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Scenes  作者: Drealist
3/28

夜の期待と潜む恐怖と

「ち〜〜っす」


智が夕食をつくっていると、1Kの部屋に那々絵が飛び込んできた。


「おいおい、飯時に来んなよ」

「別に狙わないよ、智のつくったご飯なんか」


コンロのつまみを調節しながら、そりゃそうだと納得した。

那々絵は料理の腕がめっぽういいからな。


「で、なんの用だ?」

「うん、DVD借りてきたんだ」


勝手知ったると云った手早さでパソコンを見つけ、ドライブを開ける。


「なんの」

「ホラー」


瞬時に、怖がって抱きついてくる那々絵の姿を想像した。


「洋画なんだけど、スプラッタ好きの友達のオススメなんだよ」


背後でにやける智に気づかず、那々絵はマウスを動かしている。


「そっちは俺がするよ」


マウスを奪い、智はプレイヤを起動させた。余計なフォルダを開かれちゃ、たまったもんじゃない。

那々絵はおもむろにディスプレイを持ち上げる。


「おいおいおい」


ディスプレイを目で追いながら智が困惑する。


「ああ、絡まないようにちゃんとするから」


少しずれた返答をして、那々絵は窓際のデスクから部屋の中心のテーブルにディスプレイを移動させた。

鍋が沸騰する音に、智が慌ててコンロの前へ戻る。


ロゴが画面いっぱいに映し出され、ムービーが始まる。

少し煮る時間が短い気もするが、智はキムチチゲの沸騰した鍋を抱えてテーブルに向かう。


「ちょっと、こぼさないでよ?」

「わあってるよ。あ、そこの布巾とって」


那々絵がキッチンにあった布巾をテーブルに置き、智がその上に鍋を乗せる。

ちょうど本編が始まる。2人は食い入るようにディスプレイを凝視していた。





スープの残った鍋と2つの小皿がキッチンには並んでいる。

暗くした部屋のまんなかでは、パソコンのディスプレイがエンドロールの白い文字の光を撒いている。

首をコキコキならし間延びしたため息をもらしながら、智は隣を見た。


那々絵は寝ていた。

智とは逆の方向に身を傾けながら。


(なんだよ、寝るんなら俺のほうに倒れてくるってのが礼儀ってもんだろ)


心中でこぼしながら視線を下ろすと、那々絵のジーパンが視界に入った。なんでこいつはスカートを履かないんだろうと、久しぶりに落胆した。


音を立てないよう慎重にディスプレイをデスクに戻しながら、部屋のライトを点けようか点けまいか迷った。もう日も暮れて室内も暗くなって、映画の怖さが蘇る。


もう一度、那々絵に目を移す。こいつはどうしてこれから夜になると知りながら俺の部屋で寝られるんだろう、どうしてあの映画の途中で寝られるんだろう、と智は思わずにいられなかった。




結局、那々絵が自然に目覚めるまで、智は暗闇の恐怖とそれに負けて那々絵を起こす不甲斐なさと戦う羽目になったのだった。

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