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ファンクラブ

間空きました。ごめんなさい

おはようございます、前原仁です。

本日はきちんと登校したいと思います。


何気に俺月曜日の学校サボっちゃったから三連休だったんだよね。それ程期間が空いたわけではないけど、この通学路を歩くのが何処か久し振りに感じてしまうのはどうしてだろうか?


そういえばSGM...男性護衛侍衛官の人はいつ頃に来るのだろうか。必要ないと思っていたけど少し会うのが楽しみだ。美女との出会いなんてワクワクしない方がおかしいだろ?


そんな事を頭に浮かべながら少し蒸し暑い天気に負けず俺は駅に辿り着いた。


「...天使がいる」「...きっと朝から出勤して頑張る私たちへの天からの贈り物ね」「いつ見てもカッコいいなあ...」「無理やりシたい」「...ちょっとあなたストレートすぎない?同意するけど」


今日も今日とて、ホームに立つ俺を噂する声が耳に届く。文脈からしていつもこの時間このホームから乗っている人達だろう。

あと最後のお二方。俺は何時でも構いませ....いや、何でもないです。


とバカな事を俺が考えていると、



「え?いや、え!?あれ前原くん...?」



そんな一言が周りのざわめきから抜け出し小さく空気を揺らしながら俺に到達した。

それを皮切りに、


「...へ!?本当じゃん!前原くんだ!」「前原くんって?」「...あなた知らないの?今月のスポ男の本命中の本命、前原仁くんだよ!愛称は『美天使』で、今ファンクラブの会員数は1万人ほど。もちろん私は所属していて会員ナンバー2658!」「ふっ...私は1470よ」「ぐぬぬ....」


そんな楽しげな会話が辺りから聞こえ出した。どうやら順調に知名度が高まっているようである。


しかしそれより、

...おいおい、ファンクラブの会員数が1万人?多くないか?まだ俺が世間に認知され始めてから3日だぞ?情報化社会の拡散能力侮り難し。愛称に関しては突っ込むまい。


「写真で見た時はカッコよすぎて鼻血噴き出しちゃってスポ男汚しそうになったけど...生はもっとヤバイかもしれない。この鼻をつまむ手を離したらこのホームが血の惨状に早変わりするでしょう」「右に同じく」「...本当に生きてるのかな?実は精巧に作られたロボットでしたとかいうオチじゃないよね?」「確かに嘘かと思うくらいの美貌だけどそれはない....はず」


いや、生きとるわ。


少しずつ騒がしくなって来た。

今の所は大丈夫だけどそのうちパニックになりそうで怖い。


『まもなく1番線に電車が参ります』


すると、良いタイミングで電車が駅に到着した。

よかった、あのままじゃそのうち誰かに声掛けられそうだったからな。いやそれは嬉しい事なんだけど、ここには人が沢山いるから際限がなくなってしまうんだよね。そして抜け出せなくなって学校に遅刻とかなったら目も当てられない。


そそくさと俺は電車に乗り込む。


そしてどの位置に居ようか見定めようと首を巡らせると、見知った顔が3つ。

...この3人とは本当によくこの電車で会う。


「おはようございます先輩方」


集まって何やら皆んなでスマホを覗いている様子の2年生3人組、片岡すみれ先輩、中川楓先輩、田島奈々先輩に声を掛ける。


「...えっ!あ、おはよう仁!」


「...あら〜。おはようございます、前原さん〜」


「ふわわっ!おはっおはよう!」


各々返事を返してくれた。

しかし田島先輩はいつも通りだとして、すみれ先輩と中川先輩の態度は何処と無く違和感がある、気がする。

何か驚いているみたい。


「どうかされました?」


気になることは聞け!が俺の信条。

遠慮することはない!


「あー...えっと、これを見ててね?本人が登場でちょっと驚いちゃっただけなんだ」


そう言ってすみれ先輩がスマホを差し出してくる。

その画面を見てみると、


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「『前原仁様に全てを捧げようの会』これは前原仁様のために、彼に全てを捧げる覚悟のある女達が集う聖なる会合。神が遣わした美天使前原仁様は私達愚民に大いなる加護を授けてくださり、私達愚民はそれをありがたく享受するのだ。集え、女達よ。祈れ、前原仁様に。 現在:10089人」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


....なんだこの危ない宗教団体は。10000人に加護を授けた記憶はないぞ。

もしかしてこれが俺のファンクラブなの?嘘だよね?嘘だと言って欲しい。


「これが前原さんのファンクラブらしいんですよ〜」


OH....そうでしたか。

というか中川先輩そんなに嬉しそうにニコニコしながら言わないで下さい。

ファンクラブの存在はとても嬉しいし、ありがたい。感謝したい。それなのに、なんだこの複雑な気持ちは。


「それでね!」


そんな俺の胸中など露知らず。すみれ先輩は今日も元気一杯に話し出す。


「私達も入ろうかなと思って!」


そうですか。先輩方も俺のファンクラブに入ると。なるほどなるほ....え?


「ちょ、え?ファンクラブに入...って下さるんですか?」


震えそうになる声を抑えつつ恐る恐る問う。

意味が分かってるのですか。あの最悪洗脳されそうな宗教団体に入るということなんですよ!いや、俺のために集まってくれてるわけだからあまり失礼な事は言いたくないんだけど!

それでも声を大にして言いたい。あの団体は怪しすぎる!


「うん!ねっ?」


「私も僭越ながら加入させて頂こうかと思います〜」


「わた、私も入るぞ、うん!」


しかしそんな俺の心の叫びが通じることはなく、この御三方のファンクラブ加入が決まった瞬間であった。


「それは...あ、ありがとうございます」


なんてことだ...嬉しいのに。嬉しいのに、何故素直にお礼が言えないのだろう。この3人からの好意を無下にはできないけど、歓迎することもできない。

俺はどうするのが正解なんだ、誰か教えてくれ。


頬が引きつるのが分かりながら、俺はその後も先輩方との会話に花を咲かせるのだった。





...というかこの3人は俺に全てを捧げる覚悟があるという事、なのか?

それは、うん。とてもヤラしいですね。



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