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トラックに轢かれてないのに異世界入り

小説や漫画ではよくある話だが、目が覚めたら外にいた。 自分は布団で寝ていたはずなのだが。

目の前は映画やアニメでしか見たことのない草原、いや大草原と言った方が良いであろう風景が広がっていた。

まず自分の家の姿形があるはずもなく、周りを見渡しても草と木で溢れている。

夢か現か分からないので、取り敢えず頬をつねるが痛い。

この景色はきっと現実なのだろうと思う事にした。

取り敢えず日が照っていて昼間なのだろうということは分かったし、匂いは爽やかで、とても現実離れし風景ではあったが、やはり現実のようだ。

しかしそうなると――


「ここはどこでこの後はどうすればいいか、だな。 生憎持ち物は少ない。

取り敢えず靴を履いてるのはラッキーだと言って良いだろう。 後は財布と携帯……それと何だコレ?」


自分の学生服の右ポケットから取り出したのは八年程前に失踪した親父の形見である懐中時計であった。

コレを身に付けることはなかったし、これからも身に付けるつもりもなかった。

感傷に浸る時間は俺にはなかったし、周りもそれを許さなかった。

母と姉は義理であったが、父さんを本当に愛していたし、家族であった。

それ故に、母と姉は日に日にやつれていった。

親父は親父で監視カメラに写ってない位煙のように消えた。

まるでそんな人物最初からいなかったからのように行方が完璧に消えたのだ。

失踪から八年経つが、未だに見つからない。


さて、それよりも自分の事だ。 自分はこれからどうなるのか。 家に帰れるのか。

それとも――思考の海に沈めていると何処からか音がきこえる。

ドドドっと鈍く低い音だ。 まるで馬でも走ってくるような音である。

しかもこっちに向かって来てる気がするのだが。

周りを見渡してみるが、どうも分からない。 本当に聞こえたのだが、気のせいだったのか?

いやいなかったら困る。 こんな所で立ち往生しててもしょうがない。 どうにかしないと。

そう思った矢先、肩をトントンと叩かれた。

後ろを見ると目の前にドアップの馬がいた。 取り敢えず可愛いのは分かった。

頭をなでなでするとブルブルと鳴いた。 うん、可愛いな。

しかしトントンとまた肩を叩かれた。

まぁ確かに馬が肩を叩く訳ないか……振り向くとそこには金髪で赤目の美人がいた。

何か言いたそうにこちら見てーーいや口を開いている。


「―――」

「え?あー何言ってるんです?」

「――――――?」


何かを伝えようとしてるのは分かるが、何を言っているのか分からない。

そんな事を考えている内に手を捕まえてグイグイと引っ張って馬に乗せようとしてくる。

人攫いかと思ったが、どう見ても悪い人には見えない。

何か語りかけてくれるているし、何やら丁重に扱ってくれているので、人攫いという線は微妙だと思いたい。 この流れに乗ってこの人を信じるしかないだろう。

馬に跨り、指示された通り女性のウェストにしがみつく事数十分、相変わらず何を言っているかは分からないが、女性が手を指す方向を見ると、ヨーロッパの様な街並みが――え?

