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影響力

「さっ、腕によりをかけて作らせてもらったわ。是非召し上がってちょうだい」


我が妹(ののお母さん)に促されて俺は豪勢な食事が並ぶ食卓へと座る。

うん、どれもこれも盛り付けや装飾に拘っており見た目もかなり美味しそうだ。人は見かけによらないとはよく言ったもので、まさかののお母さんが料理が得意とは思わなかった。でもそういうギャップありだと思います。


「貴方達もこちらに座りなさい。私はここに座るから」


ののお母さんは娘達に俺の正面の位置に座るように指示し、自らは俺の隣の席に座るという。テーブルは4人席であり、2人と2人が向かい合うように座る形である。

それにしてもこの人は自らの欲望を全く隠そうとしないな。いっそ清々しい。


「...なんでお母さんがお兄ちゃんの隣なの?」


「ずるいずるいっ!」


案の定娘達から苦情が飛ぶ。まあそれはそうなるだろう。


「あら?このテーブル上にある料理の数々は一体誰が作ったのかしら?」


「「うぐっ...」」


しかしそんな逆境もなんのその。ののお母さんは随分と逞しいらしく、澄ました顔でカウンターを惜しげなく決めていく。

これには思わずたじろいでしまう娘達。


....うん、この人かなり大人気ないぞ。中学生と小学生の娘に本気で対抗している。自尊心とか痛まないのだろうか?譲り合いの精神は?日本の古き良き和の心が私欲によってすり潰されているな。


「ふふんっ」


愛すべき娘達にドヤ顔を晒しながら俺の隣へと腰を下ろす母親の図。何と痛ましい光景なのだろうか。


「「うぐぐぐッ....」」


娘達が唸る唸る。唇をギュッと強く結びながら恨みがましそうにののお母さんを見る。当の本人はそんな視線などもろともせず俺を見ながらニコニコとしている。


むむ...ののお母さんには娘達のフォローは期待できないだろう。ならばここは兄である俺が妹達の苦悩を和らげてあげなければ。

....というか、この3人は全員俺の妹で、ののちゃんとねねちゃんは俺の妹であり、俺の妹の娘でもある。何か途轍もなくややこしい事態になってしまっているみたいだ。深く考えると混乱しそうなので取り敢えず放置の方針で。


「ののちゃん、ねねちゃん」


少し微笑みながら話しかけてみる。


「...何ですか」


「...なにー?じんおにいちゃん」


やはりというか何というか、妹達はすっかりと拗ねてしまっているようだ。むすーっとした顔も可愛いけども。

ほら、貴方の所為ですよお母さん。椅子を俺の方に少しずつ近づけている場合じゃないでしょう。

はぁ...やっぱり俺の役目か。


俺は椅子からそっと立ち上がり妹達に歩いて近づく。

ののお母さんが「あっ...」と声を漏らすが、すぐ済むから少し我慢してほしいところだ。


「ごめんね?お母さんも料理作るの頑張ってくれたみたいだから、許してあげて。ね?」


右手でののちゃん、左手でねねちゃんを撫で撫でしながらそう優しく諭す。


「...むぅ、まあお兄ちゃんがそう言うなら仕方ありません...」


ののちゃんは口調は渋々ながらも、視線は泳いでいるし顔は赤いしでとても喜んでいるらしいのがよく分かる。


「ふぉおお....!ふぉおおおおお!」


ねねちゃんは...うん、かなり盛り上がってしまっているようだ。奇声をあげながら自分から頭をぐりぐりと俺の手に擦り付けている。まあお姉ちゃんの方とは違って男に頭を撫でられた経験があまりないのだろうと思う。ののちゃんは普段から結構俺が撫でる頻度高めだし多少なりと耐性がついているのかもしれない。


「ふふっ...じゃあご飯いただこっか」


「はいっ」


「ふおぉおおお...!」


2人にそう声をかけた俺は席に戻り、さっそく食事を楽しみ始めた。



食事を始めて10分ほど経っただろうか。その間俺たちは取り留めもない会話を交わした。意外なことにののお母さんは喋り上手聞き上手でありとても話しやすかった。さらに料理もとても美味しく、内在(外在?)する変態性が凄まじい事を除けば美人な高スペックお母さんで通っていただろう。


と、ここで俺は少し気になっていた事を聞いてみることにした。良い機会だからな。


「ところで皆に聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」


「構わないわよ。私のスリーサイズでよかったかしら?」


「全然いいですよ!」


「いいよ〜!」


三者三様の了承をいただいた俺はさっそく本題に入る。ののお母さんのボケか本気なのか分からない発言はスルーの方向で。


「月刊スポーツ男子に僕が掲載された事は当然知ってると思うんだけど、実際それはどれくらいの影響力を持ってるのかなって思って。芸能人並とまではいかないまでも、そこそこの知名度になっちゃうのかな?」


