夏!!
かなりのハイテンションです。
あと、主人公の彼が哀れです(笑)
それは暑い……いや、熱い季節。
人々は後の環境のことなどお構いなく“冷”を求めた。
その結果として地球の温度は上がり続け、人々は更なる“冷”を求める。
まさに悪循環である。
「つまり私が言いたいのはですね。夏休みも後1日! なのに高校生の夏休みらしいことを全くしてないということなのです。ちなみに宿題も全く終わってません!」
ある町の、ある家の一室で電話を片手に熱く語っている少女がいた。
『なぁ、涼子“流れ”って知ってるか?』
電話口の男は突然かかってきた電話の相手に諭すような口調で言った。
「将くんは何を言ってるですか? 流石の私でもそれくらい知ってますよ。」
ちなみにフルネームは平賀 将彦です。
ついでに言っとくと涼子のフルネームは片瀬 涼子です。
『じゃあ文頭のモノローグを存在しなかったかのように無視するな。なんの意味も無くなってるじゃねぇか』
「あらあら。では、こんな会話が成り立つということで良しとしましょう。しかし、先輩にその口の聞き方はいただけませんよ」
この電話女…基、涼子は何を間違ったのか俺の1年先輩なのだ。しかし、
『んなもん今更だろ』
出会ってこの方 涼子に敬語なんて使ったことねぇな。そして、なんで年上の涼子が年下の俺に敬語を使っているのかというと本人いわく『自分でも解りませんが、癖なのかもしれませんね〜♪』とのことだ。
「酷い人ですねぇ…。まぁいいですけど」
『んで? 結局なんの用なんだ? 無いなら切るぞ。あるなら3秒以内に言え』
いーち
「えっ!?」
にぃーい
「だからその──」
さーん
『はい、時間切れ』
“ブチッ”
“つーつーつー……”
「切れた!? 酷いです!」
“ピッピッポッ”
・・・
“トゥルルルルル〜♪”
・・・
“ブチッ”
「取りもせずに切るなんて酷いです!」
“ピッポッピッ”
・・・
“ドゥロロロロロ〜♪”
『なんだ!?今の音は!?』
「出ましたねぇ〜♪それでですね、私の話しを聞いて下さい!」
切られる前にさっさと用件を言えばよかったのに。
『…手短にな』
「えーと…要約すると、明日一緒に遊びませんか? という“でぇと”のお誘いです♪」
『ヤだ。以上』
“ブチッ”
“つーつーつー……”
・・・
“ピッピッパッ”
“バッキュ〜ン♪”
『なんで毎回 着信音が変わるんだ!?』
「それは乙女の秘密です〜♪」
乙女関係ねぇ〜…
『で、なんだよ』
めんどくせぇなぁ…
「だ・か・ら! 明日 私と遊びましょう!」
『誰と何処で何をするって?』
かなりどうでもいいな。
「明日! 私と!! 遊びましょう!!!」
『なんで?』
「私が遊びたいからです」
そんな理由かよ。
『他誘えよ。別に俺じゃないといけない理由がないだろ』
「あるんです! 大ありです!」
ほ〜う、じゃあ、
『是非とも聞かせて貰おうか』
「暇な人が将くんしかいません!」
電話切りてぇ〜
切っても無駄だろうからもうしねぇけど。
『一人で遊べ!』
「海に行きましょう! 海!」
聞いてねぇ〜
「あっ! でも、もう この時期だとクラゲがいっぱいですね〜。クラゲを狩りまくるのもいいですねぇ〜♪ん〜…でも将くんも いるからプールにしましょう! 穴場があるんですよ〜」
『何が悲しくてアンタの三段腹なんか見にゃあならんのだ』
「将くん言いましたねぇ〜。セクハラですよ〜。これでも私はあれですよ! あれ!」
“あれ”?
『そう! あれです! “キュッ・キュッ・ギュッ”ってやつです!』
それってガッリガリじゃね!?
「“ボンッ・ボンッ・ボンッ”の間違いじゃないのか?」
『ツッコミもしないなんて失礼な人ですねぇ! 私の“ないすばでぇ〜”を見て鼻血だすな! ですよ〜♪じゃあ明日迎えに行きますので発進準備して待ってて下さいね』
“ブチッ”
“つーつーつー……”
・・・
「さて、明日はどうやって逃げようかな」
将彦は涼子から逃げる算段を始めた。
──翌朝──
「結局何も考えつかなかった…」
幾つか考えついたのだが、どれもこれも涼子には通用しそうになかった。何が通用するのか聞きたくなったぐらいだ。
なので、諦めて出来る限り楽しむことに決定した。
「将彦ー」
その時、母の呼ぶ声が。
どうやら戦いの時来たりのようだ。
「だぁれ? あの娘。彼女? 可愛い娘じゃないのよ〜♪早く出てあげなさい」
やらしい顔しやがって…。
「言っとくけど彼女とかじゃないからな」
「恥ずかしがらなくてもいいわよぉ♪」
こりゃ言っても無駄だな。
「はいはい、じゃあ行ってくる」
無駄なのでほっといてさっさと行くことにした。気が進まないが。
“ガチャ”
「遅いですよ!」
・・・
“パタン”
「どーして閉めるんですか!」
「なんか無性に逃げたくなった。後悔はしていない」
涼子の顔を見た瞬間に謎の逃走心に駆られ、ドアを閉めてしまった。それだけです。他に何があろうか、いや、無い! 反語!