城壁と立派な城……ていうかデカすぎだろう。


こちらが大口開けて呆けている間に馬を置いてきたらしくそ既に馬の姿はない。

金髪の美女はまたグイグイと俺の腕を引っ張るので、抵抗せずに付いて行く。

その態度が良かったのだろう、笑顔で俺と腕を組む。 ちなみに身長は俺の方が高い。

179cmあるのだが、ミリ単位で伸びるけど、どうも180には届かなそうだと思っている。

対して彼女は元あげられそうな体格なので、160cmはないと思われる。

ルックスから読み取れるのは世話好きで意思の固そう、俗でいうツンデレっぽいんだろうなという事。

そしてスタイルがかなり良い。

ウチの姉も相当良い(胸以外)が、胸も中々のボリュームで、先程から腕が幸せである。

そして先程から顔をガン見したのがバレたらしい。

何か言っているのだが、何を言っているのかさっぱり分からない。

と、彼女がいきなり立ち止まり、腕を手放した。 ちょっと残念だ。

彼女が振り返り、笑顔で横の建物を見た。 多分着いたよっ! とかその辺を言っているんだと思う。

そして背中を押して、建物に入って行く。

これまたゲームで見たことあるような酒場兼宿屋みたいな場所だった。


カッペ丸出しみたいな俺を椅子に座らせ、多分ちょっと待っててみたいなことを言って二階に上がっていった。

どう考えてもこの世界は俺の住んでいる場所とは違う文化圏なのだろうという事はわかった。

目の前の人がマンガ肉みたいな料理を食べているし、何よりボディービルダーだってそんな太くないだろうという位にマッチョである。

あと物騒なことに剣や槍、斧なんかを必ず傍に置いている事から、コレはガチな転移物なんだと思う。

言っておくがトラックに轢かれた覚えはない。 前にも言ったが、俺は部屋で寝てたのだ。

しかしこういうものは大抵簡単には帰れないものだ。

あの二人は大丈夫なのだろうか?父が行方不明になった時でアレだったのだ。

俺までいなくなってしまっては……

思考を止めてしまっていた俺の肩をポンっと叩いたのは初老のおじさんであった。

その後ろに例の女性が立っている事から、この人に会わせたかったらしい。

そして何言っているのかは分からない。 ボサボサの無精髭に、ボサボサの髪。 ローブと言えばいいのか、衣服も薄汚れている。

そして何よりおかしいのは、ファンタジー物でよくある、大きな杖を俺に掲げている事だ。

こういう時大抵呪文を詠唱する時で……あ、なんか目の前が神々しい光が―――


「どうだ少年。 言葉がわかるか?」

「あー、うん。 そのようです。 どうもありがとうございます」

「やったっ!ありがとうユージュリアスさん! 今日の夕飯は豪華にしてあげるね♪」


どうやら魔法使いらしいおじさんが、翻訳魔法なる物を掛けてくれたらしい。 とても助かる。

彼女がこちらに来て、目の前に座った。 顔近いから照れるな。


「それで、君の名前は? 服装から考えて稀人(まれびと)だと言うのは分かるけど」

「俺の名前は相楽叶。 稀人というのは良く分からないけど、多分それだと思う」

「君は地球にいるよ。 安心したまえ。 ここは地球の地下世界。

君たちの言う所のアルザルやシャングリラ……いや、アガルタと言えばいいだろう。

故に空を見れば分かるだろう。 太陽が二つある。 それこそアガルタであるという唯一の証拠だ」


アガルタ……アジアどこかにあると言われている、19世紀から20世紀頃まで流行した、オカルト的伝説。 まさか存在したとは。 いやそんな眉唾な、とでも言えば良いのだろうか。

目の前魔法使いは彫りの深い顔をしかめさせ、ジト目で見られる。 いや、オッサンにジト目されてもな。


「少年、信じてないだろ。 だがコレは事実であり、この世界の名もアガルタというのだ」


金髪美女に視線を向けると、本当よと言わんばかりに、首を一度縦に振った。


「私の言葉は信じないのに、彼女の言う事は信じるのか。 全く、まあいい。 ここはションシ中央王国。

近年稀人が多く流れて来るために近代化が進み、テロス連邦の国力を遂に抜いたとされる、アガルタ随一の国だ」

「近代化って言っても地上と違って遅れてると思うんですけど」

「それはそうだろう。 ここは君達で言うところのファンタジー世界だ。

剣と魔法の世界なのだから、地上のように機械に頼る必要がない」


成る程。 そう言う考えができるのか。

それよりも、さっきからずっと金髪美女に手をにぎにぎされてるんです。 いや、別にいいんですよ。

ちょっと照れるだけだから。


「それで、このアガルタから地上に戻る方法はないんですか?」

「ある。 だが、今は出来ないと言うしかないな」

「何か条件があるんですね」

「物分かりが良くて結構。 稀人は波長があう人間が勝手にゲートを通過して来ると思われている。

タイミングも非常に重要なファクターとされているが、このタイミングと波長というのが厄介でな。

未だに解明されていない。 ゲート自体は各王国にあるのだがね。

それも王国に隠されていて、一般的に公開及び、発表されていない。

つまりトップシークレットという訳だ」

「成る程……つまり、死ぬまでここにいることになるかもしれないから覚悟しろ、という訳ですね?」

「まあ、そうなるな」


となると、ここで帰る手段は三つ。

一つ、密航。 これは隠された場所を探し出し、かつ、波長とタイミングを合わせるという訳だ。

先程からの言葉によると、ゲート自体は結構な頻度で開いているらしい。 そこに便乗できるのがベストだ。

二つ、王国で就職。 これは王国の国王の信を得る立場になることによって帰るために色々調べられるかもしれないということだ。 だが、これには相当な運と時間がかかると思われる。 個人的には却下。

