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きらトキ~それは煌きよりも儚いヒトトキ~  作者: のるん・くりすとふあ
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ぷろろーぐ

 遠い遠いと言うには誇張しすぎな十年くらい前に、妖怪が跋扈する幻妖界と人間たちが跋扈する人間界が繋がってしまった。

 こちらでの神隠しされた者と、向こうから飛ばされたモノがそれ以前から多く居たらしい。

 人の世界と妖怪の世界が繋がったら、衝突があるかと思いきやそんなことは無く。

 向こう側もそこそここちらの事情を知っていて、こちら側にも人間に擬態した者がいるので、交流は案外簡単に進んだとか。

 それから時は流れて現在の日本。埼玉県。大宮市の詩杜宅にて。

 

「う~~~。やっほーーーー☆」

 パリィィィィン。

 アクション映画のような窓割り登場で、何者かが僕、詩杜清牙うたもりせいがの部屋に突っ込んできた。

 なんぞ!?敵襲か!!と驚いて起きてみれば、

「おっはよーう清牙。今日も元気ー?」

 狐耳をぴょこぴょこ動かながら、肩まで届く栗色の髪を緩く揺らて、布団の上から仁王立ちポーズの幽灯ゆうひが俺を見下ろしていた。

「朝というか、それ以外でも窓は壊して入ってくるなと言っているだろう」

 布団の上にガラスが散らばっていて、掃除するのが面倒そうではないか。

「安心して、妖術だから……ほい、ぽんっと」

 幽灯が両手で、一度柏を打つと。

 割れた窓や、飛び散ったガラス片、そして、今喋っていた幽灯も煙と共に何事も無かったように消えていく。

 なんだよ。ただの僕の妄想かって?狐耳の女の子が出てきている時点でおかしいと思ったって?ところがどっこいそうではなく。

 ドタタタタタ!

「ふったたび、おっはよーう。どう?どう?昔のアクション映画を昨日見て思いついたのだけれど、よかった?」

 はい。やって来ました『本体』がドンと。

 妖狐の美房幽灯みふさゆうひが元気よくやってきた。

「僕は小心者なんだから、こういう起し方はやめてくれといったはずだよ」

「私も本当はね。漫画みたいに手が届いちゃうくらいの窓と窓が接している状況だったらこういうことせずに済んだの。だけどね。見てよ!」

 シャアア!と勢いよくカーテンを開ける。

「きちんと建築基準法に定められてできた我が家と清牙の家は、1メートル以上も離れているんだよ。飛び越えて行くなんてはしたない真似できないよ」

「樹を垂直に駆け上がって、カブト虫とってはしゃいでなかったっけ?」

「やだなぁ。私だって高校生だよ。そんなことしたらスカートの中が下から見られちゃうじゃない」

 恥ずかしそうに、スカートを抑える仕草をする目の前の狐娘。

 はて?つい先週の日曜日の話なのだが。

「わかったわかった。僕はとりあえず着替えて下に行くから、君は降りて待っていてくれ」

 そう彼女に告げたが動く気配が無い。

「ん?どうした」

「幽灯」

 不機嫌そうに自分の名前を呟く。

「んあ?」

「君じゃなくて、幽灯だよ」

 凄く不満そうに頬を膨らまして、おまけにジト目で見てくる。

「何、面倒臭い女みたいな台詞を言っているんだよ。僕はこれから着替える……」

「ひっどーい!私、清牙に名前で呼ばれないの軽くトラウマなんだよ!」

「それは子供の頃だろうに」

「他の子とは名前で呼び合っていて、私だけ君とかで言われて寂しかったんだよ!ムキー」

 その時は何か君っていう言い方がかっこよく感じて、つい使ってしまっていた。まさか、それが地雷になってしまったとは恐ろしや。


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