「逃げても地獄の果てまで追い掛けてあげますからね〜♪」
ホントにやりそうで恐い…。
「はいはい。さっさと行こうぜ。麦藁少女」
「誰が麦藁少女ですか!」
麦藁帽子を被っていたから麦藁少女だったのだがお気に召さなかったらしい。
「じゃあワンピース少女で」
「普通に呼んで下さい!」
ワンピース少女もお気に召さなかったらしい。
麦藁でワンピースといえば…
・・・
ゴムゴ……
…言わないことにしよう。
「はいはい。とにかく さっさと行こうぜ」
先に歩き出したが、よく考えたら何処に行くか聞いていなかった。
「なんでそんなにつれないんですか!」
涼子が後ろから着いてきているので間違ってはいないのだろう。
「さっきから怒ってばっかだな。皴が増えるぞ?」
「誰が怒らせてると思ってるんですか!」
とりあえず今は肌は大丈夫のようだ。
「スマンスマン。そんなに怒るなよ。せっかくなんだし楽しく行こうぜ。な?」
こんなクソ暑い日に ただ涼子と二人で何処かに出掛けるのなら絶対的にお断りだが、場所がプールとくれば話しは別だ。プールなんて誘われでもしないと行く気がしねぇし。ついさっき出来る限り楽しむって決めたし。
「そうですね♪今日は将くんで遊ぶって決めてますしね」
涼子は将彦の横に並びながらニコニコして歩を進めている。
将彦にはそのニコニコが怖くて仕方ないのだが。
「ちょっと待て! 将くん“で”ってなんだ“で”って! “と”じゃないのか
よ!」
「冗談ですよ♪そんなに必死になってぇ〜可愛いですねぇ〜♪」
一発殴ったろか…
「さっさと行くんでしょ? 行きましょ」
と言って全く逆方向に歩き出した。
こっちじゃなかったの!?
───
「とーちゃーく♪あっ! 将くん! シャワーは ちゃんと浴びないとダメですよ
!」
細かいなぁ…
「早く入ろうぜ」
「はしゃいじゃってぇ〜♪子供ですねぇ〜♪」
別にはしゃいでるわけではないのだが、とにかく暑いので一秒でも早く入りたかった。
「じゃあ着替えたら変な看板の前に集合ですよ〜」
「変な看板って…もういねぇ…」
・・・
「まぁ…行けば判るってことか」
───
着替えてるときに気付いたのだがロッカールームは かなり広いのに殆ど鍵がかかっていなかった。それに、着替えているとプールの方から“キャーキャー”と黄色い声が聞こえてくるものだが、此処のプールは他に比べて静かなものだ。
「これは確かに穴場だな」
───
「遅いですよ!」
更衣を済ませた将彦は変な看板とやらを探していたら看板より先に涼子を見つけた。俺は女のことは詳しくないのでよく解らんが、自分で言うだけあって結構スタイルは良い方に入るのではないだろうか。
あと、5・6分程しか経ってないと思うのだが…5分は遅い内に入るのか?
「あんまり遅いんで いっぱいナンパされちゃいましたよ!」
たった5分で いっぱいナンパされるのも早いが、5分でターゲットを定めるのも早くねぇか?
てか、そのままナンパ男に着いて行ってくれればよかったのに。
「今とっても失礼なこと考えましたね?」
何でわかったんだ!?
「なんでって、顔に書いてますよ♪」
だから何で判るんだ!?
「私をナメたらアカンのですよぉ〜♪」
怖い…
「てか、アンタをナンパするなんて…そいつら趣味悪ぃなぁ…。見る目が無いとも言えるが」
「怒りますよ♪」
涼子は顔は素敵笑顔なのだが、拳を硬く握り、プルプルと震わせている。
「ごめんなさい」
危険を感じたら直ぐに鎮火。これ将彦流。
「んで、大丈夫だったのか? ナンパ野郎に何かされなかったか?」
此処に平然と立ってるってことは何もなかったと思うけど、念のため。
「心配してくれるんですか? 発泡スチロールより軽いナンパ男なんか蹴り飛ばしてあげました♪」
じゃあ、さっきから ちらちら俺の視界に入ってくる3・4人の死体らしきものはやっぱりナンパ野郎どもか…
しかも、全員“ある一ヶ所”を押さえている。
・・・
“あれ”か?“あれ”を蹴り飛ばしたのか…?
・・・
恐ろしい…
「ささっ! 泳ぎましょう! 勝負しましょう!」
怒らせたらアイツらの二の舞になる…
「心配しなくても将くんに手荒なことはしませんよ♪それより! 勝負に負けたらお昼奢りですよ♪とぅ!」
涼子は掛け声と共にプールに飛び込んだ。(良い子の皆も悪い子の皆も真似しちゃいかんぞ!)
