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異世界転移で魔王勇者やってます  作者: 沖田 佐多春
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魔王勇者の誕生

 王様たちがいる部屋に戻った俺に王様は問いかけてきた。


 「異界の勇者よ。この国の現状を聞いて、悪しき魔族共をこの世から駆逐するため我々の力となってはくれないか」

その言葉を聞いて、俺は何も考えず、「はい」もしくは「いいえ」と簡単に答えられたらどんなに楽な話だったろうかと、用意されていた紅茶らしきものを飲みながら、思考を彼方に飛ばしていた。俺が簡単に「はい」とも「いいえ」とも答えることができない点がいくつかある。

 まず1つ目の疑問点は国土の三割も奪われ、現在進行形で攻められているこの戦争の原因がわからないことだ。。


 魔族側の何らかの思惑によって、仕掛けられた戦争ならば力を貸すことはこちらとしてもやぶさかではない。がしかし人間側から仕掛けたのであれば力は貸したくないと思っているが、仮にも一国の王が、わざわざ異世界から召喚した(自分で言うのも何なんだが)強烈なで鮮烈的な武力を持ち、強大な正義の執行者の象徴(としてラノベなんかで祭り上げられていが、この世界ではどうなのか聞いていない)勇者と言う駒になんの手綱もつけずに放置するだろうか。


 そして答えはおそらく、(いな)である。おそらくは王は攻撃できないようになっているか、攻撃しようとすると何かが起こって強制的に止められるはずだ。最悪の場合召喚された時点で王に隷属しているのかもしれないが、その場合こちらの意見を聞く必要はなく、ただただ貴重な時間が無意味に過ぎていくだけなので、そのようなことにはなっていないはずだと思う。


 2つ目は俺の持っている情報が少なすぎるということだ。俺が持っているこの世界の情報は、言ってしまえばすべて、魔王および魔族によってこの国が脅かされている。という情報に行きつく。情報がこれだけしかない状態で判断すると、少々、いやかなり重大な選択ミスを犯しかねない。しかし安易に「はい」と返事をするにはこの国はうさん臭く怪しい。


そんな感じで俺が無言で悩んでいると、王様は唐突に言った。


「今回の召喚も失敗か」と。


 その言葉に反応するよりも早く先ほどから全身を包んでいた微弱な倦怠(けんたい)感が一気に強くなり、俺は椅子から崩れ落ちた。


「な・・ん・・」

「ふむ。どうせすぐに死ぬのだから、冥土の土産に教えてやろう。異界の勇者は我々の言うことのみを聞く存在でなければならんのだ。私たちの言ったままにこの世界を救う存在でなければならないのだ。ゆえに貴様は次の勇者(愚者にして操り人形)を召喚するための生贄になってもらうのだ。ああ、貴様の身体が動かんのは、茶の中に特定の魔力の波長に反応して麻痺毒を分泌するヒーマを混ぜていたからな。 おい、こいつを魔法陣の上に置け。」


 兵士の1人が俺を担いで魔法陣の上に置く。俺はどうにかして、この場を切り抜けることができないかと動かない体を動かそうとしてもがくが体はピクリとも動かない。そして次の瞬間、ドスッガッという音とともに、腹部に衝撃が走り経験したことの無い痛みに俺の意識は暗闇に包まれた。





sideドーム王国王女兼宰相 イリス・アル・クルーガ


 その日は、いいえこの国で生まれてからずっと私の周りは欲望にまみれていた。私には心を覗く魔眼があった、いえあってしまったから私はいつからかこの国の貴族や王族人の上に立っている者たちの存在がどうでもよくなってしまった。ほとんどの貴族は私を私腹を肥やすため、爵位を上げるため、自分が王になるため、ぐちゃぐちゃに犯して気持ち良くなりたい、そのための道具としか見えていない。そのために各々の統治する領の民に重税をかけ搾り取っている。


 民たちは逃げ出す力もなく生殺しにされている。さらに戦争が起こると民を徴兵して戦争に出る。その間領には男手が減る、そうなると力仕事が溜まっていく。女の手でやろうとして失敗しさらに滞る。現在は造幣局ぞうへいきょくに命じて発行する硬貨の量を増やしているが、おそらくこの国はあと数年で経済が破綻し立ち行かなくなり帝国、魔族もしくは両方と言うのもあり得る。


王国は言ってしまえば人間至上主義で、帝国は始まりの代から差別を禁じ差別しようものなら逆に差別の対象になる、を地で行く気風の人物が集まる国なので魔族とは友好的な関係を結んでいる。


王国、帝国と並んで三大大国に数えられるレイル商業国は、完全中立を謳っており、(事実建国から今までどこかの国にのみ肩入れしたことはない)魔族だろうが人間だろうが商売ができるならばどのような人物でとでも商売をすることで有名だ。(しかし犯罪に加担することはなく、もし騙して犯罪の片棒を担がせようものなら即座にレイルの国中に指名手配され経済的な報復をして騙した相手が破産するまで追い詰めるのでレイル国内の店はかなり信頼されている)


閑話休題(それはさておき)


そして父と一部の大貴族はひそかに異世界から勇者と呼ばれる存在を呼ぶことにした。この国は歴史だけはあるので過去の記録から見つけた一般的には失伝魔法(ロストマジック)となっている勇者召喚の魔法を使い勇者を呼び寄せた。

