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駄菓子屋さんパレット  作者: 明石竜


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10/11

最終話 昔遊び同好会、本領発揮

七月十六日、金曜日。

今日は学期末大掃除。教室も、床にワックスをかけてピカピカに磨く。

「いつも思うけど、ワックスって牛乳にしか見えへんな」

 竹乃はしゃがみこんで、バケツの中をじっと眺めていた。

「しーちゃん、みっちゃん。たけちゃんはね、小学生の頃、ワックスをお口に入れて、先生にものすごく叱られたことがあるんだよ」

 果歩は嬉しそうに伝えた。

「タケノンったら、食いしん坊さんやな」

 栞は大声で笑い出した。

「気持ちは、分からなくもないかもです」

 光子も思わずくすっと笑ってしまう。

「かっ、果歩ぉ、その黒歴史あんまり言わんとってな。思い出したくない恥ずかしい思い出やねん」

 竹乃の頬はほんのりピンクに染まる。

「おもらししたこと言われた仕返しだよ」

 果歩は竹乃に向かってあっかんべーのポーズをとった。

「もう、果歩ったら、かわいいな」

 竹乃はにこにこ微笑む。癒されていた。

「あの、みなさんに、すぐそこの楠羽小学校の校長先生から招待状が届いているのよ。今日の午後行われる全校集会で、昔の遊びを紹介してもらえないかって」

 楞野先生から唐突にこんなことを伝えられ、

「マジですか? ワタシ、嬉しいけど、ちょっと恥ずかしいな」

 栞は思わず大声を出した。

「あの子たちのおる学校やな。うち、大勢の前に出たら、固まってまうかも」

「光栄なことですね。わたし、頑張りますよ」

「私も頑張らなきゃ。ひょっとしたら後輩になるかもしれないし」

 四人とも不満な気持ちがありながらも、依頼を快く引き受けた。


午後一時半頃。楠羽小学校の体育館。

「本日は楠羽女子中・高等学校の昔遊び同好会のみなさんにお越しいただきました。それではどうぞ」

 六〇歳くらいの校長先生はマイクを使って穏やかな口調で申された。四人は緊張した足取りで舞台裏から演台に向かった。

「えっと、楠羽小の全校児童のみなさん、うっ、うちは、同好会長の武貞竹乃と言います。本日はよろしくね」

 会長の竹乃が代表してご挨拶。

四人は六百名近い全校児童の目の前で、昔遊びの定番ともいえる竹とんぼやけん玉、糸巻きゴマ、だるま落としなどを披露してあげた。

竹乃は緊張しながらも見事失敗することなく披露したけん玉の大技『世界一周』は特に大好評だったようで、拍手がなかなか鳴り止まなかったほどだ。 

全校集会が終わったあと、四人は校長室へ呼ばれた。

「この度、貴女がたを本校へお招きしようと思ったのは、楠羽高には昔遊び同好会というユニークな同好会があると本校の児童たちからお聞きしたからなのです。今時の若い子たちは、生まれた頃からインターネットや携帯ゲーム機といったものに慣れ親しんでいることもあり、こういった遊びには触れる機会がほとんどないことでしょう。そんな時代の中、昔の遊びをご愛好しておられる貴女方は、わたくしの目にたいへん素晴らしく映っております。貴女がたの本日の公演は、きっと児童たちの心に響くものを残したと思いますよ。本日はお忙しい中ご来校いただき、誠にありがとうございました」

 校長先生は四人にしみじみと述べ、感謝の意を示された。

「いえいえ。うちら、それほど大した活動はしてないのにご招待して下さって、こちらこそ恐縮しています」

 竹乃は照れくさそうに言いながらも、心の中ではとても嬉しがっていた。

 

夕方、帰り道。

「私、竹とんぼも上手く飛ばせなくて恥ずかしい思いしたけど、すごく楽しかった」

「うちもすんごいガチガチやったけど、またやりたいなって思ったよ。小学生たちにあんなに喜んでもらえてめっちゃ嬉しかったし。それにしても光子、だるま落としとコマ回し、ものすごい上手かったな。うちよりも上手いし。いつ練習したん?」

「わたし、今までそういう遊びはほとんどやったことはないけど、慣性の法則とか、ジャイロ効果とか、遠心力のことを頭の中で意識しながら、理論的にうまくいくような方法を使ってみたの」

「昔遊びにも物理学か。全部勘でやっとううちとは違うな」

「ワタシも物理学応用してみたんやけど、実践では上手くいかんかった。ミツリンにはいろいろ適わないや」

 栞は尊敬の眼差しで光子のお顔を眺める。

「もっ、もう栞ちゃん。恥ずかしいな……」

 光子は頬をほんのり夕焼け色に染めた。

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