1話
見切り発車なのでかなりムラのある更新スピードになります。
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俺こと、神崎裕也の人生は平凡だった。変わらない日常、変わらない風景、これまでも、そしてこれからも続くとなんの根拠もなく信じていた日常は何の前触れもなく、砂上の楼閣がごとく儚く消えた。俺が異世界に転移することによって。
その日オタク高校生の俺は、今月出たライトノベルの新刊を買いに出かけていて、帰り際に足元が光ったと思うと、それはもう、あまり部屋の装飾のセンスのない俺でもわかるぐらいに下品な部屋だった。
「なんだここ」
周りには金銀財宝が山のように積み上げられている。
確かに一つ一つを見ると綺麗なのだが、こうも無造作かつ大量にあると、あまり綺麗ではない。天井には色とりどりのガラスで何か描かれている。そして色とりどりのガラスから太陽の光が透けて、さらにそこから山のように積まれた財宝に反射して目に悪すぎる。輪をかけて目に悪いのは足元の魔法陣一定間隔で発光していてまたこれもまぶしい。
そして10メートルほど奥には5人の兵士(らしき格好をした人たち)に囲まれて装飾過多な椅子に座り、そこかしこに宝石を付けたオッサンが、一番上座に座りその横には、確かに価値はあるのだろうが、周りの財宝などと比べるとかなり小さな宝石を申し訳程度につけている金髪碧眼の俺と同い年くらいの美少女が静かに座りこちらを見ている。気のせいかこちらを申し訳なさそうにみている気がする。その横に並ぶように左右合わせて20人の身なりの良いオッサンや白粉をあきれるほど塗りすぎて、逆に老けて見えるババァなど様々な人たちが座っている。
美少女はこちらを見据えて、
「私の名前はイリス・アル・クルーガ。ドーム王国の王女であり宰相でもあります。異界の勇者よどうぞ席にお座りください」そう言って指し示された一番下座の席に混乱しすぎて逆にきびきびした動きで座る俺。そりゃいきなり見たことの無いような量の財宝が無造作に置いてあって、モデル顔負けの美少女が居たりしたら混乱しすぎて逆に冷静になるよ。オッサンやババァどもはまずまずじゃないかみたいな感じでこっちを見ている。さて俺は何をされるのやら。
一番奥のオッサンが口を開く、
「異界の勇者よ、我はバンダール・エル・ドームこの国の王である」その言葉におれは「・・・はい」としか答えることができない。
「イリスよ、勇者を別室に連れていきこの国の現状を話すのだ」イリス王女はドアを指し示しこちらですと言って行ってしまった。俺はあわてて席を立つと王女の後について行った。
案内された部屋は相も変わらず装飾品であふれかえっていた。
「ではこの国の現在の状況をお話しいたします。現在この国の元の領土の3割が魔族に占領されています」そう言い地図を指しながら説明してくれるのだが、どのくらいの縮尺かわからないのでそれだけではどのくらいの大きさがあるのかわからないので素直に質問した。この国はほかの国と比べてどのくらいの領土を誇っているのか、なぜ3割も領土が占領されているのか、答えはこうだった。
「この国の領土の大きさはほかの2国と比べても大差がない。そのため早急な領土の奪還が必要なのです。もう一つの質問に対しての答えはこうです。魔族は総じてレベルとステータスとスキルの練度が高いからです」
「レベルとステータスとスキルの練度?」
「ええ、レベルとステータスとスキルの練度です。ステータスにはMP、筋力、魔力、物理防御力、魔力防御力、敏捷、器用の値があります。ステータスは個人差がありますので、10代のうちに成長しなくなることもあれば、60代になってもまだ伸びる人もいたりします。ちなみに私のステータスはこのような感じです」
『ディスクローズオンリーステータス』
名前:イリス・アル・クルーガ
称号:ドーム王国王女 ドーム王国宰相
職業:魔法軽戦士Lv15
レベル20
MP 400
筋力 200
魔力 240
物防 190
魔防 230
敏捷 300
器用 250
「? ステータスってこんなに簡単に他人に見せてもいいものなのか?」
「いえ普通は口頭でレベルと職業ぐらいしか言いませんよ」
「じゃあなぜ俺に簡単に見せたんだ?」「それは、手っ取り早く信頼してもらうには自分の情報を渡した方が速いと思いましたので」
「わかった。んで、ステータスについては分かった。ならレベルとスキルの練度ってのは何だ?一応似たようなものは知っているが、それと一緒にしていいのかわからないから、、できるだけ詳しく説明してくれるとありがたいのだが」そう言うと王女は微笑んで「ええではまずはレベルですね。と言ってもこれ単体ではあまり意味はありません。精々どのくらいの数の魔物を殺しているかが大雑把にわかる程度です」
「ふむ、レベルが上がった時にステータスが上がるという認識でいいか?」そう尋ねると
「はい。ただし先ほども言ったようにステータスの上がり方にも個人差がありますのですぐにステータスの更新が止まることもありますが、その場合にも短い期間でステータスが跳ね上がって英雄と呼ばれるようになった者から全く伸びずに最弱のままと言うのもあります。なのでステータスとレベルに開きがある人もいます。そしてギルドの調査によると人間の平均ステータスは200から250で魔族の平均ステータスは300から400まで人間にも平均ステータスが400を超える人員もいますが魔族と比べて圧倒的に数が少ないというのが現状です」
「じゃあ、スキルの練度と言うのはどういうものなんだ?」
「スキルは持っているだけで持っていないものとの差ができます。もちろんスキルをもっていなくても強くはなれます。・・・が、それはごく一握りの人間のみなのです。スキルの練度は等しく平等です。ステータスと同じように最低値はF、最高値はAそれぞれに+と-を加えてさらに規格外を示すEXを加えた全19段階に分けられます」
「EX?」
「はい。例えば剣術のA+スキルとEXスキルとでは圧倒的な差があります。どうあがいても届くことの無い境地に至る事が運命によって決められている人物が手にする力、それがEXスキルです。EXスキルは生まれもって来るものなので、それ以外のどのような手段を取っても手に入れることは不可能です」
「大体わかったが1つだけ質問していいか?」王女がうなずいたので疑問をぶつける。
「ギルドが魔族や人間のステータスの調査をしたといっていたが、戦争中なのにそんなことできるのか、ということなんだが」
「それはですねギルドが絶対中立の信念を掲げているからです。魔族、人間隔てなく手を差し伸べる組織それがギルドです」
「ではもしこちらからその中立の立場を崩そうとしたらどうなるんだ?」
「おそらくは国中のギルドが活動を停止します。そうすると今まで冒険者がやっていた魔物の退治を国がやらなければなりません。戦力が国中に広がり他国への防備が薄くなってあっという間に滅ぼされるとも限りませんのでギルドへのちょっかいはどの国でも暗黙の了解のうちに禁止となっているのです」そう言って立ち上がった王女は、少しふらついたこちらに手を差し伸べて言った。
「では会議場に戻りましょう」
軽く笑いながらその手を取ったその時の俺は知る由もなかった、歩き出した先にある会議場で待っているこの異世界生活を揺るがす物の存在と体を包む虚脱感の理由を、、、
国王と王女の性が違うのはエル・ドームは代々国王が継ぐ姓だから