お隣さん!?
普通の日だった。
爽やかな風が吹いているわけでもなく、強い日差しが照りつけるわけでもなく、ぐずついた天気でもない。
暑くも寒くもない、そんな普通の日の午後だった。
聡子は普通の日のいつも通りのキャンパスを何があったわけでもなく、憂鬱な気分で歩く。
先日彼が怪我をしたこともあるのだろうが、なんとなく楽しい気分ではなかった。
あれから当の彼とは会っていない。
もちろんお礼をしなければいけないが、連絡先も知らない。
「はぁ…どこにいるんだろ」
「誰が?」
「あー、そーいえば名前知らないわ」
「僕だったら外山だよ」
「へー、私の知り合いも外山だわぁ……あ?」
いつの間にか独り言に返事が返ってきていた。
左を見る
いつものキャンパス
右を見る
いつものキャンパス
上を見る
イケメン
あのときの彼が上から覗いていた。
「へー、外山っていうんだ、私は内藤だよ」
「よろしくねー、内藤さん」
「この前はありがとう」
「いえいえ、どういたしまして」
「…」
「…」
会話が終わった。
楽しそうに話す男女が追い抜いていく。
「(どーやったら会話が…)」
「内藤さん授業終わったの?」
「うん、今日はもうないよ」
「僕もないし、一緒に帰らない?」
「ふぇ?」
会話が続きそうにない相手と帰宅するクエストをクリアする自信はない。
とはいえ、ここで適当な言い訳をするのも感じが悪い
「前も言ったけど家近いんだよ…ね?」
「(ね?じゃねーよ)いいよ…」
帰り道は彼が積極的に話しかけてくれたが、結局「あぁ…うん」しか返せなかった。
アパートに向かって歩く
アパートに着く
鍵を開ける
隣にまだ彼がいる?
「え、上がってくんですか?」
「いや、僕んち隣だから」
「そっかー、隣ですか…あ?」
「うん、じゃあねー」
そう言うと彼は隣の部屋の鍵を開けて入っていった。
聡子は自分の部屋のドアノブを掴んだまま唖然としていた。
勢いよく玄関に入り、カバンを投げ捨て、ベッドにダイブする
「はぁ…自分の部屋に上げる必要なかったやーん」
そのまま枕に顔を埋め、延々と寝返りをうっていた。
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