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取材


「取材...ですか?」


俺は今少し幼い顔をしている女性に取材を申し込まれている。


なぜ、こんなことになっているかというと少し時は遡る。



ーーーーーーーーーーーーーー




場所は選手控え室。


「ふぅ.....」


俺は息を吐いた。


俺は久しぶりの大会で少し疲れていたし優勝できたことがとても嬉しかったのだが、何より期待に報いることができたことでかなり安心していた。カッコつけて家族や莉央ちゃん、美沙を呼んだし、右京部長にもかなり期待されていた。彼女たちの期待に添えたことが何より嬉しかった。


「....前原」


「仁っ」




弓道の道具を片付けているとこちらに近づいてくる女の子が2人。右京部長とすみれ先輩だ。


「お疲れ様です、部長、すみれ先輩。優勝できて本当によかったです」


「うんうんっ!ありがとう〜。ってそれより!仁凄すぎ!なにあれ、12本全部的中って〜。今日絶好調じゃん!かっこよかったよぉ〜」


「えへへ、ありがとうございます。上手く大会に合わせて調子がハマってくれたみたいです」


まあ意図的にハメたのだが、謙遜は美徳ってね。行き過ぎた謙遜はただの嫌みだが、これは大丈夫だろう。


「...前原」


「はい?どうしました部長」


何か神妙そうな面持ち。なんだろう


「入場直前の、あれは何だ?前原が深呼吸して目を閉じたかと思えば次の瞬間雰囲気が変わった」


あぁ〜見られてしまっていたか。いや、別に見られて困る秘伝の技とかではないからいいんだが。


「あ、はい。あれは僕のルーティーンです」


「ルーティーン?」


「そうです。僕はあの動作をすることで緊張を和らげ、集中できるようになるんですよ」


「....そうか。なるほど....」


「....部長?」


「あ、いや何でもない。...とにかく今日はよくやってくれた前原」


「はい、ありがとうございます」


俺はペコリとお辞儀する。


「本当に凄かった前原きゅん...」「むちゃくちゃかっこよかったぁ....」「....私ちょっと濡れちゃった」「「え?あんたも」」


春蘭の弓道部のみんなも褒めてくれているようだ。...褒めてくれてるんだよな?



「ちょ、ちょっといいかなそこの君!」



後片付けを終え、さあ帰ろうと思った時にその女性は俺の元へ訪れた。


「?はい、なんでしょう」


「よ、よかったら何だけど、取材を!取材をさせてくれないかな!」


....なんですと?



「取材...ですか?」


こうして冒頭の場面へ戻るわけだ。



しかし、取材と来たか...。まあいつかこうなるとは思っていた。

聞けば、前原仁くんは中学までほとんど外出することはなく学校もあまり行かなかったらしい。それゆえにこれほどまでの顔面偏差値を誇りながら、認知度は低かったのだ。

しかし、そこで現れる俺というイレギュラー。俺こと前原仁は自由に行動する。有名になってしまうのも時間の問題だと思っていた。


「何の取材ですか?」


「あ、え、興味持ってくれたっ?」


「まあ、話を聞いてからですかね」


俺が返事をすると少しライターさん?は驚きの表情を浮かべた。なんだ?


「あ、ありがとう!よかったあ。いつも大体は男の子に取材断られるものだから、今回も冷たくあしらわれるのかと....。加えてこんな美少年だし....」


あぁ、それで少し驚いてたのか。自分で話しかけて自分で驚くとは。セルフびっくりか。恐らく今までも当たって砕けろ方式で色んな男の子に取材を申し込んで来たんだろうなあ...。涙ぐましい。


「それで、どんな取材ですか?」


「あ、ああごめんね?とりあえず、自己紹介からするね」


そう言って名刺を渡してくる。


「....足立蘭(あだちらん)さん。スポーツライター?月刊スポーツ男子....」


とりあえず確認の意味も込めて声に出して読んでみる。


「はい!改めて、よろしく!スポーツライターの足立蘭だよ!うちの本はスポーツや武道をしているかっこいい男子を載せているんだよ」


「よろしくお願いします。前原仁です」


「さっそく本題なんだけど、前原君にはうちの本に載ってほしい!そして、私は君さえ良ければ特集を組ませてもらおうかと思ってるんだよ。『美しすぎる弓道男子』ってね」


....なるほど。美しすぎる何とかって言うのは前世でも結構見た。この世界でもあるんだな...。


「そ、それでどうかな?取材受けてくれるかな...?」


ううむ。足立さんは小動物的可愛らしさがある女性だ。こんな女性に頼まれると男なら断れないと思うが....。

それに、有名人みたいでちょっと嬉しいしっ!


「僕は全然構いませんが....」


チラッと右京部長を見る。


「....ああ。本人はこう言っていますが、次は学校の許可を取らせてください。取材の話は私から通しておきます」


意を汲み取ってくれたみたいだ。さすが。


「えっと、あなたは?」


「申し遅れました、春蘭高校弓道部部長の右京雫と申します。以後お見知り置きを」


「あっ、部長さんか!私はスポーツライターの足立蘭だよ。よろしくね」



その後連絡先を交換し、学校の許可が降りたら連絡する手筈となった。



しかし、ついに俺が取材かぁ.....。

美しすぎる弓道男子、ねえ....。

ふふっ、いいな!


俺はニヤニヤする顔を腕で隠しながら、家族と莉央ちゃん、美沙が待ってくれているであろう武道館出入り口に向かうのだった。

また更新少し停止します。ごめんなさい

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