チートが無いのに俺は強い?
「ハァ…」
今日も一仕事終えて酒を飲む
「ま~たため息かぃ?今日もモンスターを倒して、たんまり稼いだんだろう?」
食堂のオバチャンがエールのおかわりを持って声をかけてくる
しかし、このエールっての何とかならんかねぇ?
安物の焼酎をホッピーの炭酸抜きで思いきり薄めたような飲み物…が俺の感想
これしか無いから呑むけどね…!
「今日は狩りに出てませんよ。売れない肉は腐るだけですから…」
確かにこれも悩み事の1つ
普通、狩りは複数人で行う…
なので肉は基本的に高く、庶民の口には届きにくい
届き[にくい]ってのは、俺が[討伐狩猟]に出ると(普段より)大量の肉が出回る為に安くなるからだ
肉が安くなるとハンターの収入が減る
ハンターに魅力が無いと[危険な思いしてまで]なりたいと思われない
なので討伐依頼が[来た時だけ]狩りをして、値が少し安くなる程度だけ売る
残りは、うちの子供達で美味しくいただきます
「それじゃ今日は先生かい?」
「まぁ…」
ハンター達への技術指導…一般人向けの魔法指導…
大人の常識を変えるのが大変なので、孤児院の子供達に教えていたら、他所の子供達まで勉強に来て…
休みが無ェェェ‼
ため息も出ますわ‼
18年前、この世界に生まれた俺は、物心ついた頃には父親の職業であるハンターに憧れていた
「父ちゃんの仕事はハンターだ」
「ハンター?」
「柵の外に出て動物…いま食べてる肉だな…それを捕って来る仕事なんだ」
「お肉おいしーよ!」
「それは近くのカノー山の野うさぎだよ」
「ぅ…かーいそー」
「うん、可哀想だよな?だけど肉を食べないと強くなれないから「ごめんね?ありがとう!」って気持ちで「いただきます」と「ごちそうさまでした」を言うんだよ⁉」
「それに肉を食べて強くなるのは人間だけじゃない…肉を食べる動物も、物凄く強い!」
「お父さんより?」
「……いいか?ベケス!強いって事は、生きてるって事なんだ!」
「生きて恋をして家庭を守る…それだけでも充分、強いんだよ?」
「ハンターは獲物を狩ってモンスターが増えないようにしている…たくさんの人を守ってるんだ!」
「モンスター?」
「肉食動物…肉を食べる動物でも食べてしまう、強くて恐いバケモノさ…」
「ハンターって、すごいね」
「強いハンターが何人居るか?それが街のステータスだからな‼」
「ストーテス?」
「ハハハ…ステータスだ」
「うん!そのスターに俺もなる‼」
「ある意味、間違って無いから良いか… 強くなるには鍛えないとな?」
「どうやるの?」
「たくさん走る‼動けなくなったら少しだけ歩いて、また走る‼」
「ハンターの能力は最終的には逃げ足だからナ…生き残るには足腰を鍛える事だ!武器を使うのも足腰が基本だ!」
「あと、お母さんの手伝いは続ける事!」
「ェェ~?鍛える時間が減るじゃん!」
「バカもん!世の中で一番強いのが、お母さんなんだぞ⁉」
「お母さんの力仕事を全部取ってしまえ!お母さんの力仕事が無くなった時には俺くらいは強くなっている‼」
そうして俺の猛特訓が始まった