 この魔法を研究している最中に召喚される勇者の強さはささげられた魔力の量に依存することがわかっていた。そして父たちはあることを思いついた。それは、召喚された勇者を生贄にさらに強い勇者を呼ぶことができるのではないか、と。そして父たちは総数24人の勇者を召喚しては能力の値を見て記録を付け実験動物(モルモット)のように生贄にして捨てるという非道を繰り返した。私はそのことに気づいてすぐ父に説明を求めた。しかしいくら問いを投げかけても返ってくるのは、「世界の救済のため、必要な犠牲である」としか言われない。


そうして無駄な時間が過ぎていき25人目の勇者が召喚されることになった。魔術師の話の通りならば、これまで召喚された勇者よりもかなり強くなる。と言うことだったが見る限りそうは見えない。優しそうな黒い目に、髪の生えるままといった具合の黒い髪、あまり筋肉がついておらずひょろりとした手足、ぶっちゃけかなり好みなのだがこの思いを表情にもしぐさにも出してはならない。

そしてこれは一時の気の迷いにしなければならない。

なぜならこの気持ちは絶対に叶わないから。

いくつもの戦場を駆け抜けて立ち上がることができなくなるまで道具のように使われる。

そんな人間(もの)に思いを寄せてはならない。

そうだあれは人間(もの)だ。今までと同じようにこの思いは心の深くに沈めて、冷徹に冷酷に接しなければならない。

そうやって私の価値を示していかなければ、私はすぐにでも結婚しなくてはならなくなる。

それはまずい。私の計画のためにまだ宰相の位置から落ちるわけにはいかない。だから―――――――










だからその笑顔を見せないで、忘れてしまえないから。












すべてをぶちまけようと思ったこともあった。しかしそのたびに苦しむ民を思い出して踏みとどまる。それが繰り返す毎日に心が耐え切れなくなってきたのか最近は記憶が飛んでいることがある。それを悟られないようにするとさらに記憶が飛ぶ悪循環が続いていてここ2、3日の記憶はまるでほかのだれかの記憶を見ているような感じでどうしようもなくなってきている。


しかしそんな思いにふける私の心境を知る由もなく勇者を失敗作として生贄にしてさらに強い勇者を召喚することになった。そして動けない勇者を魔法陣の上に横に寝かす。ここまでは何事もなかった。しかし近衛兵長が剣を抜き魔法陣の上に寝ている勇者の腹部に剣を刺したとき誰も反応することができなかった。


勇者の腹部から絶え間なく広がっていく赤い、深紅の液体。それに最初の反応を見せたのは近衛兵たちだ。突然の事に戸惑いながらも、体に染みついた動きで近衛兵長に接近し剣をふるおうとする。が次の瞬間、パンッと言う音とともに近衛兵の頭が血をまき散らしながら消し飛ぶ。近衛兵長の腕がいつの間にか振られ近衛兵の頭を砕き割った。という事実を飲み込むのに少しの時間がかかった。


そして近衛兵長の身体には変化があった。肉が盛り上がり内側から鎧を壊し鍛えられた肉体が出で来る。盛り上がり続け遂には5メートルにもなった。そして額には一本の巨大な角があった。我々はこの化け物を知っている。人を超す体躯を持ち額に角を持つこの化け物は、、「鬼・・・」私の言葉が聞こえたのか鬼は牙を見せつけ笑う。


「ああそうさ。俺は魔王様直轄の鬼族兵団所属、・・・名前はまぁいいかすぐに死ぬ奴に名前を伝えなくてもいいだろ」貴族の一人がまるで状況をわかっていないのか傲慢に口を開く。

「下賤な畜生ごときが我々の神聖な城で何をしている!」鬼は面倒くさそうに見ると、

「あぁん? 何をしているかだって? そりゃあおめえ、魔王様の復活の儀式だよ」さらにほかの貴族が言う。「復活の儀式だと? バカバカしいそんな物できるわけがない」その言葉に律義(りちぎ)にも鬼は答える。

「お前らのおかげでできるんだよ。あの陣はある一定以上の魔力が溜まると性質を変えて魔王様が復活できるように俺が細工をしといたのさ。そしてお前らがあの陣に良質な生贄を捧げてくれたおかげで予想よりも早く必要な魔力が溜まった。そして質のいい魔王様の(勇者)も手に入った。そしてこれから復活するのは史上最強の魔王と名高きヴィーヴニル様だ、つまりは貴様らに生はないと分かったな? 分かったなら死ね」

そう言って、手近にいた貴族の一人を叩き潰そうと手を振り上げた鬼の胸に穴が開き、血が噴き出る。鬼の身体から力が抜け倒れる。そしてその後ろにいたのは、異形だった。


異形は2対4枚の羽根を持ち、尻尾を生やし、四肢は光を一切反射せぬ黒の鱗を持ち、目は金色のに輝いている。まるで龍のように――――  しかしそれ以外には髪が腰まで届きそうなほど長く銀色になってはいるが召喚された勇者なのだ。その異形はこちらを向くとそのまま倒れた。そしてまるで今の出来事が夢のように羽根や尻尾、鱗は消えている。しかし今のが夢ではないことは勇者の長く銀色に輝く髪と胸に穴をあけ倒れ伏している鬼の存在が告げている。そして私は独り決心する。この存在がどんな存在であれ私の稚拙でずさんな計画に巻き込むと。その後勇者はひとまず城の地下に幽閉されることが全会一致で決まった。

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