そう俺が聞きたかった事は前述したとおりのことである。人気全国誌である月刊スポーツ男子に載るという事はどんな意味を表しているのか。もし有名になりすぎて俺の行動が制限されるような事があるなら最悪変装などの手段を考えなければいけないかもしれない。しかし出来ればその手段は取りたくないのだ。街中で、可愛い女の子達が俺を見て顔を赤くするのが好きだからな。あと嬉しい。

だから出来れば自分の顔を隠すような真似はしたくはないのだ。


「...そうねえ。一概には言えないんだけど知名度がかなり高まる事は確かね。.....これを見てくれるかしら?」


先程のふざけた発言からは一転して真面目モードになったののお母さんが、そう言ってスマホを差し出してくる。

...この人は本当に憎めない人種だと思う。


スマホを見てみると、どうやらスイッターのアプリを起動しているようで「スポ男」と検索をかけている。ちなみにスポ男というのは月刊スポーツ男子の略称である。


そこには、


「今月のスポ男買わない奴っているの?」

「スポ男の前原くんカッコよ過ぎません?」

「スポ男の初日売り上げが歴代のトップ5にランクインしたらしい」

「今月号のスポ男は絶対買ったほうがいい!!見たら分かる!」

「スポ男の仁くんのファングループを作りたいと思います。入りたい人は私まで連絡下さい」


などといったスイートが羅列されていた。今俺が見てる間にもスイートはされているらしく、どんどん新しく更新されていく。


...これは、正直予想以上かもしれない。此処までとは。自分がこんな大勢の人に見られたなんて少し恥ずかしいな。


「うわぁすごい人気」


「いっぱい、じんおにいちゃんの事言ってるよ?」


ののちゃんとねねちゃんも俺の横からスマホを覗き込み驚いたように又感心したようにそう言う。


「まあこんなところよ。お兄ちゃんはこれからグッと人気が出るでしょうね。注意事項としては、狂った変態に襲われないようにあまり1人では出歩かないことかしら?何なら私が護衛しましょうか?」


そう狂った変態が助言してくれる。

しかしそれは心配ご無用!狂った変態が常に近くにいたら気が休まらな.....じゃなくて、俺の体のスペックがあれば変質者の撃退など容易い。


「そうですね、少し考えてみます。あと護衛は結構です」


曖昧に返しておく。この人が変態とはいえちゃんと此方を気遣ってくれての提案だ、ばっさり切り捨てるのはダメだろう。護衛の件はばっさりと切り捨てさせてもらうが。


まあ何にせよ全く今まで通りに過ごすというわけにもいかないだろう。何かしらの対策は事前にしておくのが吉。

帰ったら家族の皆と少し話してみるかな。




「今日は美味しいご飯をありがとうございました。またお邪魔しても宜しいですか?」


あの後2時間ほど家で寛がせてもらった俺は今玄関にいて帰るところである。


「私も素敵な時間を過ごさせてもらったわ。ええいいわよ。お兄ちゃんがお邪魔なんてとんでもないわ、むしろ私達が邪魔なくらいよ」


....??何を言っているのかよく分からん。

ああ、変態の思考を理解しようとする事が間違いなのか。そうなのか。


「じんおにいちゃん来てくれてありがとう!じんおにいちゃんが居たこの匂いの残滓を逃さないように戸締りはちゃんとしておくからね!」


....ねねちゃん難しい言葉知ってるんだね?薄々思ってたけどこの子お母さんの血を色濃く継いでないか?変態の兆候が垣間見えるぞ。


「はぁ....じゃあ私はお兄ちゃんを駅まで送るから」


そんな2人に疲れたように溜息をつくののちゃん。苦労してるんだなあ。


「ありがとう、その心遣いだけ貰っておくよ。僕は1人で大丈夫だから、ね?ののちゃんは料理の後片付けを手伝ってあげて」


まあ女の子に男である俺を送らせるわけにはいかない。有難いことだが此処は辞退させて頂こう。


「えっ...でも...」


ののちゃんはとても不安気な顔になる。恐らく先程話していた狂った変態に襲われるといった懸念事項を思い出しているのだろう。その気遣いはとても嬉しい。だが俺は大丈夫である。寧ろご褒美....じゃなくて、特に心配はしていない。


その後渋るののちゃん達を時間をかけて説き伏せた俺は、これからの身の振る舞いについて思考を巡らせながら帰路に就くのだった。



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