、ろくろ首と一緒にお風呂に入ってから気づいた。まぁ、そうだよね。鏡で顔を写しても顔以外は写らないし……なんか女に転生って少しショックだな。
でも……ここの人たちも俺……いや……、
僕の事を『若〜』ってよんでたんだから仕方ないよね。僕だけのせいじゃないもんね。
風呂上がり、決まってジュースを髪を乾かさず髪の毛ビショビショのまま飲むのが僕の日課。
結局、爺かろくろ首に『コラッ』て叱られてしまうんだけど、何故かコレが地味ながらも止められないんだよね。
僕は『若』だから
偉いんだ……たぶん。だから叱られても自分では拭かなくていいから気にしない。
そんな今日はジュースを飲む前にろくろ首に捕まってしまいドライヤーで『ブゥゥン』と髪を乾かして広い洋室部屋に駆け込むようにして入った。
ジュースもアイスも僕が風呂上がりに欲しいものはここに勢揃いしている。
だから今日は運悪くろくろ首に捕まって時間はかかってはしまったがいつものジュースから気分を変えて棒のチョコアイスを冷蔵庫から取り出し袋をあけて食べようとした瞬間だった。
一瞬の隙に僕の手からアイス君は消えてしまっていた。僕のアイス何処に行った?アイスが自分でスルリと手からジャンプして逃げ出したのだろうか?ってな事は有り得ない。
『うーん??』と顰め面で顔を悩ませていると僕の背後から『くくくっ』と微かに笑い声が聞こえた。
背後をシュバッと見ると、そこには僕と同じ真っ黒い髪に同じ紅い目をもったもしやの人が居た。
ろくろ首『ハナヅキ様、こちらは若のお父様ですよ。サタン様です。』
父『ろく、なぜ逐一説明をしているのだ?とうに父と認識しているだろう?』
ろくろ首『サタン様はまだご存知ないでしょう。若は記憶を少々失われておられるのです』
父『ほう……』
父よ……あまり驚かないご様子だな。僕に一切興味は無いってか?つまらない父だな…悪魔だからなのか?サタンって名前だから魔王かなんかの人なのかな?
『ろくろ首……父は魔王さまなのか?』
ろくろ首『えっ……』
『父は魔王なのか?』
父『そうだ』ろくろ首『違いますよ』
父とろくろ首の言葉が同じタイミングで重なった。ふたりの言葉は真逆の意味。僕がどっちを信じるか……勿論……ろくろ首だ。だって魔王じゃないのに悪魔じゃないのにサタンって名前だったら凄く面白いと思わない?腹が痛くなるほど面白いって思うんだ。当本人は腹が煮え返るほどお怒りになるだろうけど……。
ろくろ首『お父様は若と同じ鬼の妖怪でございます。サタンはお名前で魔王とかいてサタンと読み最近人間達で流行っているキラキラネームみたいなものです。』
『そうなんだ~ふーん……へー』
魔王『なんだ?餓鬼……文句あるか?お前だって女みたいな名前な癖して……』
『僕オンナだよ?それに名前のは父のセンスが無かったからだよ』
魔王『お前…………その角へし折るぞ!』
『そんなことしたら父の耳を噛みちぎって目をくり抜いてやる』
ろくろ首『若!いつの間にそんなきたない言葉を……』
父『悪魔ではなくてもお前の母は悪魔だった。そして俺は悪魔という通り名があるから間違ってはいない。』
『なんで悪魔?』
父『人間や悪魔、妖怪を食べ尽くしてあるからさ。』
その日、初めて知った。転生してから安泰が続いていてここはいい所。いいひとばかり。正義だ。
だなんて思ってたけど……
ろくろ首『また殺しに?凄いですね。さぞ美味しかったでしょう?』
父『人間の血は美味しかったな…』
ここは悪いヤツらの異常人たちの集まりだった。僕は悪の敵の方の家に生まれてしまったと言うことを。