三つ、ユージュリアスという魔法使いは何か隠しているのは何となく察せられるので、これを暴いた上で手伝ってもらう。

ただし、これのリスクはこのオッサン次第ということで、隠してる内容も帰るための情報であるとは限らない。 以上からどれも現実的ではないという事だな。


「まあ、そんな悲観しないでよ。 アタシも手伝ってあげるから、ね?」

「ありがとう。 えっと……」

「そっか、ごめんごめん。 自己紹介がまだだったよね。 アタシはここの娘で、ユウキ。

ユウキ•ラム•レイナード。 よろしくねっ♪」


俺の目の前に大輪の向日葵が咲いた気がした。 めっちゃ可愛い。

このまま抱きついてギューって、ギューってしたい。


「よろしくです。 ユウキさん、そのありがとうございます。 今までのこととか、その、手伝いのこととか、めっちゃ嬉しいです」

「ふふっ、いいのよ。 困った時はお互い様。 それに君が稀人だってのはすぐ分かったし、あそこは物騒だからね」

「そうなんですか……重ね重ねお礼を。 本当にありがとうございます」


いいのよ、と言って顔の前で手を振る。 顔が少し赤み差してきた。 多分照れてるだと思う。 そういうところも凄く可愛いし、好みである。


「ユージュリアスさん、でいいですか?」

「ん、俺か。 俺はユージュリアス•エル•セガール。 一応魔法使い兼学者、といったところか」

「ユージュリアスさんも色々ありがとうございます。 お陰で色々分かりましたし、言葉も理解できました」

「なに、大したことではない。 それよりもこれからが大変だぞ。

とにかく城に行く事だな。 丁度いい事に今徴兵中でな、そこで入る事が出来ればいい。

出来なければ次の手段を講じるしかない」


コクリと頷いた。

しかし徴兵とは穏やかではないな。 まさか戦争中だと言うんだろうか。


「それまではココで寝泊まりしていいよっ! ちょっとお手伝いをお願いすると思うけど」

「願ったり叶ったりですよ。 ありがとうございます、ユウキさん」

「それと、言っておくことがある。 そう身構えなくていい。 君にとっても有益な情報だ」


有益な情報……何だ? まさか転移特典でもつくってか? いやそんな御都合主義な事が―――


「稀人は稀人と言うだけあって特異な能力を所持している。

まずは身体能力が今までの君よりも遥かに上まっている筈だ。

そして、特異能力だが……これは人によって違う。 だが、かなりの能力である筈だ。 それ故に稀人をいかに多く国に取り込めるか、つまり取り合い合戦が起きている」

「まさか徴兵って―――」


そのまさかさとニヤリと笑う。 どうでもいいけど、その顔犯罪者くさいからやめた方がいいと思う。


「となると俺の能力次第で」

「そう、城に入れるか決まる。 だが残念なことに俺は調べられないし、この国にもいない。 なので連邦か、自分で目覚めさせるしかない」


自分で目覚めさせるしかない……とは言ってもな。 一体どうすれば覚醒するのか。


「手取り早い方法は自分が死にかける事で覚醒するものが多い。

もっとも戦闘系ではないものも少なからずいるから、オススメはしないがね」

「そうですね。 危ない橋は今わ遠慮したいです」

「まぁ気長にいきましょっ! さぁ、そろそろいい時間だしご飯にしましょっ」


こうして俺の異世界(?)生活が始まる。 借宿暮らしの異世界ライフって響きがいいな。



活動報告で言った通り、オリジナル小説がスタートしました。

が、起きたら名族の合間をぬっての投稿となりますので、ゆっくりな更新となります。

ご了承ください。

ちなみに、Dearboy並びに桜井舞人の主人公は全てキョウという名前です。

が、自分の名前ではなく、キョウという名前が大好きなのでそうなっています。あしからず。


今後ともよろしくお願いします。

それでは皆さんまた来世。

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