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作者: 村井巧

俺んちにあいつが来たのはちょうど小学5年生の時。そのころさ、学校の中で結構仲いい奴がペットを買い始めたのよ。まぁそのペットはインコなんだけどさ。それをさ、すげー俺に自慢してくんの。それでさなんか悔しくなっちゃってさ俺も親にペットがほしいって頼んだのね。別にインコが飼いたかった訳じゃないんだけどね。飼いたかったのは犬。そのころ学校の中でも犬飼ってる奴なんかいなくて、多分飼ったらちょっと自慢できるなー みたいな不純な動機で親に頼み込んだのをよく覚えてる。犬種は家族みんな小型犬がいいって言うんだけどさ、俺からしたら犬飼うのに小型犬なんてありえないわけ。飼うのは当然大きい犬。特に俺が飼いたかったのはゴールデンレトリバー。昔近所のゴールデンを触ったのを覚えてて多分飼ってみたかったんだろうね。実際ゴールデン以外の犬種を知ってたかどうかも怪しいところだけど。でさ、親にすごい頼み込んでさ ついに俺の誕生日プレゼントで飼っていいってことになったのよ。条件は俺が世話をすること。まぁ守れなかったんだけど。でもさ俺んちの親って腰痛持ちで、犬があまりに大きく成長すると面倒見れないなんて言い出すわけ。大型犬飼うのに何言ってんだろうね。子犬から飼うとどのくらい成長するか分からないから、ある程度成長した1〜2歳のゴールデンを飼おうってことで話がまとまったの。本当は子犬から飼いたかったけど俺の立場からそんなこと言えないよね。でさ普通のペットショップ行ってもさ子犬しか売ってないんだよね。だから事情があって保健所行きになりそうな犬を引き取ろうってことになったのね。そこでネットで探すわけ。そしたらあいつと出会ったの。7月7日生まれのナナ2歳雌に。七月七日生まれだからナナってなんか笑っちゃうよね。なんかそいつ前の主人が老人でアパートの一室で孤独死しちゃってさ、そいつだけ取り残されちゃったんだって。前の主人が老人だから散歩とかもあんまり行かないし、外に出て他の人間や犬とも接触して来なかったからすごい人見知りなんだって。そんでおとなしくていい子。顔もさゴールデンにしては目がクリクリしてて結構可愛いの。だからさこいつに決めたわけよ。我が家のワンコは。初顔合わせはさどっかの公園でやったの。ブリーダーの人に連れられてきたそいつは写真より可愛かったね。でさ俺も初めて手綱みたいな奴をもつわけよ。おれは男だったから散歩も余裕だろって思ってたらさ、そいつすごい引く力がつよいの。もうビックリしちゃってさ。そん時毎日散歩は無理だなって悟ったね。そういう流れでナナが家に来ることは決まったんだけど、やっぱすごい人見知りなわけよ。もう家に来ても全然泣かないし動かないの。言いようにいえばすごいおとなしくていい子なんだけど、実際はただの臆病なだけなんだよね。小5のおれからしたらさ、もう犬とめちゃくちゃに遊びたいわけ。もうそのころのおれというか子供全般に言えるかもしれないけど、犬を犬としてみないんだよね。もう同じ目線の友達みたいな感覚。だから男の子が好きな子にちょっかい出すみたいにおれはナナにすごいちょっかいを出し始めるわけね。ナナの顔を弄ったり頭の毛をはさみでちょっと切ってみたり。でもナナは頑なに無反応でさ。なんか嫌になっちゃうんだよね。でも数ある悪戯の中にナナに電動マッサージを当ててみるっていうのがあって、当ててみたらナナはおしっこ漏らしちゃったの。電動マッサージが怖かったんだろうね。今思えばすごい可哀想なことしたと思うけど、そのころの俺には罪悪感はあったけどナナがなにか反応してくれたのがすごい嬉しかったんだよね。食べちゃいたいくらい可愛いってよく言うけど文字通りおれはナナをよく噛んでたんだよね。別に美味しくはないんだけどナナがそこにいるってすごい感じられるんだよね。でもさ中学生に上がっていつものようにナナを噛んでてさ。よーくみたら毛穴が充血して血がでてたの。血が出るってことはすごい痛いってことじゃん。なのにナナは噛んでもずっと無反応だったからさ。すごい我慢してたんだなぁって思っちゃったんだよね。おれ何してんだろうって。そっからナナに意地悪や悪戯はしなくなったけど興味が失せたって変な言い方だけど、いるのが当たり前になってきて特別に構うみたいなことをしなくなってきたんだよね。

そんでさ時系列すごい飛ぶんだけどおれが大学はいったと同時にナナはすごい老てきたんだよね。立つのも2秒くらかかるみたいな。散歩も長距離は行けませんって感じ。でさ親が旅行に行ったんだよね。大学2年生の春に。まぁ今までも親が旅行に行ってる間は面倒見てることもあったし別に俺からしたらたいしたことないわけ。でもさ朝起きて散歩に行こうとするんだけどナナが小屋からでてこないの。どうしたのかな?っておもってさ手綱をひっぱって見ると顔だけちょこんと出すわけよ。内心可愛いなぁって思いながら出てこいって言ってさナナを小屋から出すんだけど。なんかいつもと様子がちがうの。よく見てみたらさ、後ろ左足が麻痺して動かなくなってんの。おれさ本当にびっくりしちゃって冗談かと思うんだけどやっぱ動かないの。本当に頭のなかパニックになっちゃて取り敢えずナナの体調を見ようと思ったの。医者でもないのに馬鹿だよね。でも上半身は元気なのに下半身が片方の足しか動いてなくて、やっぱおかしいなって思うんだけどどうしようもないんだよね。そしたらさナナが伏せしたままオシッコしてんの。飼い主だから分かるんだけどナナは自分の体に排泄物がつくのすごい嫌がるんだよね。にもかかわらず漏らしたからもう本当にこれはやばいなっておもったの。PCでさ色々検索かけて調べてみるんだけど、その間にもさナナが聞いたこと無いような高い鳴き声でおれをよぶんだよね。キャンって。助けて!って。大型犬飼ってる人は分かると思うんだけど鳴き声って基本低いんだよね。だから俺にはその高い鳴き声がナナが助けをよんでるようにしか聞こえないわけ。でさナナのところに行ってみるとナナが地面這ってんの。犬なのに地面を這ってる光景に悔しいんだか悲しいんだか分かんないけどすごい涙がでたの。あのおれの一番の友達がさ地面這ってるの。そっから2時間くらい背中撫でてあげたんだけど、時折すごい俺に抱きつこうとするんだよね。またそれで泣くんだよね。親に電話とかするんだけど全然つながらなくて。でも心の片隅にナナはまたすぐ元気になるって変な自信があって。その日はそのまま近くで寝てあげたのね。次の日にさナナ全然元気無くなってんの。大好きなお肉も食べないしおやつも食べない。水しか飲まないんだよね。

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