そして、監視員の人に怒られた。
───
「勝ったー♪」
正直言って涼子はそんなに速くなかった。
そのくせ何で負けたんだって?
手ぇ抜いたからに決まってるだろ?
そしたら何故 俺が手を抜いたかって疑問が浮かんでくるな。そこは、俺が涼子に奢られるのが嫌だからだ。涼子に借りを作るのは後々に厄介なことになるからな。
「でも、将くん! 手抜きは良くないですよ!」
バレてた!?
「やるならもうちょっと上手くやって下さいよ。ちょっと凹みますよ」
「…ゴムン」
「一発殴ってやりましょうか? まぁ将くんが奢ってくれるなら有り難くゴチになりますけど〜」
───
昼メシを食い終わり、いきなりプールに投げ込まれた。監視員の人に また怒られた。
「いけ〜将くん号〜♪」
もうダメだ……
何がかって? 物凄い感の鋭い人は解ってると思うけど、今 俺は涼子を背中に乗せて泳がさせられてます。
・・・
何故だ…
てか、重い…
あぁ…沈む…
“ゴボゴボゴボ〜”
「あれ? 将くん? どうしたんですか? 潜水艦ですか?」
・・・
返事がない。ただの土左衛門のようだ。
・・・
「キャー! 将くんが死んでしまいましたー! プリンあげますから死なないで下さい!」
将彦の命=プリン(?)
「こんな時は心臓マッサージですか!?」
涼子はがむしゃらに将彦の腹を殴った。
「ゴブッ!!」
将彦は息を吹き返した。しかし、瀕死のダメージ。
「涼子! 殺す気か!! せっかく綺麗な川を見つけたのに!!」
「三途の川の手前まで逝ってたんですか!?」
・・・
「今ならまだ見に行けそうだ…」
将彦は虚ろな眼をしてプールを眺めている。
「大丈夫ですか!?」
涼子は将彦の肩を掴んで激しく前後に揺すった。
「あぁぁあぁあ涼子止めろぉぉお〜おぉぉおぁぁぉあ〜!」
将彦は激しく揺すられ過ぎたせいで目を回している。
「…今度こそ大丈夫そうですね。無事でなによりです。将くんが死んじゃったら私どうしょうかと…」
「目が回る〜…」
「聞いてませんね…」
・・・
「まぁいいです。今日はもう帰りましょう」
「もう帰るのか?」
まだ夜には時間があるが?
「天気予報で今日は夕立が降るって言ってましたから、そろそろ帰った方がいいです」
「そうか。じゃあ、さっさと帰った方がいいな」
───
「今日は楽しかったですか?」
涼子と将彦の二人はプール鞄を片手に、曇り始めてきた空を見て少し歩みを速めた。
「ん〜まぁ、なんか色々あったけど…まぁ楽しかったな」
「楽しかったと言ってもらえたなら良かったです♪」
そうこう言っているうちに将彦の家に到着した。
「そうか。ちょっとここで待ってろ」
涼子を玄関前に待たせて将彦は家に入っていった。
「なんでしょうか?何かプレゼントでもくれるんですかねぇ〜♪」
“ガチャ”
「待たせた。ほれ、傘。持ってけよ」
空を見ると、さっきよりどんよりした天気になっていた。
「ありがとうございます」
「おう。じゃあ、気ぃつけて帰れよ」
「はい。では、また学校で♪」
そう言い残して傘を右手に しっかり握って帰って行った。
───
「よく晴れてますねぇ〜♪雨が降った時は傘があって よかったです♪」
夜、外ではバケツをひっくり返した様な雨も止み、月が顔を覗かせていた。
「それにしても、今日は楽しかったですね〜♪」
そんな月明かりに照らされた部屋で涼子はベッドに寝転び、今日という夏休み最後の日を思い出していた。
「将くんが沈んだ時は焦りました」
夏休みだというのにバイトをするわけでもなく、だからといって何をするわけでもなく過ごした。それもこれも将彦の予定が空く日を窺っていたためである。
「今度は将くんと何をしましょうかねぇ〜♪」
涼子は次の計画を立て始めた。
「さて、何にしましょうか…」
・・・
「ん〜…」
「2学期…次の長期休暇は春休み…」
・・・
「ぶんか…」
・・・
「文化祭!!」
次のターゲット決定。
「将くんもクラスの出し物があるだろうし…学年も違うから一緒に回るのも無理っぽいですね…」
・・・
「出し物と言えば部活がありました!! 部活を創りましょう!!」
涼子は早速ノートを取り出し、部活を創るための計画を開始した。
「何部にしましょうかねぇ〜♪」
涼子の頭の中は部活設立で いっぱいになっている。
───
そして新学期の朝が来た。
「よーし!! 完璧です!」
涼子は徹夜で満足のいく計画を作成した。
しかし、ただ一つだけ問題が…
「あぁーー!!!! 宿題忘れてましたーーー!!!!」
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