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Scenes  作者: Drealist
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斜陽

智は暇を持て余していて、少し街を歩いてみることにした。

新しい発見をするには住み慣れてしまった場所だが、なにも考えずにうろうろするのに申し分はない。


コンビニに立ち寄ったがなにも買わず、そのまま本屋に向かう。とくべつ買いたい本もなく、定期的に購入している雑誌もないから来るだけ無駄だった。


本屋からゲーセンを通り過ぎ、中古マンガの店を覗く。

今日は立ち読みする気分でもない。


リサイクルショップを流し見しつつ、ゲームショップに到着する。わりと見慣れたラインナップだが、訪れる度に細かな相違点に気づく。

新作は後回しにして、とりあえずワゴンセールのラックを漁る。めぼしいものはなさそうだ。今度は中古の棚を見渡す。どれが楽しそうかではなく、どれが最も分相応なのかを見極める。面白くない、つまりハズレを引くのはただの醜態だ。面白いのは当然の前提で、値段が割高にならないように配慮する。……しかしこの手法でも大したものは見つからない。いよいよ、と新作が並ぶ店舗の入り口に向かうが、そのまま退店する。大して値引きされていない新作を買う金なんてない。財布を見なくてもわかる。いつものことなのに、いつも忘れてしまう。俺っておちゃめさん。


歩きながらケイタイを取り出す。那々絵からのメールがいつのまにか届いている。

内容は単純で、明日が提出期限の宿題を忘れるなという督促。幼馴染としてわかるとこはわかってるが、さすがに連日こうだと少しうざい。それに家は隣だっつうのにメールとは、律儀なのか面倒くさいのか。


ふとドラッグストアを通り過ぎそうになりそうになり立ち止まる。ヘアワックスがなくなりそうだったんだ。店内をぐるっと一回りして男性化粧品などのワンコーナーでワックスを物色する。目当てのものを手にしてから、まだ残りが少ないとはいえ、皆無というわけじゃないしギリギリになってから買うことにしようと、商品を元に戻した。


CDでも借りようと返信を打ちながらレンタルショップに足を運ぶ。自動ドアをくぐってから、サイフを忘れたと気づく。外に出てすぐどうしようかと考えるが、取りに帰るのも億劫だった。


空を見上げると、明々と朱に染まっている。


ああ。

よくわからないけど、帰ろうと思った。財布のためではなく、ただ家に帰るために。

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